立地による時間帯ごとの売れ筋商品の違い
前編につづく今回は、具体的な商品名で売れ筋の違いについて深く調べていきましょう。
朝・昼・夕方・夜の各時間帯における、各立地の売れ筋商品TOP10を比較します。
準都心店だけ「新聞」需要が高い『朝』
まずは「朝」における、各立地における購買数TOP10です。
各立地における商品購買数TOP10『朝』
準都心店 だけ「新聞」がランクイン(3位)しています。
都心店の「新聞」は108位であることから、都心へ通勤する前に購入 しているのでしょう。郊外店も通勤途中で購入するというニーズが一定数あるようで、28位となっています。通勤電車の中で新聞を広げて読むケースは減少して、スマホでニュースを読む時代となっているものの、まだまだ紙の「新聞」の需要は高いようです。
また全立地で「カウンターコーヒー」が上位となり、「ヤクルトY1000」がTOP10入りしています。「缶コーヒー」は、都心店だけTOP10入りです。一方「ペットボトルの水」は、郊外店だけがTOP10に入りませんでした。都心のビジネス需要では、オフィスの自席でペットボトルの水を飲む傾向が高いですが、郊外店はビジネス利用の割合が都心店よりも低くなります。そのため、ペットボトルの水の需要が下がっているようにも見受けられます。一時期品切れも続出した「ヤクルト1000」の店頭商品「ヤクルトY1000」ですが、朝以外の時間では上位ランクインしていません。朝の習慣として定着していることが伺える結果となっているのが興味深いですね。
都心店だけ「フライドチキン」需要が低い『昼』
続いては、「昼」の売れ筋商品の違いを確認しましょう。
各立地における商品購買数TOP10『昼』
立地を問わずにTOP2は「ホットコーヒーR」と「ファミチキ骨なし」です。日本全国でお昼時間帯に売れる人気のTOP2ということになります。
また、都心から離れるごとに「フライドチキン」のアイテムが増えています。 都心では特に「ファミチキ骨なし」に人気が集中していますが、ランチにオフィスの自席で食べる場合、やはり「骨がない」食べやすさが人気のポイントなのかもしれません。「からあげ棒」は11位、「ななチキ」は14位で、惜しくもTOP10入りは逃している順位につけています。
上記のランキングですと、お昼の「ランチ需要」が分かりにくいため、お弁当やサンドイッチ・おにぎり・お惣菜、またカップ麺やサラダなどのランチ食品カテゴリに限定した、お昼の購買数カテゴリランキングと商品ランキングを紹介します。まずは、カテゴリ別の売れ筋を確認してみましょう。
(参考)各立地における商品購買数TOP10『ランチ食品カテゴリ』
ランチ食品をカテゴリで比較すると、全立地のTOP3は同じで「おにぎり」「お弁当」「サンドイッチ」の順となります。下位も若干順位は異なるものの、TOP10にランクインされるランチ食品カテゴリは大きな変化はありません。
(参考)各立地における商品購買数TOP20『ランチ食品』
続いてカテゴリではなく、具体的な商品のTOP20を見てみましょう。
TOP20にしたのは、「おにぎり」が圧倒的に上位を占めているので、少しでも他の商品のランキングを紹介するためです。
全立地で1位は「ミックスサンド」となっているものの、TOP20の半数以上が「おにぎり」となっています。TOP20中の「おにぎり」の割合は、都心店が6割・準都心店と郊外店が7割です。単価が安く腹持ちのいい「おにぎり」は、立地に関わらず多様な具材が購買されていることが分かります。
一方「お弁当」がTOP20に入っていませんが、前述のランチ食品のカテゴリランキングでは、全立地で2位となっています。「おにぎり」や「サンドイッチ」のように、同一商品の購買数は高くないものの、いろいろなお弁当の購買数を合算すると「サンドイッチ」よりも多くなることが示されています。
上記のようにランチ食品に関しては、立地による大きな変化は見受けられませんでした。全国的に「ミックスサンド」と「おにぎり」の購買数が高く、「お弁当」もカテゴリでくくると全立地で2位となっていました。
都心で「新聞」、準都心で「たばこ」が売れる『夕方』
続いては、「夕方」の売れ筋商品の違いを確認しましょう。
各立地における商品購買数TOP10『夕方』
昼にも同様の傾向が見られましたが、都心から離れるほど「フライドチキン」のアイテム数が増えています。また「牛肉コロッケ」も、郊外のほうが上位となっています。都心店では、まだ勤務中のオンタイムの雰囲気なのに対し、準都心店・郊外店では、仕事を終えたパートの主婦層などが夕食の準備が始まっているためか 、郊外になるほど「牛肉コロッケ」の順位が上がっています。
そして夕方には「野菜類」が購入される動きも見えてきます。都心店で2種類の「野菜類(7位カット野菜と8位コールスロー)」が、準都心店・郊外店でも1商品「野菜類(準都心店7位コールスローと郊外店8位その他野菜)」がランクインしています。これも夕食の準備なのでしょうか。
夕方の特徴としては、都心店の「新聞」と、準都心店「たばこ」があげられます。 都心店では、夕刊の発売タイミングに合わせて「新聞」を購入している様子が、準都心店では「電子たばこ」で一服している様子がうかがえます。
参考までに「新聞」は、準都心店で32位・郊外店で26位となっており、「たばこ」は都心店で13位・郊外店で31位となっています。
都心店のみで「酒類」が上位に
続いては、「夜」の売れ筋商品の違いを確認しましょう。
各立地における商品購買数TOP10『夜』
夜になると、全立地で「たことブロッコリーバジルサラダ」や「コールスロー」「千切りキャベツ」など、夕食に一品加えるような食品もTOP10に入っているのが特徴です。仕事を終えて、プライベートタイムへの切り替わりの変化が見えてきます。
立地別の変化としては、酒類の順位に特徴が見えてきます。都心店では3位に「クリアアサヒ」がランクインしていますが、準都心店は14位・郊外店は20位が最高位の酒類です。上記集計期間の2022年度はコロナ禍の影響もあり、なかなか外食での飲酒は厳しいご時世でした。そのため、特にコロナの影響が強かった都心では、すぐに飲むためにコンビニでの酒類の購入が多く、準都心・郊外では自宅に帰れば冷蔵庫に入っていたということかもしれません。
また全立地で「チョコモナカジャンボ」と「たことブロッコリーバジルサラダ」が、都心店・準都心店では「牛乳」がTOP10入りしています。仕事モードの夕方までとは異なる商品がランクインされる夜は、これまでの時間帯とは違った傾向が見えてきました。
立地別の売れ筋商品を深堀り
時間帯別の立地による売れ筋商品の変化を見てきましたが、「夜」に関しては仕事モードから仕事終わりのプライベートモードへの切り替わりの様子が見えてきます。そんなONからOFFへの切り替わりで、立地ごとに共通しているケースと、特徴のあるケースを深堀りしてみましょう。
全立地でアイスは「チョコモナカジャンボ」だけがTOP5入り
まずは共通した傾向から紹介します。
「夜」の購買数ランキングでは、アイスの「チョコモナカジャンボ」が人気です。都心店で5位・準都心店で2位・郊外店で3位となります。他のアイス商品は、唯一「エッセル 超バニラ」が郊外店の9位に入っているだけです。
仕事が終わり、ほっと一息つく際のアイスクリーム。「チョコモナカジャンボ」はモナカのため、スプーンが必要なく、スティックアイスのように溶けてくる心配もありません。比較的場所を選ばず容易に食べられる点からも人気なのかもしれません。
※画像は森永プレスリリース記事より引用
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000176.000019896.html
「夜」には酒類と併買される「たことブロッコリーバジルサラダ」
もう1つ、全立地で共通してTOP10入りしている「たことブロッコリーバジルサラダ」に関して、深堀りしてみましょう。時間帯別のランキングで、「夜」にだけ全立地でTOP10入りしています。「夜」ならではのニーズがあるようです。
※画像は、オフィシャルサイトより引用
https://www.sej.co.jp/products/a/item/107076/
「たことブロッコリーバジルサラダ」の同時併買商品を全日と夜で比較すると、「夜」だけ「酒類」がTOP10にランクインしていることが分かります。夜になってオフタイムになると、惣菜としてはもちろんのこと、お酒のお供としても「たことブロッコリーバジルサラダ」が一緒に買われている様子が見えてきました。
「たことブロッコリーバジルサラダ」同時併買TOP10
「夜」のコンビニで「牛乳」が人気の理由
そして都心店・準都心店では「牛乳」がTOP10入りしています。郊外店ではTOP10には入りませんでしたが、14位となっています。なぜ「夜に牛乳」なのでしょうか。 独立行政法人 農畜産業振興機構の調査レポートでは、牛乳類の飲料シーンとしても最も多いのが「朝食をとりながら」の46.6%となっていることから、翌朝のための夜の購入とも考えられます。都心・準都心住まいの方にとってコンビニは、夜に近場のスーパーに寄ることが難しい方の味方、ということですね。
「夜」の惣菜、たまご、野菜系、「さばの塩焼き」
さらに「夜」に関しては、夕食の食材をコンビニで購入するケースもありますので、「惣菜」の売れ筋が立地によってどのような変化があるのかも調べてみました。立地別の夜の「惣菜」TOP10が下記になります。
立地別 夜の「惣菜」TOP10
全立地で「たまご系惣菜」が人気です。特に都心店では、TOP10の半数を占めています。
逆に立地別に変化が見られるのは、「サラダ・野菜系惣菜」です。都心から離れるにつれてアイテム数が増えています。
メインディッシュとなりそうなおかず系の惣菜を確認してみましょう。 「肉系の惣菜」は、準都心店・郊外店で「餃子」が入っているだけでした。一方「魚系惣菜」は、「さばの塩焼き」が全立地でランクインし、都心店では「さばのおろしポン酢」が8位に、準都心店では「銀鮭の塩焼」が9位に入っています。
コンビニで、肉より魚の惣菜が売れているのは、意外に感じた方もいるのではないでしょうか。全立地でTOP10内にランクインしている「セブンプレミアム さばの塩焼き」は、ネットの口コミを調べると、「骨がまったくなく、焼き魚の臭いもあまり気にならない」という書き込みが多いことが分かります。味については、「電子レンジで温めただけなのにふっくらとして、皮まで炙った香ばしさや身の脂ののりも絶妙」という書き込みが確認できます。
最近のコンビニ利用者は年齢層も上がっています。「さばの塩焼き」の購買層を見てみると、家計簿全体と比較して40代・50代が5ポイント高くなっていました。
夜にコンビニで購入される「惣菜」は、たまご系のものか、肉より魚のあっさりとした健康を意識したものが上位となっているようです。特に都心から離れるにつれて「サラダ・野菜系惣菜」が増えていき、よりナチュラル嗜好になっているように見受けられます。
都心は乳酸菌とヨーグルトで健康志向、郊外では駄菓子が売れる
都心と郊外では、「菓子・デザート」でもランキングに違いが出るのでしょうか。 立地別の菓子・デザート購買数ランキング(全日)を比較してみましょう。
立地別 菓子・デザート購買数ランキング
立地別に「菓子・デザート」カテゴリ商品の購買数ランキングを比較すると、都心店だけが大幅にアイテムの傾向が異なります。TOP10中半数が「ヨーグルト・乳酸菌飲料」となっており、都心店以外ではTOP10中に「ヨーグルト・乳酸菌飲料」は存在していません。
ストレス社会と言われる都心では、健康志向が強いのでしょうか。 都心店の1位と7位にランクインしている「明治R-1シリーズ」は、「体調管理に本気の乳酸菌 強さ引き出すR-1」というコピーで、健やかな生活を送りたいという前向きな想いを表現しています。
「R-1」以外でも、4位の「雪印メグミルクプルーンFe1日分鉄分のむYG190」は、「1日分の鉄分を摂取」という特徴がある商品です。また8位「明治 ブルガリアヨーグルト低糖 180g」は「低糖」であり、どちらも健康を意識した成分の商品を選んでいる様子がうかがえます。
※画像は、オフィシャルサイトより引用
https://www.meiji.co.jp/dairies/yogurt/meiji-r1/
一方、準都心店・郊外店に共通しているのは、「アイスクリーム」の割合が高いという点があげられます。都心店では、TOP10中の「アイスクリーム」の割合は4割ですが、準都心店では7割、郊外店では6割となっています。都心店はビジネス利用の割合が高いため、オフィスで「アイスクリーム」は食べにくいという事情もあるのではないでしょうか。時間帯を限定しないと、「チョコモナカジャンボ」以外のいろいろなアイスが売れており、時間帯による売れ筋があることが見えてきます。
そして、都心から離れるごとに「駄菓子」のアイテム数が増えていることも分かります。
都心店では、TOP10中「駄菓子」は5位の「ブラックサンダー」のみとなります。それが準都心店では、4位「ブラックサンダー」9位「おやつカルパス」の2アイテムに。郊外店になると、2位「蒲焼さん太郎」7位「おやつカルパス」8位「ブラックサンダー」と3アイテムに増加します。
都心店はビジネス利用者が中心のため、会社でも飲食しやすい健康志向の「ヨーグルト・乳酸菌飲料」の購買数が多くなります。一方、家族利用の割合が増える郊外店では、お子さんのためになのか、「駄菓子」が購買されるという傾向にあるようです。
※画像は、オフィシャルサイトより引用
https://www.yurakuseika.co.jp/lineup/product_05.html
チェーン別、立地による売れ筋の違い
これまでコンビニ立地ごとの売れ筋商品について調べてきました。
最後にコンビニチェーン別に、都心店・準都心店・郊外店では、どのような売れ筋商品の違いがあるかを調べてみましょう。時間帯を分けずに「全日」の購買データとしています。
「都心店」のコンビニチェーン別 売れ筋商品TOP10比較
都心店においては、セブンイレブンでは「カウンターコーヒー」が、ファミリーマートでは「おにぎり」が上位に集中しています。ローソンは、ペットボトルや牛乳などの「ドリンク類」の割合が高くなっています。
「準都心店」のコンビニチェーン別 売れ筋商品TOP10比較
「準都心店」においては、セブンイレブンのみに「新聞」がランクインしています。ファミリーマートとローソンでは「新聞」は100位以内にも入っていません。また、セブンイレブンは「その他食品」の割合が高く、ファミリーマート・ローソンは「おにぎり」の割合が高くなっています。
「郊外店」のコンビニチェーン別 売れ筋商品TOP10比較
「郊外店」においては、「準都心店」と似た傾向がでています。 セブンイレブンは、カウンターフード系の「その他食品」の割合が高く、ファミリーマート・ローソンは「おにぎり」の割合が高くなっています。
このように、コンビニ大手3社の立地別売れ筋商品を比較してみると、セブンイレブンが他社と異なる傾向であることが見えてきます。
「カウンターコーヒー」は立地問わず圧倒的に強く、「カウンターフード」や「オリジナル食品」のニーズも高く感じます。一方ファミリーマート・ローソンは、立地を問わず人気の「ファミチキ」「からあげクン」、「おにぎり」の需要が大きく、多様な具材のおにぎりが全立地でTOP10に入っています。
まとめ
このように、コンビニの立地別に、時間帯ごとの売れ筋商品を比較してみると、以下のようなことが分かりました。
【立地ごとの「朝」の売れ筋商品】
・準都心店だけ「新聞」がランクインしている
・全立地で「カウンターコーヒー」と「ヤクルト1000」が上位に
【立地ごとの「昼」の売れ筋商品】
・立地を問わずにTOP2は「ホットコーヒーR」と「ファミチキ骨なし」となる
・都心から離れるごとに「フライドチキン」が増える
・全立地、ランチ需要カテゴリのTOP3は「おにぎり」「お弁当」「サンドイッチ」
・全立地、ランチ需要商品のTOPは「ミックスサンド」
・全立地、ランチ需要商品の半数以上が「おにぎり」となる
【立地ごとの「夕方」の売れ筋商品】
・都心店だけで、「新聞」がランクインしている
・準都心店だけで、「たばこ」がランクインしている
・都心店以外で「牛肉コロッケ」がランクインし、夕食準備の傾向が見える
【立地ごとの「夜」の売れ筋商品】
・都心店だけで「酒類」がランクインしている
・全立地で「チョコモナカジャンボ」が上位に
・都心店と準都心店では「牛乳」がランクインしている
・「惣菜」は、肉よりも魚の商品が選ばれる
【立地ごとの「菓子・デザート」需要】
・都心のみ「ヨーグルト・乳酸菌飲料」がTOP10の半数を占める
・都心から離れるごとに「駄菓子」の割合が上がる
・都心以外では「アイス」の割合が高い
【チェーン別売れ筋商品比較】
・都心のセブンイレブンでは「カウンターコーヒー」が上位を占める
・都心のファミリーマートでは「おにぎり」が上位を占める
・都心のローソンは、ペットボトルや牛乳などの「ドリンク類」の割合が高い
・準都心では、セブンイレブンのみ「新聞」がランクインする
・郊外のセブンイレブンでは「カウンターフード」の割合が高い
・郊外のファミリーマートとローソンは「おにぎり」の割合が高い
このように、当社フェリカネットワークスの「IDレシートデータ」を活用すれば、コンビニの立地ごとの売れ筋商品が比較できます。さらに「同時併買」などの機能を活用すれば、どのような商品が一緒に購入されているかが分かります。コンビニおいては、時間帯ごとのレジ前の陳列ひとつで、売り上げが大きく変わりますので、いつどの商品がどの商品と一緒に購買されているか、分析して陳列の参考にしてみてはいかがでしょうか。
このような分析に興味をお持ちの方は、ぜひご活用ください。