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コンビニ食品は、値上げでどのような影響を受けたのか?<前編>

昨今、さまざまな商品が値上げされ、ニュースでは連日スーパーマーケットで少しでも安い食材を探す消費者の姿が報道されています。

ただ、食品を購入するのはスーパーマーケットだけではありません。
コンビニでランチを買う、ビジネスパーソンや学生さんや主婦の方などもたくさんいます。

この値上げの状況下で、コンビニ食品はどのような影響を受けているのでしょうか。消費者の購買データから紐解きます。

まずは大手コンビニ3社(セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン)が、いつどのような食品の値上げを発表し、実施したのか確認しましょう。下記の一覧表にまとめました。


コンビニ値上げ一覧

※当社調べ(各社公式サイトの情報に基づく)


いち早く値上げに踏み切ったのがローソンです。3/8に発表と同時に実施しています。セブンイレブンとファミリーマートは4/1に発表し、ファミリーマートは4/5から、セブンイレブンは4月初旬から値上げが実施されています。

それでは、コンビニ大手3社の食品販売状況を見ていきましょう。
当社フェリカネットワークスの「IDレシートデータ」では、全国3万人の日々のお買い物のレシートデータを蓄積しています。コンビニのカウンターフードのようなJANコードが付与されていない食品もデータの取得が可能なので、コンビニ食材の動向を確認してみましょう。

食品カテゴリによって販売数や売上金額に差があるため、比較しやすいよう「2022年1月の月間販売数」を100%とした際に、以降半年間にどの程度増減したのかという推移をグラフにまとめました。

まずは、コンビニ最大手「セブンイレブン」の状況を見てみましょう。
下記が、値上げが実施された各食品カテゴリの販売数の推移です。


セブンイレブン_値上げ品目の販売数推移

【参考】麺類を除いた場合のグラフ


セブンイレブン_値上げ品目の販売数推移(麺類除く)

「セブンイレブン」の値上げは4月です。
値上げを実施した4月以降で下降傾向になっているのが、「米飯類(お弁当関係)」と「惣菜類(揚げ物など)」です。「パン類」はなんとか4月以降も維持して、1月水準を超える状態をキープしています。

大きく伸びているのは「麺類」ですが、冬には販売していない「冷やし中華」や「冷やしそば」が登場したことでの販売数の伸びとなるため、「麺類」は参考として見てください。

続いては「ファミリーマート」の状況です。


ファミリーマート_値上げ食品カテゴリ

【参考】麺類を除いた場合のグラフ


ファミリーマート_値上げ品目の販売数推移(麺類除く)

「ファミリーマート」も、値上げは4月です。
4月のタイミングで下降傾向に転じているのが、「お弁当」「惣菜パン」「ホットスナック」の3品目です。一方、値上げ以降も大きな影響を感じさせないのが、「おにぎり」と「サラダ」です。

単価の高い「お弁当」は値上げの影響を受けて安価な「おにぎり」へ、「惣菜パン」もより腹持ちのよい「おにぎり」へシフトしているのでしょうか。「おにぎり」は、値上げしてもすぐには影響が出ていないことが分かります。また栄養バランスを考えて必要と考えられる「サラダ」も、値上げの影響を受けずに安定して推移しています。

大きく伸びているように見える「麺類」は、「冷やし中華」などの夏商品の販売数が伸びていることが要因ですが、値上げ月の4月で伸びが止まっています。

続いては「ローソン」の状況です。


ローソン_値上げ品目

【参考】麺類を除いた場合のグラフ


ローソン_値上げ品目の販売数推移(麺類除く)

「ローソン」だけは3月に、値上げを実施しています。
値上げタイミングの3月以降で下降傾向になっているのが、「惣菜パン」と「サラダ」です。
「ファミリーマート」では、「サラダ」は値上げ後も横ばいで推移していましたが、「ローソン」では減少に転じています。そして「惣菜パン」は「ファミリーマート」同様に、下降傾向になっています。

一方、値上げ後もなんとか販売数を維持しているのが、「おにぎり」「寿司」「からあげクン」 です。価格が手頃で腹持ちのいい「おにぎり」は、「ファミリーマート」と同様に販売数を維持しています。

大きく伸びている「麺類」は、他社同様に「冷やし中華」などの夏商品の販売数が伸びているためです。参考として見てください。

コンビニ大手3社の、値上げ食材の販売数の推移を見ると、下記のような変化が見受けられます。


【コンビニ各社の値上げ品目の動き】

コンビニ食材まとめ

特徴的なのは、「おにぎり」です。
セブンイレブンは値上げ品目ではありませんでしたが、値上げを実施した「ファミリーマート」「ローソン」ともに、値上げ後も安定した推移をキープしていました。

また、値上げ後に減少に転じたのは「お弁当類」と「惣菜パン」です。
「セブンイレブン」は「お弁当」を「米飯類」と表記しており、ローソンは「お弁当」の値上げを実施していませんが、「セブンイレブン」「ファミリーマート」ともに、値上げ実施後に下降傾向に転じています。

値上げ後に増加に転じている「麺類」は、「冷やし中華」などの夏商品の販売数が伸びているためです。参考として見てください。

上記のようにコンビニ各社で、食品カテゴリによって値上げ後の推移が類似するケースが確認されています。そこで次に、コンビニ各社で食品カテゴリによって、どのような反応の違いがあるのかを比較してみましょう。

各社の「1月の月間販売数」を100%とした際に、その後どのように増減するか、その推移を確認します。

まずは、コンビニランチでニーズの高い「おにぎり」です。


おにぎり3社

「おにぎり」の値上げは、「ローソン」が3/8に、「ファミリーマート」が4/5に実施していますが、5月までは影響は少ないように見受けられます。カップ麺や外食チェーンの値上げが発表された6月になると、全社減少に転じています。
※セブンイレブンは、「おにぎり」に関して値上げを発表していません。

「ローソン」は値上げ月にも関わらず、3月に1月水準から15ポイント販売数を伸ばしています。対して「ファミリーマート」は値上げ月の4月に、前月から5ポイント減少に転じたものの、1月水準を1%上回っています。

「おにぎり」の値上げをしていない「セブンイレブン」は、月間の日数が少ない2月以外は、5月まで大きな変動はありませんでした。

では、値上げタイミングでの販売数の変化を見てみましょう。
値上げ前後1週間の、販売数推移が下記のグラフです。


おにぎり_日別

※セブンイレブンは「おにぎり」の値上げの発表がないため除外


「ファミリーマート」は値上げ前日に減少が見られますが、「ローソン」は値上げタイミングでの変化はありません。値上げ前後の1週間分の合計値を比較すると、「ファミリーマート」が1.0%増、「ローソン」が3.8%増と、ともに値上げ後のほうが販売数を伸ばしていることが分かります。

「おにぎり」に関しては、特に「値上げ」により販売数が減少するといった影響は確認できませんでした。

続いては、コンビニランチでニーズの高いサンドイッチなどの「惣菜パン」です。


惣菜パン3社

3月に値上げした「ローソン」は、値上げ月に前月から17ポイント販売数を伸ばしています。一方「セブンイレブン」は、値上げ月の4月に前月から11ポイント減少するものの、1月の販売数レベルをギリギリでキープ。しかしその後5月~6月は、下降傾向が強くなります。同様に4月に値上げを実施した「ファミリーマート」は、値上げ月の4月はなんとか前月の数値を維持するものの、各社のように5月以降は下降傾向に突入します

では、値上げタイミングでの販売数の変化を見てみましょう。


惣菜パン_日別

※セブンイレブンは、4/1の値上げとして記載


「セブンイレブン」は、値上げ当日に販売数を伸ばしていますが、その後下降傾向に転じます。「セブンイレブン」の値上げは「4月初旬」となっていたため、4/1の発表を受けて翌日から反応が出始めたという可能性も考えられます。「ファミリーマート」と「ローソン」は、値上げ数日前からゆるやかに下降傾向に転じて見えます。

値上げ前後の1週間の販売数の合計を比較すると、値上げ月に数値を伸ばした「ローソン」も、値上げ当日に数値を伸ばした「セブンイレブン」も、値上げ後の1週間は値上げ前週よりも10%以上減少していることが分かります。「ファミリーマート」も、値上げ後の1週間で販売数は6%ほど減少しています。

「惣菜パン」は、値上げタイミングで大きな影響が出るのではなく、日々少しずつ減少が続き、その積み重ねによって月間販売数が徐々に落ち込んでいく様子がうかがえます。

そして「おにぎり」や「サンドイッチ」に、ちょっと足すことの多い「菓子パン」です。


菓子パン3社

3月に値上げに踏み切った「ローソン」は、値上げ月の3月に増加しますが、翌月4月に減少へ転じ、5月にやや持ち返します。「セブンイレブン」も、値上げ月の4月に増加し、翌月の5月に減少に転じています。「ローソン」「セブンイレブン」は、5月までは1月水準をキープし、6月になって下回る結果となりました。「ファミリーマート」は、値上げ月の4月には増加するものの、翌月5月に20ポイントの減少となり、5月時点で1月水準を下回る結果となりました。

では、値上げタイミングでの販売数の変化を見てみましょう。


菓子パン_日別

※セブンイレブンは、4/1の値上げとして記載


各社ともに、グラフでは変化が分からない程度に横ばいで推移しています。ただ値上げ前後1週間の合計を比較すると、「ファミリーマート」が9.2%減、「セブンイレブン」が5.9%減、「ローソン」が2.0%減と、各社若干の減少に転じています。

「菓子パン」は、各社値上げ月には販売数を伸ばしたものの値上げ翌月に減少に転じ、1か月程度のタイムラグで値上げの影響が出てきているように見受けられます。

そして、コンビニランチで重要な「お弁当」は、どうでしょうか。


弁当3社

他社より早く3月に値上げした「ローソン」は、値上げ月の3月と翌月の4月に増加となりますが、5月以降にマイナスへ転じます。

「ファミリーマート」は値上げ月の4月まで、なんとか1月水準をキープするものの、5月に大きく減少。1月水準より24ポイント減となります。

「セブンイレブン」は、値上げ月の4月に前月から9ポイント減少するも、ぎりぎりで1月水準を超えていました。しかし5月以降は大きく減少、5月は前月から15ポイント減となっています。

では、値上げタイミングでの販売数の変化を見てみましょう。


弁当_日別

※セブンイレブンは、4/1の値上げとして記載


「セブンイレブン」は、値上げ翌日から減少するものの3日後からは復調します。
「ファミリーマート」は値上げ3日後から、「ローソン」は5日後から下降傾向に転じています。

値上げ後の変動が目立ちますので、値上げ前後1週間の合計を比較してみましょう。
各社ともに、値上げ後わずかに増加していることが分かります。「セブンイレブン」が0.2%増、「ファミリーマート」が1.1%増、「ローソン」が0.7%増となっています。

「お弁当」に関しては各社ともに値上げ後の1週間も、なんとかギリギリで前週の販売数を超える状況となっており、値上げタイミングで顕著な影響は見受けられませんでした。しかし、月間の販売数で見ると、各社4月から下降傾向に転じて値上げの影響を受けているように見受けられます。

「お弁当」は、値上げタイミングで大きな影響があった訳ではなく、じわじわと販売数が減少してきたようです。

商品画像

上記のように、食品カテゴリ別で各社の販売数推移を比較してみると、「おにぎり」が値上げ前後で比較しても値上げ後も各社販売数を伸ばしていることが分かりました。

一方「惣菜パン」「菓子パン」ともに、1月水準からプラスで推移している動きが少なく、ほぼ1月水準に届いていない状態でした。「小麦の値上げ」という印象が強かった影響もあったのかもしれません。もしくは「パン」よりもしっかりと腹持ちのいい「おにぎり」が選ばれているのでしょうか。

ただ腹持ちはいいものの、「おにぎり」よりも単価の高い「お弁当」は、5月以降各社急激に販売数が減少に転じます。「おにぎり」は5月まで持ちこたえましたので、単価の高い「お弁当」から影響を受けはじめ、カップ麺や外食チェーンも値上げした6月には、「おにぎり」まで影響が及んだという見方もできるのではないでしょうか。

これまで、コンビニ大手3社の食品販売数に対する値上げの影響を見てきました。
値上げ後に下降傾向に転じたのは「お弁当」「惣菜パン」、値上げ後も維持しているのが「おにぎり」という傾向が見えてきました。

ただ、食材を購入するのはコンビニだけではありません。
スーパーマーケットはコンビニと異なり食材を割引販売していますから、一般的に同じ食品でもコンビニよりもスーパーのほうが販売価格は安くなる可能性があります。

では値上げによって、コンビニからスーパーに乗り換えて買っているということはないでしょうか?

食品カテゴリの毎月の販売数を、コンビニとスーパーで比較してみましょう。
1月の販売数量を100%としたときの、毎月の変動をグラフにしました。
左が「コンビニ」の販売数推移のグラフで、右が「スーパー」のグラフです。


コンビニ全体_スーパー全体

左のグラフ「コンビニ」は、4月以降ほとんどの食材が大きく下降に転じています。

対して右のグラフの「スーパーマーケット」は、4月以降やや下降傾向に転じるものの、コンビニよりも減少幅は小さくなっていることがわかります。

このようにコンビニとスーパーを比較すると、割引率の高いスーパーは安定して利用されているものの、定価販売が基本のコンビニは販売数が減少する厳しい状況が見えてきます。

=== 後編へ続く ===

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