適切なターゲティング戦略を打つために
STP分析におけるターゲティングの重要性

ターゲティング

マーケティングのフレームワークは複数あるため、マーケティング戦略の立案や現状分析など、目的に合わせて活用すると有効です。多くの企業が活用しているSTP分析は、狙うべきターゲットを絞り込み、顧客に響くプロモーションや効果的なアプローチに役立ちます。 しかし、STP分析を使うだけで成功するとは限りません。セグメントを捨てきれず幅広いターゲットに訴求し、思うような効果が得られなかったり、優位性を保てずコストばかりかかってしまったりする事例もあります。 今回は、精度の高いターゲティングを実現する方法や具体的な指標、成功事例について解説します。

ターゲティングの重要性

STP分析は、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)からなり、どの市場でどのような顧客が存在しているかの分布を整理し、自社が戦いやすいポジションを見いだせる手法です。
セグメンテーションは、顧客の持つ性質や属性で市場を細分化する工程です。たとえば、国や地域、文化や宗教といった地理的変数や、性別、職業、家族構成といった人口統計的変数、購買頻度や購買パターンなどの行動変数などの切り口で、市場を細かく分類していきます。
ターゲティングでは、分類された各セグメントと自社商材の特徴や価格帯がマッチしているかをチェックし、アプローチすべき市場を選定します。ここで設定するターゲットは、訴求すべきアピールポイントや顧客とのタッチポイント設計など、すべてのマーケティング活動に関わってくるため、ぶれず明確化させておくことが重要です。
そして、ポジショニングでは、選定したセグメントにおける競合の商品やサービスを把握し、自社の立ち位置を定めていきます。自社と競合他社の位置を視覚的に把握できる「ポジショニングマップ」を利用することで、軸に設定する価値を入れ替えながら優位に立てるポジションを見極められるでしょう。
このように、ターゲティングは市場分析と自社商材を結びつける重要なプロセスであり、勘や感覚ではなく、押さえるべき指標に則って検討する必要があります。

ターゲティングのプロセスは、企業規模や業界により傾向が異なりますが、大きく3つのパターンがあります。

無差別型マーケティングとは、属性などで商品を変えず、一律同じ商品を市場に出す方法です。市場をセグメントで切っても、商品へのニーズが共通している場合は、無差別型の戦略が効率的でしょう。
たとえば、生活する上で誰もが必要とするトイレットペーパーは、年齢や性別問わず需要があるため、無差別型で売り出すのが適切です。また、コカ・コーラは、炭酸飲料が普及する前の時代に、「いつでも・どこでも・だれにでも」というキャッチフレーズでコーラ飲料を世界中の人々に宣伝し、マス・マーケティングで成功した事例です。

差別型マーケティングは、細分化した市場それぞれのニーズに合わせた商品を提供していく戦略です。機能や料金にランクを設けて販売するのも差別型の一つです。さまざまなタイプの顧客に合わせたアプローチができるため、多様化する消費者ニーズへ対応できます。無差別型と違い、複数商品の開発やプロモーションが必要になるため工数も必要です。
コンビニ業界で2位の売上高を誇るローソンは、コンビニのイメージとは一線を画した「健康志向」や「ハイクオリティ」という独自のブランディングで優位性を築いています。

集中型マーケティングは、一つ、もしくは少数の市場に絞り込み、最適な商品を集中的に投じる戦略です。選んだ市場を徹底的にリサーチし、高いクオリティの商品を出すことで特定の顧客から高い支持を受ければ、企業の強みを生み出せます。集中型では的を絞って注力するため、限られた経営資源で最大限の利益を得られる可能性があります。どの市場を選ぶべきか、慎重に判断することが大切です。
「ファッションセンターしまむら」で衣料品販売店舗を展開しているしまむらは、ターゲットを主婦層に絞り、低価格のラインナップでコスト集中戦略に成功しています。

詳しい特徴について1つずつ確認してみましょう。

STP分析のターゲティング時、「6R」と呼ばれる6つの指標に沿って顧客を絞り込むと、多角的に判断しやすくなります。すべてを満たす必要はありませんが、総合的に比較し、優先すべき顧客層を先見することが大切です。

ターゲティングに適した市場かどうかを判断する際、市場の規模は重要な要素の一つです。市場を分析し、自社商品が参入する市場として、規模が大きすぎたり小さすぎたりしないかをチェックしましょう。市場が大きければライバル数も多く、顧客獲得のために多額の投資が必要になることが予測でき、小さければ顧客が少なく利益を上げにくいことが想定されます。調査時点の規模だけでなく、今後の市場拡大予測なども加味すると効果的です。

市場規模を把握する際、市場が拡大傾向なのか、縮小傾向なのか、成長性の有無も視野に入れて評価することが大切です。安定的な市場は豊富なデータから分析しやすいですが、既に競合が地位を確立しているため、顧客獲得に時間を要する可能性があります。一方、新しい市場は先を予測しづらいですが競争相手が少なく、ブルーオーシャンで自社の地位を築きやすいメリットがあるでしょう。隣接する市場の動向も見ながら、どの程度の参入企業が見込まれるか予測していきます。

市場の中でも、周囲へ大きな影響力を与えたり、メディアからの関心が強いセグメントは優先度を高くします。このようなセグメントは、マーケティング施策を実行した際に高い波及効果が期待できるため、狙うべきターゲットと言えるでしょう。
たとえば、多数のファンを持つインフルエンサーが注目している市場は、インフルエンサーを通じて商品が拡散され、効率的な売上アップを期待できます。

顧客に商品やサービスが到達しなくては意味がないため、到達の可能性は大切な切り口です。たとえば、商品が有形物で、手元に届ける必要があるにもかかわらず、条件的に配達が難しかったり、顧客に宣伝が届かない場合などは、ターゲットから除外する方が得策です。

市場における競合の存在や売上、戦略を調査し、どのくらい強敵なのかを分析します。感覚的な評価ではなく、定量的・定性的な情報をもとに、差別化を図れるかどうか検討します。市場で大きな地位を占めている競合があればマーケティングコストは高くなり、競合が少なければ低くなるため狙い目です。

Responseは、マーケティングに対する反応をどの測定できるかどうかを表します。効果的にマーケティングを進めるためには、効果測定が必要です。ターゲットの反応を把握しにくい市場を選ぶと、マーケティングの効果が出ているのか判断できません。効果的な施策がわからないため、安定的な利益を目指しにくくなります。

市場の変化が激しい昨今、分析した時点と数ヵ月後では状況が変わる可能性があります。必ずしも6Rのすべてを満たす必要はなく、総合的に見た上でセグメントを絞ると良いでしょう。

ターゲティング実例

STP分析をうまく活用したマーケティングで、成功した企業事例を紹介します。

ファストファッションブランドの中でも、他社と異なったターゲティングでマーケットにインパクトを与えているのがユニクロです。ユニクロは、商品企画から生産、販売までを自社で担っているため、顧客ニーズに合わせて商品ラインナップや生産量を柔軟に調整ができます。性別や年齢といった不変的な要素で絞るのではなく、潮流に合わせて商品を変え、安定した売上を実現しています。

スターバックスの店舗は日本国内に約1,700ありますが、土地のニーズを事前に調査した上で出店しています。平均以上の収入を得ているオフィスワーカーをターゲットにし、デザイン職や専門職の人が好むクオリティを意識した内装やサービスで、競合他社と異なるブランド力を築いています。また、時間帯による来店目的や客層の差に着目し、早朝と昼間、夕方以降、休日など、異なるターゲットに合わせたサービスを実践しています。

お茶をワインボトルに詰めて販売するロイヤルブルーティーは、従業員が16名(2017年4月1日時点)とリソースに限りがあることを念頭に、ターゲットを絞り込み、刺さる商品で知名度が上がった良例です。酒席でアルコールを好まない人もシャンパンを愉しむようにお茶を味わえることを目指し、ワイングラスで色や香りを愉しめるお茶を作り上げました。当初、ホテルや日航国際線ファーストクラスなど高級志向のチャネルに限定して販売していましたが、口コミで人気が上昇し、現在は百貨店やECサイトでも提供しています。

日本を代表する化粧品メーカーの資生堂も、状況に応じてターゲティングをチェンジし、商品PRに活かすことで売上回復を実現しています。海水浴に行く若者を想定したボディケア用品の売上が落ちたことをきっかけにターゲティング層を見直し、海水浴ではなく部活動に励む高校生を照準としたCMに切り替えた結果、イメージが刷新され、購買促進につながりました。

コカ・コーラでは、自社商品の購買実績を分析した結果、年間で0~2本程度購入する人が過半数を占めていたため、ライトユーザーにターゲットを絞り込み、テレビCMなどマスメディアによるPRに比重を置いています。
また、敢えて顧客を細かいセグメントに分けず、同じ顧客に対し複数の商品を提供している点も特徴的です。特定商品を立たせるのではなく、ブランドとして選ばれることで、幅広いライトユーザーの支持を獲得し、自社のポジションを確立しています。

ライフネット生命は、自社サービスがオンラインに特化していることと、20~40 代の契約者が多いことに着目し、Webでの接客に重点を置いたマーケティングを実践しています。ストレスフリーな動線設計やアプリを使いやすく改良するなど、デジタルファーストでオンラインに投資し、効率的な顧客獲得を可能にしています。自社の強みとターゲットの特徴をうまく組み合わせた戦略です。

子供向け写真館のスタジオアリスは、当時、子供向けに特化した写真館がないブルーオーシャン市場を開拓し、ファミリー層の集客に成功しています。スタジオ内には500着以上の衣装を常備し、カメラマンは子供をあやせる女性スタッフにするなど顧客体験を充実させ、満足度の高いサービスを提供しています。子供の成長やイベントを写真に残したい、という潜在ニーズに着目したターゲティングの好例です。

市場競争で自社が勝ち抜いていくためには、商品とフィットするターゲットを見極め、戦略的にマーケティングを仕掛けていくことが大切です。思うように売上が伸びない、もしくは顧客獲得でつまづいている場合は、STP分析を活用し、ターゲティングの見直しをすると良いでしょう。
ターゲティングにおいては、既存顧客の属性や購買傾向が分析できる「IDレシート」が便利です。コンビニやスーパー、ドラッグストアや飲食店に至るまで、幅広い業態の購買データを集約し、自社に最適なセグメントやポジションが精度高く把握できます。また、既存顧客の属性から、刺さっているターゲットや狙うべきターゲットの分析が可能です。
マーケティングに役立つツールや手法を使いこなし、企業力をアップさせましょう。

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