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顧客ロイヤルティを向上させるには?
指標や事例について解説

顧客ロイヤルティの「ロイヤルティ(loyalty)」には、「忠誠心」という意味があります。つまり、顧客ロイヤルティとは、「顧客の企業やブランド・商品に対する忠誠心」、簡単に言えば、顧客が企業やブランド・商品に対して愛着や信頼を感じているということです。商品に対する愛着が高い、つまり顧客ロイヤルティが高い顧客は、定期購入をするだけでなく、周囲にその商品や企業を勧める可能性が高く、ロイヤルカスタマーと位置付けられ、この存在は企業の売り上げにとって重要なものです。この記事では、ロイヤルティの重要な指標や事例について紹介しています。
マーケティングと書かれた付箋

顧客ロイヤルティと顧客満足度の違いは、リピーターとなるかどうかにあります。顧客満足度は、単に、サービスに対して顧客が満足したかどうかに注目した度合いのことであり、リピーターとなるかどうかは関係がありません。一方で、顧客ロイヤルティは、顧客がサービスに対して愛着や信頼を感じている状態を指し、顧客がリピーターとして利用し続けていくことに注目しています。
また、顧客ロイヤルティには、人に勧めるなどのサービスに対する行動を指す行動ロイヤルティと、サービスに対する愛着や信頼などの感情を指す心理ロイヤルティの2つがあります。

顧客ロイヤルティが重要とされる理由は、新規顧客の獲得の難しさにあります。近年、Cookieの規制強化により消費者の行動追跡が困難となっているとともに、消費者が広告を敬遠するようになっていきました。このため、新規顧客の開拓が難しくなっているのです。
また、新規顧客を獲得するよりもリピーターや固定客を持つ方が、コストが低く、継続的な売上に繋がります。こういった理由により、ロイヤルティマーケティングが近年特に重視されています。

ロイヤルティの代表的な指標のひとつに、満足度が挙げられます。満足度で継続性や愛着を測ることは難しい場合もありますが、一般に満足度が高ければロイヤルティが高いという相関性があります。つまり、ロイヤルティが高い顧客は満足度も高い場合が多いため、満足度が高い顧客の中にロイヤルティが高い顧客が含まれている可能性から、ロイヤルティを数値化することができます。

NPSとは、他者推奨意向のことで、これもロイヤルティの代表的な指標のひとつです。
顧客に周囲の人に勧めたい度合いを10点満点で評価してもらいます。計測方法が簡単で、信頼性の高い指標となります。
つけてもらった点数によって次のように顧客を分類します。
0〜6点:批判者
7〜8点:中立者
9〜10点:推奨者
推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値がNPSです。NPSが高いほど行動ロイヤルティが高いといえます。

解約率とは、チャーンレートとも呼ばれ、一定期間にサービスの利用を中止した顧客の割合を指します。解約率は、顧客満足度をダイレクトに表しており、解約の原因を突き止めることで顧客ロイヤルティの向上につながります。
解約率は、「一定期間中にサービスを停止した顧客の数÷当初の顧客の数×100」で計算されます。期間は、1ヶ月や1年など企業やサービスによって異なります。
ただし、乗り換えの手間がある場合や、課金を意識していないカード引き落としのものなどは解約率が低くなる傾向があるため、解約率を指標として用いる際には注意が必要です。

NRSは、継続意向の指標のことを言います。算出方法は容易で、顧客に「1年後もこのサービスを継続して利用したいですか?」という質問に対して次のように5点満点で評価してもらいます。
5点:積極的に継続したい
4点:今と同じ程度に継続したい
3点:その時になってみないと分からない
2点:できれば継続したくない
1点:絶対継続したくない
点数によって、5点がリピーター、4点が中立者、1〜3点が離反リスク者と顧客を分類します。
リピーターの比率が多ければ売上の安定が期待され、離反リスク者の比率が多ければ不安定な状況であると判断できます。

また、NPSと組み合わせて評価することもできます。
NPSは行動ロイヤルティが数値化されましたが、NRSでは心理ロイヤルティが数値化されています。例えば、NPSが低いがNRSが高いユーザーは、行動ロイヤルティが低いが、心理ロイヤルティが高いユーザーだといえるでしょう。

LTVとは、Life Time Valueの略で、顧客生涯価値を意味します。1人の顧客が生涯において自社にもたらしてくれる利益のことです。一般に、顧客ロイヤルティが高いとLTVが高いと考えられています。特に利用期間や頻度、金額などの行動面を把握することができます。しかし、LTVが高い顧客には、心理ロイヤルティが低い顧客も含まれてしまう点には注意が必要です。利用期間と、頻度、金額のサイズから、顧客の生涯価値を6つの段階(セグメント)にわけることで、よりロイヤルティを細部化して分析を行うこともできます。

LTVの算出方法は複数あり、代表的なものとして次のようなものがあります。
LTV=ユーザーあたりの平均収益/ 解約率
LTV=購買単価×購買頻度×継続購買期間

解約率と同様に、乗り換えの手間がかかる場合、課金を意識していない場合は、LTVは高くなる傾向がありますので注意が必要です。

アップセルとは、以前購入したサービスより高額なサービスへ移行してもらうことで、顧客の単価を上げるセールス手法のことを言います。クロスセルとは、顧客がサービスの購入をする際に、別のサービスも追加で購入してもらうセールス手法のことを言います。アップセルやクロスセルの成功率は、顧客ロイヤルティと比例するため、顧客ロイヤルティを測る指標となります。しかし、仕方なく高額サービスを利用している場合もあるため、ロイヤルティが高いとは必ずしも言えないこともあることに注意しなければなりません。

CESとDWBは、近年注目されている、顧客ロイヤルティの計測における新しい指標です。
CESとは、Customer Effort Scoreの略で、顧客努力指標という意味です。顧客がサービスを利用する際に必要な努力がどれくらいかを表したものです。CESが高ければ、サービスの利用に努力が必要で、使いにくさなどのストレスを顧客が感じていることになります。
DWBとは、Definitely Would Buyの略で、顧客がサービスを購入したいかどうかを数値化したものです。絶対に買いたい・買いたい・どちらでもない・あまり買いたくない・全く買いたくないの5段階で顧客に評価してもらいます。最高評価にした人がどのくらいいたかでブランドロイヤルティの評価ができます。

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顧客ロイヤルティを高めるのに、まず必要なのは、購買データから顧客ロイヤルティの現状を把握することです。

下準備として、顧客データの収集が必要ですが、これは購買データをアプリや会員登録で個人を識別した上で収集し、各顧客の利用期間や頻度、利用日、金額、利用した商品・サービスなどの情報を把握します。ロイヤルティ分析は、継続データを用いることが前提ですが、1回の購入についての分析であれば、アンケートで行うこともできます。
ロイヤルティ分析を行うツールとしての、IDレシートBIツールという分析ツールでは、セブンイレブンのロイヤルティ分析の方式である「月次の購入回数(頻度)×購入額で、ユーザを6つの段階(セグメント)にわける」という分析法を採用しており、顧客を6つのロイヤルティセグメントに分ける事で一定期間における顧客のロイヤルティの推移を確認することができます。また、このIDレシートBIツールではセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの3大コンビニチェーンの顧客ロイヤルティの分析を行うことで、どのような戦略によってロイヤルカスタマーを獲得しているのかの分析をすることもできます。

詳しくはこちら
コンビニ3社のユーザ比較で見えた、セブン-イレブン王者の理由

このようにIDレシートBIツールではロイヤルティ分析を用いることができるため、他社の顧客ロイヤルティの現状も把握することで、自社のビジネスチャンスを見つけることが出来るという利点があります。更にレシートのデータを用いるため、JANコードがついていない商品についても分析が可能です。

ロイヤルティの現状把握では、ロイヤルティがどの程度か、ロイヤルティにはどのような特徴や傾向があるか、どのような体験がロイヤルティの向上に繋がっているかなどを分析しましょう。

次に、ロイヤルティのターゲットを設定します。ロイヤルティの程度や特徴、傾向からどの顧客がロイヤルティを向上させるうえで重要かを選定する必要があり、どのような顧客をターゲットに設定するかで、ロイヤルティ向上による収益増大の仕方が変わってくるので、顧客設定には注意が必要です。
設定においては、どの年代や性別の人が何を好んでいるのかなど、現状把握で分かった事や、他者の顧客ロイヤルティの推移のデータを用いる事で、自社ではどの顧客をターゲットにするべきかを選定することもできます。

ターゲットの顧客のロイヤルティを向上させるのに必要な顧客体験(CX=カスタマーエクスペリエンス)を設計します。CXとはカスタマーエクスペリエンスの略で、顧客の商品・サービスに関わる一連の体験のことです。商品・サービスを使用するという体験だけではなく、SNSから受け取るイメージ、店頭での接客体験、アフターサポートといった顧客接点も含みます。どのようなCXがロイヤルティにどれほど影響するかを考えることで、重要な顧客接点を見つけることができます。ロイヤルティの向上に影響するCXが見つかれば、そのCXを実現するための戦略を立てていきます。

ロイヤルティを向上させるには、この様な3ステップを用いていく必要があります。
では、実際に顧客ロイヤルティを向上させた事例を確認していきましょう。

1.現状の把握と分析:某お菓子メーカーでは、コロナ禍であるカテゴリの売り上げが減少したことから、ロイヤルティ分析を行ったところ、優良顧客層では売り上げが増加していることがわかり、このことから、商品の問題でないことが分かりました。
2.ターゲットの設定:どの様な顧客が、何と一緒に自社のお菓子を買うのかを分析することで、同時併買の傾向から、おつまみとして購入されることが多い商品と日常使いとして購入されることが多い商品に分けられることが分かりました。
3.CXを含むロイヤルティ向上の戦略:優良顧客はしっかり購買が伸びているので、狙うべきターゲット層を広げ、そこに刺さるよう「買う理由を付与する提案やリニューアル」をすることによって、カテゴリの売り上げを改善することができました。

このように、3ステップのうち最初の2ステップで丁寧な顧客分析を行うことで、どのようなCXが必要であるかを検討し、成功した例があります。

1.現状の把握と分析:カード会社のアメリカン・エキスプレス・インターナショナル社は、顧客ロイヤルティを調べるためにNPSを導入したといいます。
2.ターゲットの設定:NPS分析の結果、カードを紛失したことがある顧客において「カード紛失時の対応」というCXが顧客ロイヤルティに大きく関係したと分かりました。
3.CXを含むロイヤルティ向上の戦略:紛失時に速やかにカードを再発行するようにしたところ、NPSが大きく改善し、解約率や顧客単価も改善し、売上が増大しました。

引用元:顧客ロイヤリティを高めるには

こちらでも、まず現状を把握することで自社のどういった顧客がNPSが低いのか、その理由を分析することでロイヤルティの向上に成功しています。

1、2.現状の把握とターゲットの設定:損害保険会社であるソニー損保では、すべての顧客との長期的な関係を築くために、より良い顧客サポートを必要としていました。
3.CXを含むロイヤルティ向上の戦略:長期的に契約してくれる顧客のための部署を横断した顧客ケアが提供できるような体制を作り、顧客のニーズに対して「改善しました」「検討します」「申し訳ございません」という3択で回答できるコミュニケーションサイトを構築し、顧客の悩みに対して担当者がコメントして顧客に納得してもらう仕組みを作ったといいます。この結果、顧客のニーズが具体的に把握できる様になり、NPSや顧客ロイヤルティが向上したといいます。

引用元:顧客ロイヤリティの向上事例4選|ロイヤリティを高めるためのポイントとは

顧客ロイヤルティとは、顧客がサービス・商品に感じている愛着や信頼のことです。顧客ロイヤルティには様々な指標があり、顧客ロイヤルティの度合いを数値化して測ることも可能となっています。顧客ロイヤルティの向上には、顧客体験を考えることが重要であり、どのような体験が影響しているかが分かれば、顧客ロイヤルティ向上に必要な戦略を作っていくことができます。顧客ロイヤルティの分析がさらなる売上へと繋がっていくのです。

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