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コンビニ食品は、値上げでどのような影響を受けたのか?<後編>

連日値上げのニュースが報道される昨今、前編の記事ではコンビニのおにぎりやサンドイッチやお弁当などのコンビニ食品が、どのような影響を受けているのかを紹介しました。

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後編では、値上げを発表したメーカーのNB(ナショナルブランド)カップ麺と、値上げを発表していないコンビニPBカップ麺で、値上げがどのように影響しているかを調べてみました。

コンビニでは、上記のようなコンビニオリジナル食材の他に、カップ麺も人気です。
最近は、コンビニ各社がPB(プライベートブランド)のカップ麺を発売していて、人気ラーメン店とのコラボ商品など人気商品も多数あります。値上げを発表していないコンビニPBカップ麺は、メーカーカップ麺の値上げで、どのような影響を受けたのでしょうか。

カップ麺大手5社(日清食品、東洋水産、明星食品、エースコック、サンヨー食品)の、値上げに関する発表時期と値上げ時期は、下記の通りです。


カップ麺値上げ

※当社調べ(各社公式サイトの情報に基づく)


日清食品は、カップヌードルやチキンラーメンなどが人気のメーカー。明星食品はチャルメラシリーズ、東洋水産は赤いきつねと緑のたぬき、エースコックはスーパーカップ、サンヨー食品はカップスターが有名なカップ麺メーカーです。

各社2月に「6/1出荷分からの値上げ」を発表しています。

では、カップ麺大手5社(日清食品、東洋水産、明星食品、エースコック、サンヨー食品)のカップ麺(NB)とコンビニPBのカップ麺の販売数推移を確認してみましょう。

1月の月間販売数を100%とした場合の、各月の増減割合をグラフ化しました。
コンビニ各社のPB商品が「棒グラフ」で、カップ麺メーカーのNB(ナショナルブランド)商品が「折れ線グラフ」です。グラフを見ると、メーカー・コンビニによって、異なる傾向が見受けられます。


カップ麺推移

※カップ麺メーカーが製造しているコンビニPB商品は、コンビニPBとして扱った


カップ麺メーカーは、「サンヨー食品」以外は各社2月に値上げを発表しました。
値上げ発表の2月から4月までは大きな変化はなく、「サンヨー食品」が値上げを発表した5月で、「サンヨー食品」と「明星食品」が減少に転じます。

そして全社の値上げが実施された6月については、反応が分かれます。
販売数を下げたのが、「日清食品」「東洋水産」「エースコック」の3社。増加に転じたのが、「サンヨー食品」「明星食品」の2社でした。特に「サンヨー食品」は、5月から6月に向けて68ポイントの上昇となっています。


【参考】塩味が急伸した「サンヨー食品」


「サンヨー食品」は唯一、値上げ月の6月に1月水準を超えて急伸したメーカーです。
その急伸の要因を探ってみましょう。

サンヨー食品カップ麺(NB)の販売数TOP10が下記になります。
6月の販売数となる「赤」のグラフに注目してください。「塩味」が6月に急伸していることが分かります。


サンヨー食品補足

熱湯で調理するカップ麺は、アツアツの状態を食します。夏に向けては、さっぱりとした味にシフトしているようにも見受けられます。

では、各メーカーのカップ麺が、値上げタイミングでどのように販売数が変化したかを確認してみましょう。日別の推移が、下記となります。


メーカーカップ麺_日別

各社、値上げ後に販売数が減少していることが分かります。
最も影響を受けたのが「東洋水産」でした。前週から32%減少しています。また、月間の数値では増加していた「サンヨー食品」も、値上げ直後の1週間では前週から17%減少しています。

月間の販売数で見れば、値上げ月に増加していた「サンヨー食品」「明星食品」も、値上げ直後の1週間は影響があったように見受けられます。

続いて、値上げを発表していないコンビニ各社のPBブランドは、どのような状況になったのでしょうか。コンビニ各社のPB商品の動きを確認してみましょう。
下記に再掲したグラフの「棒グラフ」が、コンビニ各社のPB商品です。


カップ麺推移_再掲

好調なのは「ファミリーマート」です。
2月以降ずっと1月水準を超えてプラスで推移しています。

「ファミリーマート」のカップ麺の販売数TOP5は下記のようになります。
PB商品よりも、カップ麺メーカーNB商品の販売数が多いことが分かります。にもかかわらず、PBのカップ麺の販売数が好調に推移しているのです。なぜでしょうか。


ファミマPB麺_補足

ファミリーマートPBカップ麺の販売数TOP10が下記になります。
月別の積み上げグラフにしていますが、上位商品は各月一定数の販売が確認でき、月ごとに数値が伸びている様子もうかがえます。サンヨー食品の値上げ発表があった5月の「黒」と、カップ麺メーカー全社の値上げが実施された6月の「赤」に注目してください。「黒」と「赤」は、全商品で一定割合を占めており、春から夏に向けて季節が変わっても、しっかりと売れていることが分かります。


ファミマPB麺_補足2

「ファミリーマート」では、自社PBのカップ麺の販売数はメーカーカップ麺より順位は低いものの、販売数上位商品が毎月しっかりと販売数を重ねており、かつ春先から夏に向けて売れ始める商品もあることで、他社と異なり1月水準を超えて推移していたことが分かります。前述のように「サンヨー食品」は、「塩味」が販売数を伸ばしましたが、「ファミリーマートPB」は特定の味に限定されず、販売数上位商品が毎月しっかりと販売数を積み上げていることが分かりました。

「セブンイレブン」は安定した推移で、ずっと1月水準近辺をキープしています。メーカーと異なり値上げをしていないためか、6月も減少せずに同じような推移を見せています。

「セブンイレブン」での、カップ麺の販売数TOP5は下記のようになり、TOP5のうち4つをPBが占めています。特に「セブンプレミアム 蒙古タンメン中本 辛旨味噌」は、唯一販売数の1割を超えていることが分かります。このような人気商品が継続的に売れることで、安定した販売数をキープしているようです。


セブンPB麺_補足

「ローソンPB」は大きく減少しています。
2月以降大幅に減少を続け、4月時点では1月水準の16%まで減少。その後やや復調しますが、6月時点でも1月水準の35%と回復が見込めていない状況です。

参考までに、ローソンPB商品の毎月の販売数を積み上げグラフにしてみました。
そもそも、ローソンPB商品は6商品と他社より少ないことが分かります。また、グラフ「黄色」の4月のタイミングで販売数が減少しています。さらに「黒」の5月と「赤」の6月に販売されている商品は3商品となり、商品の半分は5月以降販売数が確認できていません。


ローソンPB麺_補足

前述の「ファミリーマート」では、販売数上位商品が春から夏シーズンに変わっても、毎月一定の販売数を積み上げてきました。しかしローソンの場合は、春・夏商品の切り替えで販売数の減少が発生していることが分かります。安定した販売数を確保するには、定番商品が季節を問わず一定数の販売数を確保し、季節ごとのニーズの変化に対応できるような商品ラインナップが必要なことが見えてきます。


メーカーカップ麺_日別

カップ麺に関しては、各社で反応が分かれました。
カップ麺メーカーの値上げが実施された6月については、販売数を下げたのが「日清食品」「東洋水産」「エースコック」の3社、増加に転じたのが「サンヨー食品」「明星食品」の2社でした。

唯一、値上げ月の6月に1月水準を超えて急伸した「サンヨー食品」は、6月に販売が好調だった商品名を確認すると「塩味」が販売数を伸ばした要因となっていました。夏に向けて、さっぱり味にシフトしたようです。

一方、コンビニ各社も反応が分かれます。
好調だったのが「ファミリーマートPB」で、2月以降ずっと1月水準を超えてプラスの推移となりました。

また、変動が少なく安定した推移となったのが「セブンイレブン」です。カップ麺売上ランキングでも、「セブンイレブンPB」商品は上位で、安定した販売数を獲得しています。

大きく減少したのが「ローソン」でした。
2月以降大幅に減少を続け、4月時点では1月水準の16%まで減少。その後やや復調しますが、6月時点でも1月水準の35%と回復が見込めていない状況です。春から夏に向けて売れ筋商品が変わり、その影響により販売数の減少につながったようです。

このように、カップ麺メーカー・コンビニ各社は、それぞれ異なる反応を示しました。

最終的に、コンビニ大手3社に関する値上げの影響をまとめると、下記のようになります。


■コンビニチェーン別の状況

コンビニ食材まとめ_再掲

■食品カテゴリ別の状況

食品カテゴリ別の状況

■カップ麺メーカー別の状況

カップ麺メーカー別の状況

■カップ麺コンビニPBブランド別の状況

カップ麺コンビニPBブランド別の状況

上記のように、食品カテゴリ別で各社の販売数推移を比較してみると、「おにぎり」が値上げの影響を受けにくいことが分かります。一方「惣菜パン」「菓子パン」ともに、1月水準からプラスで推移している動きが少なく、ほぼ1月水準に届いていない状態でした。価格上昇の際には、「パン」よりもしっかりと腹持ちのいい「おにぎり」が選ばれているようです。

ただ腹持ちはいいものの、「おにぎり」よりも単価の高い「お弁当」は、5月以降各社急激に販売数が減少に転じます。「おにぎり」は5月まで持ちこたえましたので、単価の高い「お弁当」から影響を受けはじめ、カップ麺や外食チェーンの値上げが実施された6月には、「おにぎり」まで影響が及んだという見方もできるのではないでしょうか。

さらに、コンビニとスーパーで販売数の推移を比較すると、割引率の高いスーパーは安定して利用されているものの、定価販売が基本のコンビニは販売数が減少する厳しい状況が見えてきます。やはりコンビニ食品は、値上げにより厳しい状況にあることが分かりました。

このように、当社フェリカネットワークスの「IDレシートデータ」を活用すれば、コンビニやスーパーなど、さまざまな店舗での購入状況が分かります。同じ商品を、コンビニとスーパーで比較したり、コンビニ各社やスーパー各社で比較することもできます。さらにJANコードを持たないコンビニのカウンターフードなどの購入データも活用できるため、分析の幅が広がります。このような分析に興味をお持ちの方は、ぜひご活用ください。

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