トップメイン画像

「カヌレ」そっくりの人気菓子「カヌレット」の購買特徴や相乗効果を分析しました

2022年4月、フランスの焼菓子「カヌレ」そっくりのグミ「カヌレット」(UHA味覚糖)が発売され、一時は売り切れが続出する人気商品となりました。

現在グミ市場は好調に伸びており、2021年には635億円の市場規模となり、グミ市場が初めてガム市場を上回ったといいます(インテージ調べ)。今回は、そんなグミの購買層について、そして人気の「カヌレット」の購買層や購買特徴について調べます。
調査からわかったこと抜粋

■「グミ」カテゴリの購買額の推移
・2022年1年間で購買額が後半に向けて増加したお菓子カテゴリは、一口で食べられる「グミ」だけであった
・「グミ」カテゴリは、2022年1年間で後半に向けて32.6%の増加となる

■「カヌレット」の購買状況
・2022年4月の発売直後から購買額は伸び、6月にはTOP10入り、7月には5位へ上昇し、8月以降も概ねTOP10近辺を上下する人気を保つ

■「カヌレット」と「カヌレ」の購買関係
・「カヌレット」と「カヌレ」の購買額推移は、近しいカーブとなった
・「カヌレット」購入者においては、ローソンの「濃密カヌレ」を購入する割合が、他のスイーツより高かった
・ローソンの「濃密カヌレ」購入者においては、他のグミより「カヌレット」を購入する割合が高かった

現在大きく市場規模を伸ばしている「グミ」ですが、菓子業界全体は2018年以降、緩やかな減少傾向にあります。そのような状況の中で「グミ」は、どのようにして市場を伸ばしているのでしょうか。実際の購買データを紐解いてみましょう。


当社フェリカネットワークスの「IDレシートデータ」では、全国3万人の日々のお買い物のレシートデータを蓄積しています。会員の属性データに紐づいて、いつどのような商品を何点、どのような店舗で購入したかのデータを調べられます。

ではまず、「グミ」の購買額が、他のお菓子カテゴリと比較してどのように伸びているかを見てみましょう。


グミとその他菓子カテゴリ購買額の推移

グミお菓子購買額比較

2022年の1年間における、一口で食べられるお菓子カテゴリの月間購買額の推移を調べてみましょう。「グミ」「ビスケット・クッキー」「チューインガム」「キャンディ・キャラメル」カテゴリそれぞれの推移を比較すると、2022年の1年間を時系列でみた際に、後半に向け「グミ」カテゴリだけが増加しており、他のカテゴリはマイナスであることが分かります。

※「グミ」カテゴリ:IDレシートBIツール「キャンディ・キャラメル」カテゴリのうち、商品名に「グミ」を含む商品を抽出
※「キャンディ・キャラメル」カテゴリ:IDレシートBIツール「キャンディ・キャラメル」カテゴリのうち、商品名に「グミ」を含む商品を除外

続いては、「グミ」カテゴリの購買層を見てみましょう。
2022年に「グミ」カテゴリ商品を購入したのは、下記のようなデモグラとなります。


「グミ」カテゴリ購入者層~性別・結婚・子供~

グミのデモグラ_1

「グミ」購入者層は家計簿全体と比較して、女性が8ポイント・既婚者が9ポイント高く、子供がいる層が17ポイント高いことが分かります。子供がいる層が高いことから、自分のためだけではなく、「子供のため」の購買も一定数あるように見受けられます。


「グミ」カテゴリ購入者層~年齢・職業~

グミのデモグラ_2

年代別では、30代が4ポイント、40代が7ポイント高くなっています。職業別では、会社員が3ポイント低く、専業主婦が4ポイント、パート・アルバイトが3ポイント高い結果となりました。

「グミ」は、コロナ禍のマスク生活の中でマスクをしていても食べやすい点や、ガムのようにゴミが出ない、食後に口から出す必要がないという点で、購入者が増えているのかもしれません。
また、カラフルな色やユニークな形や食感の商品展開から、YouTubeやTikTokなどでは「ASMR動画(Autonomous Sensory Meridian Responseの略語で、人の聴覚や視覚を刺激して、ゾクゾクしたり心地よくなったりする音を収録した動画)」が流行っており、このような動画から購入につながっているとも考えられています。

では、そんな市場拡大が進むグミの中で話題となっている「カヌレット」とは、どのような商品なのでしょうか。

「カヌレット」は、UHA味覚糖が2022年4月に発売しました。
近年日本でも人気になっている、フランスの焼き菓子「カヌレ」の味と形をそのままに、一口サイズのお菓子にしたのが「カヌレット」です。グミのような小粒でもっちりとした食感で「気軽にカヌレが食べられる!」と話題になっています。



「カヌレ」の原材料は小麦粉ですが、「カヌレット」はでんぷん・ゼラチンです。
しかしながら、カヌレ特有のサクッとした外側の食感、内側のもっちりとした2段階の食感が味わえるということで、SNSを中心に話題となりました。

下記のグラフは、Googleトレンドによる「カヌレット」のWEB検索回数の推移です。グラフの一つ目の大きな山は、「カヌレット」の新発売とCMが放映されたタイミングです。CMは昨年末(2022年)のNHK紅白歌合戦にも出場した人気ダンス&ボーカルグループのBE:FIRSTが出演し話題となり、「カヌレット」の検索回数の増加につながったようです。


google_trend

CMでは様々なシチュエーションでの「カヌレット」にまつわるエピソードを紹介しており、カヌレとカヌレットを比較したり、ひとくち食べた時の驚きを表現して訴求しています。
YouTubeで公開されたCM動画の再生回数は570万回以上あり(2023年4月時点)、UHA味覚糖YouTube動画の中でもトップレベルの再生回数となっていました。


では、そんな話題の「カヌレット」が、発売からどのようにヒットしてきたのか、実際の購買データを見てみましょう。
「カヌレット」の購買額がどの程度なのかを把握するため、人気グミ購買額TOP10商品と比較してみました。


「カヌレット」とグミTOP10商品の購買額比較

グミTOP10_カヌレット購買額推移

対象期間:2022年1月~12月


発売初月の4月は、中旬頃の発売(4月11日)で他商品より販売期間が短いこともあり、他商品より購買額は低い位置でスタートします。しかし発売翌月には、人気グミTOP10近くに追いつき、発売3か月後の7月には人気グミ5位まで急上昇します。その後も数か月間は人気グミTOP10圏内を推移しています。新商品としては、かなり急激な人気となっていることが分かります。

グラフで山ができている夏の時期はSNSで情報が拡散され、一気に人気に火が付いたと言われており、SNSの投稿の中には、店舗で売り切れが続き「入手困難」というものも目立ったようです。

では、人気の「カヌレット」は、どのような属性の方が購入しているのでしょうか。
「グミ」カテゴリの購入者属性と比較してみましょう。


「カヌレット」購入者層~性別・結婚・子供~

カヌレットデモグラ_1

「グミ」カテゴリと比較すると、女性が6ポイント高くなります。また、未婚が10ポイント高く、子供がいない層が12ポイント高くなります。


「カヌレット」購入者層~年齢・職業~

カヌレットデモグラ_2

年齢層は、20代と50代が5ポイント高く、30代が9ポイント低くなっており、職業では専業主婦が3ポイント低くなっています。

「カヌレット」は、SNSで話題となって20代の人気が高くなったものと考えられます。
また30代と50代に関しては、下記のように「子供がいる女性」に限定した数値を見ると、「グミ」カテゴリとの相違点が見えてきます。


「カヌレット」購入者層~子供がいる女性の年代別~

カヌレットデモグラ_3

「子供がいる女性」に関しては、30代は11ポイント低くなっていることが分かります。
30代女性の「グミ」カテゴリ購入者の中には、「子供のグミ購入」も含まれているものの、「カヌレット」はラム酒の香りのある大人向けの商品であることから、数値が減少しているのではないでしょうか。

また「子供のいる50代女性」は、「グミ」カテゴリより9ポイント高くなっています。
「カヌレット」は、ラム酒の風味もある大人向けの商品のため、子供のために「グミ」を購入しているような30代割合が減少して、50代以上が自分のために購入しているものと考えられます。

ちなみに、BE:FIRSTファンは年齢層が広く、実際LIVEに行くとBE:FIRST関連グッズを身に着けて推し活を楽しんでいる50代以上と思われるBESTY(ファンネーム)も実際によくみかけます(筆者もBESTYです!)。BE:FIRSTがアンバサダーをつとめたカヌレットを、推し活として積極的に購入し50代女性が増えていることも考えられるかもしれません。

「カヌレット」は前述のように、4月の販売開始から緩やかに購買数を伸ばし、7月に急激に販売数を伸ばして、秋以降も横ばいで推移しています。そんな「販売初期」、購買額が急激に伸びた「急増期」、その後の「安定期」に、購買層はどのように変化したのでしょうか。
下記のように、「販売初期」を4/12~5/31、「急増期」を6/1~6/30、「安定期」を9/1~12/31とした場合の、購買層の変化を調べてみましょう。


「カヌレット」購買額の推移と期間の定義

カヌレット時期定義

対象期間:2022年4月~12月


「カヌレット」購入時期別のデモグラ変化~年齢・職業~

カヌレット時期別デモグラ

「カヌレット」購入時期別のデモグラ変化~まとめ~

カヌレット時期別_まとめ

対象期間:2022年4月~12月


上図のように30代・会社員・パート・アルバイトという属性では、人気が出始めた「急増期」に一過性の増加を見せますが、やがて購買が減少する傾向がうかがえます。一方20代の購入割合は安定しており、40代も「急増期」には入手困難だったためか一時減少するものの、「安定期」には増加に転じ、継続して購入している様子が見えてきます。

「カヌレット」は、フランスの焼き菓子「カヌレ」をベースにした、まったく「カヌレ」とは異なるお菓子です。しかし、味わいは「カヌレ」のような2層の味わいを表現しているだけに、SNSでも「まるでカヌレ」という表現がありました。

では、「カヌレット」がヒットすることで、「カヌレも売れる」という関連性はあるのでしょうか。「カヌレ」と「カヌレット」の購買額推移を見てみましょう。


「カヌレ」と「カヌレット」の購買額推移

カヌレ_カヌレット購買額比較

対象期間:2022年1月~12月


「カヌレット」は4月発売のため途中からのグラフとなりますが、「カヌレ」は6月、「カヌレット」は7月で急激に伸びて、その後減少傾向になるものの10月に再び増加に転じる動きなど、大枠で見ると「カヌレット」の推移と「カヌレ」の推移が似ていることが分かります。共に復調する動きを示す10月に何が起こったのでしょうか。


人気「カヌレ」の購買額推移

カヌレ購買額推移

対象期間:2022年1月~12月


「カヌレ」の購買額TOP5商品の月別購買額の推移を示したのが、上のグラフです。
10月に急激に伸びている「カヌレ」があります。ローソンから9月に発売された「濃密カヌレ」です。10月には、この「濃密カヌレ」と「濃厚生チーズケーキ」の割引クーポンのキャンペーンが実施されていた影響もあってか、10月の「カヌレ」の購買額が伸びていた模様です。



続いて、「カヌレット」の業態別の購買額推移を見てみましょう。
コンビニでは、6月~9月まで購買額が減少傾向です。人気のため、品切れ状態となり、10月にようやく入荷したというようにも見受けられます。

そして10月に購買額を引き上げたのは、コンビニであることが分かります。10月の購買額の過半数が、コンビニでの購買となっています。


「カヌレット」業態別の購買額推移

カヌレット拠点別推移

対象期間:2022年4月~12月


前述のとおり、「カヌレ」の10月の購買額を引き上げたのは、ローソンの「濃密カヌレ」でした。
そして「カヌレット」も、7月以降購買額が減少傾向に転じる中、10月にコンビニで購買額を引き上げました。

もともと「カヌレット」は「カヌレ」を一口サイズにしたお菓子のため、一定の購買関連性はあると思っていましたが、実際に10月のローソン「濃密カヌレ」新発売と同タイミングで「カヌレット」もコンビニでの購買額が急増していました。

やはり「カヌレ」と「カヌレット」の間には、ともに購入が増えるような何か関係性があるのでしょうか。ローソン「濃密カヌレ」と「カヌレット」の相乗効果について、さらに深掘りをしていきたいと思います。

まず「濃密カヌレ」を購入した方が、「カヌレット」をどの程度購入しているかを確認してみましょう。

「カヌレット」は、「カヌレのような食感」が特徴となっていますので、グミの中でも特に「食感」にこだわった商品と比較してみました。ひとつは、薄く平べったいフェットチーネパスタのような形をした、もちっと弾力のある食感の「フェットチーネグミ」。もうひとつは、ペタンコな形状で固くハードな噛み応えが特徴の「ペタグーグミ」を選択しました。レシート出現数も同等ですので、単純比較するのに適した商品です。


「濃密カヌレ」購入者におけるグミの購入者率

カヌレット購入者率

「カヌレット」と同じような、特に「食感」にこだわったグミと比較してみると、購入者率は3倍の差となっています。「濃密カヌレ」購入者においては、特別に「カヌレット」を意識して購入しているように見受けられます。

次に、「濃密カヌレ」発売後「カヌレット」をどの程度購入しているか確認してみました。「濃密カヌレ」との比較対象を考える際に、「濃密カヌレ」との共通点が必要であると考え、「味が濃厚」「ローソン限定商品」という共通点から、「濃厚生チーズケーキ」と「生ガトーショコラ」を選択しました。


「カヌレット」購入者におけるローソンスイーツの購入者率

カヌレット購入者率

3商品を比較すると、「濃密カヌレ」が「濃厚生チーズケーキ」と「生ガトーショコラ」と比べて3.4~7.5倍高い購入者率となっています。「生ガトーショコラ」だけは、キャンペーン対象商品ではないため、レシート出現数に差があり単純比較するのは難しいですが、「濃密カヌレ」購入者における「カヌレット」のグミ購入者率との3倍の差よりも、「カヌレット」購入者における「濃密カヌレ」のローソンスイーツの購入者率との差のほうが高い結果となりました。
※「濃密カヌレ」のレシート出現数は、「濃厚生チーズケーキ」の2.4倍、「生ガトーショコラ」の6.6倍の差がありますが、購入者数が3.4倍、7.5倍となっており、レシート出現数よりも購入者数のほうが多く、購入傾向は高くなっていることが見受けられます。


解説図

SNSで「カヌレ」と「カヌレット」の食感を比較した様子が見られたように、「カヌレット」購入者は「カヌレ」に対して強い興味・関心が出ているのでしょうか。

カヌレット購入者・濃密カヌレ購入者どちらの購入者率も高かったことから、やはり「カヌレット」と「濃密カヌレ」の間には、相互に購買を意識する関係性が強かったことが分かりました。
これが、そっくりなお菓子の相乗効果と呼べるものなのかもしれません。

参考までに、「カヌレット」購入者の一人ひとりの購入データを分析するユニークユーザ分析をしてみると、下記のようなケースが一例として確認できました。


ある「カヌレット」購入者の「カヌレ」購入時期

N1

上記の方は30代・女性で、2022年6月に「カヌレット」を4つ購入しています。「カヌレット」複数購入後、10月に1つ「濃密カヌレ」を、12月には「カヌレ風のあいすまんじゅう」と、別のカヌレ商品を購入している様子がうかがえます。

このように「カヌレット」購入者が、「カヌレ」を購入する動きが確認できました。
「カヌレット」は、見た目の形も食感も「カヌレそっくり」ということから話題になりました。SNSでは、「カヌレット」の小ささを通常カヌレと比較して楽しむような投稿をあげているユーザも多く、「カヌレット」と「カヌレ」の関係性の強さが分かるデータ分析となりました。

上記のデータをまとめると、下記ようになります。

【「グミ」カテゴリの購買額の推移と購買層】
・2022年1年間で後半に向けて伸び(増加)したお菓子カテゴリは、一口で食べられる「グミ」だけだった
・「グミ」カテゴリは、2022年1年間で後半に向けて32.6%の増加となる
・「グミ」カテゴリは「全体」と比較して「子供がいる」層が17ポイント高い

【「カヌレット」の購買状況と購買層】
・2022年4月の発売直後から購買額は伸び、6月にはTOP10入り、7月には5位へ上昇し、8月以降も概ねTOP10近辺を上下する人気を保つ
・「カヌレット」購買層は20代と50代が強く、「子供のいる30代」の購買状況が弱かった
・「カヌレット」人気が急増した時は特に30代が伸び、購買状況が安定すると40代の割合が増加した

【「カヌレット」と「カヌレ」の購買関係】
・「カヌレット」と「カヌレ」の購買額の推移が近いカーブとなった
・2022年9月に発売されたローソンの「濃密カヌレ」が、10月の「カヌレ」購買額を引き上げた
・「カヌレット」も2022年10月に購買額が下降傾向から上昇に転じた
・「カヌレット」購入者は、ローソンの「濃密カヌレ」を購入する割合が、他のスイーツより高かった
・ローソンの「濃密カヌレ」購入者においては、他のグミより「カヌレット」を購入する割合が高かった

このように、当社フェリカネットワークスの「IDレシートデータ」を活用すれば、複数商品の購買状況の比較ができます。また購入者一人ひとりが、どのような店舗でどんな商品を何個購入しているかのユニークユーザ分析もできるため、インタビューをしなくても購入の背景も見えてきます。手軽にマーケティングに活かせるデータが作成できます。
このような分析に興味をお持ちの方は、ぜひご活用ください。



お問い合わせ

流通横断かつユーザ軸での貴社/競合ユーザ様の購買動向の違いが分かります。

詳細資料・サンプルレポートをご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。