導入企業様の声
N=1からユニークな仮説を発見するデータドリブンワークショップ
でマーケティング人材を育成
- サントリーホールディングス株式会社様
- デジタル本部 DX戦略部
課長 服部 亜起彦さん - デジタル本部 データ戦略部
吉川 和宏さん - デジタル本部 デジタルマーケティング部
神尾 英俊さん (写真左より)
- 顧客理解
- N=1の分析
- マーケ人材育成
主力となる酒類関連事業をはじめ、飲料・食品関連事業や健康食品・外食・花事業、さらには文化・社会貢献活動など、多岐にわたる活動を展開するサントリーグループ。デジタル人材育成におけるデータドリブン研修として、IDレシートデータを活用した顧客インサイト発掘ワークショップを実施していただきました。その経緯と成果について、詳しくお話を伺いました。
「水と生きる」サントリーグループ
――サントリーグループについてご紹介ください。
服部さん: 1899年(明治32年)、創業者・鳥井信治郎が大阪府において創業して以来、国内はもとより、米州・欧州・アジア・オセアニアにおいて幅広くバリューチェーンを展開し、現在では「水と生きる SUNTORY」をコーポレートメッセージとして掲げ、売上高の半分を海外で売り上げるグローバル食品酒類総合企業グループとして活動しています。 創業はぶどう酒の製造販売となりますが、日本初の本格ウイスキーの製造やビール事業など、多彩な商品を世界のお客様へと届けてきた酒類関連事業を主力に、ミネラルウォーター・コーヒー・お茶など、清涼飲料や食品の製造・販売を手掛ける飲料・食品関連事業、さらには、長年にわたる食の科学的研究や品質管理技術を礎とした健康・ライフサイエンス事業、カフェとバーを融合させた「PRONT(プロント)」や、とんかつとお惣菜の「井筒まい泉」、アイスクリームの「ハーゲンダッツ」といった外食・加食事業もサントリーグループの事業となります。
【利用状況】データドリブン研修によるワークショップを実施
――今回、フェリカネットワークスと協力して実施されたデータドリブン研修のワークショップについて教えてください。
服部さん: 今回実施した研修は、課題解決の考察を行うことができるデジタル人材を育成するための社内向けの研修となります。生活者の課題を紐解き、未来を見据えて物ごとを考えるために、「ISSUE DRIVEN」「DATA DRIVEN」「TECH DRIVEN」の3つのアプローチで思考を膨らませるプロセスを通じて、生活者の課題やインサイトを発見するための研修です。
その中におけるデータドリブン研修は、今回初めて実施したワークショップを中心とした研修となります。フェリカネットワークスさんには構想段階からご相談させていただき、ワークショップ企画の立案から教材となるレシートデータのご提供、ワークショップの講師まで、全面的にご協力いただきました。
神尾さん: 具体的には、IDレシートデータを使ったN=1のユーザ分析による顧客インサイトの深掘りと、発見したインサイトや仮説に基づいた課題解決のための施策立案まで行う内容となっており、参加者は約30名。3日間の日程で以下のような講義とワークショップを実施しました。
●データドリブンに必要な視点/マインド獲得のための講義
●N=1ユーザの深掘りによるインサイトや仮説発見ワークショップ
●N=1ユーザの課題を解決するサービス/商品企画の立案ワークショップ
――ワークショップの受講対象者について教えてください。
神尾さん: デジタルマーケティング部の新任部員のほか、所属に関わらずデジタルに関する業務を担当している様々な部署の担当者が、上長の推薦を受けて参加しています。
【目的】ビジネスをドライブさせていくためのデジタル人材を育成
――ワークショップを開催した目的を教えてください。
服部さん: サントリーグループは、「人」こそが経営の最も重要な基盤であるという「人本主義」という考えに基づき、人材育成を中長期的な視点で捉えて取り組んできました。人に対して投資をして、長期的に成長を促し、幅広い意味で社会に貢献してもらう。また、会社が成長することはもちろんですが、社員の幸せも育んでいくという考え方をベースとしています。
その上で、今回のワークショップは、デジタル領域における人材教育への取り組みの一環となります。まだ始まったばかりで発展途上の段階となりますが、平たく言えばデジタルを活用してビジネスをドライブさせていくための人材育成ということになります。
神尾さん: デジタル活用という話になると、デジタルマーケティングやITシステムの分野における人材も重要ですが、データを分析して顧客のインサイトを的確に導き出し、新たなサービスへと繋げていくスキル、すなわちデータを読み解いて施策に繋げられる人材の育成も重要になるという考えが、今回のワークショップのベースとなります。
具体的には、デジタルマーケティングの育成プランを考える中で、データだけでなくユーザ課題を紐解き、ビジョン思考として未来を見据え、データドリブンで考えるという3つを軸にして、様々な方向から物ごとを見ることができる人材の育成を目指しました。
【選定理由】フェリカネットワークスの伴走支援によりプログラムを開発
――IDレシートデータの採用や、フェリカネットワークスに依頼をした理由を教えてください。
神尾さん: データ分析といっても、単純にビッグデータみたいなものを分析する手法は世の中にあふれていて、データアナリストと呼ばれるスペシャリストの方も多くいます。その方たちが実践しているデータ分析方法を短期間の研修で身に付けるのは簡単なことではありません。また、データを分析する手法ではなく、データを「自分ごと」として使いこなし武器にするための研修を実施したいという考えを持っていました。
フェリカさんとは、以前、IDレシートBIツールのデータを用いて「ザ・プレミアム・モルツ」ヘビーユーザのN=1のユーザ分析からインサイトを発掘するというプロジェクトを実施したことがあります。とても興味深い内容で、新しい発見もあり、ブランド側からの評価も高いものがありました。
N=1のユーザ分析において、“人の気持ちに着目しながらデータを客観的に見る”という方法はインパクトがあり、短期間でデータを「自分ごと」にする思想が学べると考え、フェリカさんに研修について相談をしたところ、企画から一緒にプログラムを立ち上げましょうということになりました。
研修に用いるデータとしてIDレシートが適していた理由といえば、人の気持ちを観察するというコンセプトにフィットしていたからです。とかくデータ分析というと分析スキルが先に立ってしまいますが、このIDレシートデータであればデータ分析スキルの有無に関わらず、データから事象や行動背景を読み解く想像力があれば十分活用することができます。取り組みのハードルは低く、一方で想像力への刺激がとても多いため、このデータドリブン研修には最適でした。
【効果】N=1のユーザ分析による仮説立案から検証までを実践
――プログラムに対する評価をお聞かせください。
吉川さん: 受講後のアンケートを見ると、次のような声が聞かれました。
・「購買事実から仮説を炙り出す経験が新鮮で、ここまで見えてくるのかという驚きがあった」
・「N=1のユーザを“友達”のような親近感でリアルに捉えられた。友達のペインならば解消してあげたいという気持ちが沸いてきた」
・「データから読み解いたインサイトや仮説をチームで共有することで、視野が広がる感覚を覚えた」
当社側のこだわりでもあり、リクエストでもあったのですが、自分ごととして前向きに取り組む姿勢を身に付けられるような、「楽しい」「面白い」プログラムになったと考えています。N=1のユーザ分析をリアルな業務に繋がるデータで体感できたことは素晴らしく、調査~仮説出しから施策立案までの一連の流れを短いスパンの中で実践できるとても優れたスキームだと評価しています。個々人のマーケティングのセンスが向上するような内容にもなっていたと思います。
神尾さん: 「サントリー」というマーケティングに特化した企業体質に特殊な部分があるのかもしれませんが、一般的な外部研修での学びがそのまま実務で活かせる機会は決して多くはありません。その点では、フェリカさんにテーラーメイドでプログラムを作ってもらえたことで、受講した社員の成長に繋がるプログラムになったのではないかと、受講者の反応を見て手ごたえを感じています。
――ワークショップを実施した効果などは見られますでしょうか。
吉川さん: メインターゲットであるデジタルマーケティング部の新任者に対しては、狙っていた通りのインプットができたと考えています。他部門からの受講者では、チーム単位で受講してもらった部署において、ビジネスを進める上での共通の考え方、いわば部署を超えた“共通言語”ができたという声が聞かれました。
実業務の内容や受講者自身によって実務活用までの期間には長短あるかと思いますが、受講者の所属長に話を聞いたところでは、デジタル関連業務への定着がスムーズになったという声もありました。
【今後の展開予定】購買×調査による思考理解の組み合わせでさらに深い顧客理解を
――今後の展開予定などがあれば教えてください。
吉川さん: このスキームのワークショップは今後も定期的に実施していく予定です。また、IDレシートBIツールの活用方法についても検討しており、ブランドや顧客を深く理解する上で、新しい発見に繋げていければと考えています。
――フェリカネットワークスに対する評価や期待があればお聞かせください。
神尾さん: 他の会社にデータ分析を依頼した場合、データアナリストの方々が確からしい分析レポートを作ってくれます。一方、フェリカネットワークスさんは、「一緒にデータを見ましょう」と共同での取り組みを提案してくれるとともに、データの見方や気づきの捉え方も教えてくれます。同じデータを分析するにしても、レポートだけもらうのと、当社の担当者が自分で見て観察するのでは、気づきの質が全く異なります。あくまで当社側に主体性を持たせていただきつつ、しっかりと伴走型でサポートをしてくれる姿勢をとても頼りにしています。
今後は調査データとIDレシートデータを組み合わせて購買時の思考や理由まで理解したり、購買にいたる行動やメディア接触までわかるようなデータ連携ができたりすると、さらに深い顧客理解ができるのではと期待しています。
服部さん: IDレシートBIツールをご利用されているメーカー企業さんもかなり増えていると聞いております。今回実施させていただいたようなデータドリブンのワークショップは、個々のマーケティングセンスやビジネスのベース向上が期待できるスキームだと思います。チームビルディングにもとても効果的な施策です。様々な企業がこのような取り組みを実施されることで、企業内でのチーム力が高まり、ひいては日本のメーカー企業のマーケティングスキルが底上げされるのではないかと期待しています。
――お忙しいところ、貴重な話をお聞かせいただきありがとうございました。
(写真左)フェリカネットワークス株式会社
リアルDX推進部 1課 マネジャー 橋場 仁