立地による利用者属性の違いは?
まずはコンビニの立地により、利用者属性にどのような差があるのか見ていきましょう。
コンビニ大手3社の利用者における、性年代や未既婚・子ども、職業などの構成を、都心店・準都心店・郊外店で比較してみます。
都心店:六本木や麻布十番、浅草や石神井、池袋や蒲田など
準都心店:世田谷区祖師谷や横浜市上大岡、大森や竹ノ塚、赤羽や川崎市登戸など
郊外店:川越や木更津、習志野や銚子、青梅市や館山など
データは、当社フェリカネットワークスの「IDレシートデータ」を使用します。
「IDレシートデータ」は、全国3万人の日々のお買い物のレシートデータが保存されています。会員のプロフィール属性とレシートデータを紐づけていますので、どの店舗でどのような属性の方が何をいくついくらで購入したか分かります。
立地による性別・年代差
まずは、立地により利用者の性別・年代にどのような違いがあるのか、調べてみましょう。 2022年度における、立地別の男女比が下記となります。
※以下、集計期間はすべて2022年4月4日週~2023年3月27週です。
立地による男女比較
都心から離れるにつれて、女性割合が上がっていることが分かります。
都心店の女性が63%なのに対して、準都心店は66%・郊外店は70%です。
続いて年代の違いを見てみましょう。
立地による年代比較
年代は、都心から離れるごとに20代が減少し、40代以上が増加しています。
20代は、都心店が19%なのに対し、準都心店が16%・郊外店は14%です。40代以上は、都心から離れるにつれて増加しています。
都心店はビジネス利用の会社員が多いため、男性や20代の割合が高いのでしょうか。都心から離れるにつれて会社でのビジネス利用から家庭利用にシフトして、パートなどの既婚女性が増加しているようにも感じられます。既婚者の割合と職業別の割合を比較して、検証してみましょう。
立地による結婚・職業差
続いては、立地による利用者の既婚/未婚や職業の違いについてです。
未既婚の比較が下記となります。
立地による未既婚比較
予想通り、都心から離れるごとに既婚者の割合が増加しています。
都心店が56%なのに対し、準都心店が63%・郊外店は67%です。
続いて職業の違いを見てみましょう。
立地による職業比較
会社員も予想通りに、都心から離れるごとに減少しています。
都心店が53%なのに対し、準都心店が50%・郊外店は47%です。
またパート・アルバイトも予想通りに、都心から離れるごとに増加しています。
都心店が13%なのに対し、準都心店が16%・郊外店は17%です。
このようなデータを組み合わせると、都心店では「会社員」によるビジネス利用のケースが高く、都心から離れるごとに「パート」などの既婚女性層が増加しているイメージが見えてきます。そのような利用者属性の違いが、売れ筋商品にどのような違いを生むのでしょうか。
立地ごとの時間帯別購買状況
まずは立地ごとに利用時間帯による違いがあるのかを見ておきましょう。時間帯別のレシート枚数割合と購買額割合を算出し、どの時間帯に購買数(買い物客)が多いのか、そして購買額が高いのかを比較します。
朝:5:00~10:59/昼:11:00~14:59/夕方:15:00~18:59/夜:19:00~22:59/深夜:23:00~4:59
時間帯別のレシート枚数と購買額の割合比較
都心店(黒)のレシート枚数=購入回数(棒グラフ)と購入額(線グラフ)を見てみましょう。
朝→昼→夕と徐々に購入回数は下がっていきますが、夕方と夜は変化ありません。深夜も下がりますが、3立地の中では最も構成比が高いです。
購入額はというと、朝→昼で変化なし、夕方にガクンと下がっています。都心=オフィス利用ととらえると、夕方の帰宅時間帯に利用と購入額が下がるのは納得です。
準都心店(青)はどうでしょうか。
こちらも購入回数は徐々に下がっていきますが、昼と夕方ではさほど変化がありません。夕方の構成比は都心店よりも高く、都心からの帰宅時間で準都心での利用が増加する傾向が見られます。
購入額をみますと、時間経過とともに緩やかに下がるものの、購入回数ほどの下降はしていません。夕方の比率が朝と並び最も高くなっています。
郊外店をみてみると、購入回数の比率は朝、昼、夕において3立地の中で最も高く、夜・深夜での下降が顕著であり、主に朝~夕方までがメイン利用と言えます。
購入額は準都心同様に購入回数の波と比較的似ていますが、夜は主婦・パート層が夕方の買い物を済ませてしまうためか、落ち込みが顕著です。夕方が上がる点は準都心と似た傾向であり、準都心・郊外においては夕方時間帯にチャンスがありそうです。
以降、時間帯別の売れ筋商品を見ていく際の参考として、時間帯ごとのレシート枚数と購買額の比較を紹介しました。「深夜」だけは全時間帯に占める購買割合が数%と小さいため、「深夜」を除く「朝」~「夜」までの時間帯における売れ筋商品を比較していきます。
立地による時間帯ごとの売れ筋カテゴリランキング
次に、「商品カテゴリ」で各時間帯における立地ごとの売れ筋商品を比較してみましょう。どのような違いがみえてくるのでしょうか。
都心ほど「お弁当」「サンドイッチ」「サラダ」需要が高い『朝』
まずは「朝」における、各立地におけるカテゴリランキングです。
各立地における購買数カテゴリランキング『朝』
全立地で、上位カテゴリに大きな差はありません。「おにぎり」「サンドイッチ」「コーヒー」、そして「たばこ」が上位カテゴリとなります。立地による変化としては、「お弁当」と「サラダ」が都心ほど順位が高いことが分かります。
準都心・郊外で「デザート」「アイス」の需要が高い『昼』
続いては、「昼」の、各立地におけるカテゴリランキングです。
各立地における購買数カテゴリランキング『昼』
全立地で「おにぎり」「コーヒー」が人気な傾向は変わりません。ただ都心店のみ、「日本茶・麦茶」が「コーヒー」を上回る順位となりました。都心では、オフィスの自席でランチを食べるため、お茶の需要が高まるのでしょうか。
また、デザート関係については、立地により変化が見られます。
「生菓子・半生菓子」は全立地9~10位で同等の順位ですが、「デザート類」は都心店では9位なのに対して、準都心店・郊外店では4位と差が出ています。「アイスクリーム」も、都心店ではTOP10入りしない16位でしたが、準都心店・郊外店では7位でした。準都心店・郊外点では、お昼時間帯でも「デザート」や「アイスクリーム」の需要が高いことがわかります。
都心で「酒類」が上位ランクインする『夕方』
続いては、「夕方」の、各立地におけるカテゴリランキングです。
各立地における購買数カテゴリランキング『夕方』
全立地でTOP3が「おにぎり」「たばこ」「デザート類」となり、TOP10の4割を「おやつ系食品」が占めているのは共通の傾向です。立地による相違点は、都心店だけ10位に「リキュール類」がランクインしている点があげられます。夕方は18:59までなので、都心店では終業後に「リキュール類」を購入している様子がうかがえます。
都心から離れるごとに「たばこ」の順位が上がる『夜』
続いては、「夜」の、各立地におけるカテゴリランキングです。
各立地における購買数カテゴリランキング『夜』
全立地ともに、「おにぎり」「アイスクリーム」が上位となります。おにぎりについてはどの時間帯・どの立地においても確実に上位TOP3に入っていますね。
立地による相違点としては、都心店のみ「サラダ」がTOP10入りしています。そして「たばこ」が、都心から離れるにつれて順位が上がっています。また都心店のみ、酒類が2品種「リキュール類」「ビール」がTOP10入りし、他は「リキュール類」のみとなります。
仕事モードから解放されて、酒類・たばこ・アイスクリーム・スナック菓子と、プライベートタイムの買い物へシフトしている様子がうかがえます。
まとめ
このように、コンビニの立地別に、時間帯ごとの売れ筋商品を比較してみると、以下のようなことが分かりました。
【購買者属性】
・都心から離れるごとに、女性割合と既婚者が増加
・都心から離れるごとに、20代割合が減少
・都心から離れるごとに、40代以上割合が増加
・都心から離れるごとに、会社員割合が減少
・都心から離れるごとに、パート・アルバイト割合が増加
【立地ごとの時間帯別購買状況】
・夕方は、都心を離れるごとにレシート枚数割合が増加
・夜は郊外のみ、レシート枚数割合が低い
・朝と昼の購買額は同等となる
【立地別、時間帯ごとの売れ筋カテゴリ】
・朝は都心ほど「お弁当」需要が高い
・昼は準都心・郊外で「デザート類・アイスクリーム」の需要が高い
・夕方は都心だけ「酒類」がTOP10入り
・夜は都心から離れるごとに「たばこ」の順位が上がる
このように、当社フェリカネットワークスの「IDレシートデータ」を活用すれば、コンビニの立地ごとの売れ筋商品が比較できます。さらに「同時併買」などの機能を活用すれば、どのような商品が一緒に購入されているかが分かります。
後編では引き続き立地ごとに、商品別の売れ筋や、チェーンごとの売れ筋の違いを深ぼってみたいと思います。
=== 後編へ続く ===