傾向分析とは「過去データから今後の成果を予測する手法」
傾向分析とは、蓄積されたデータを数学的に分析し将来の売上などの成果を予測する手法です。株式投資で株の傾向を分析するために用いられることもあります。プロジェクトマネジメントでは、スケジュール後半に発生しやすい遅れを回避するよう、前もって察知したうえで早期に対処するために行われています。
傾向分析は、企業の売上の傾向を分析するためにも活用できます。この場合は、売上の時系列データを分析することで今後の売れ行きの判断が可能になります。傾向分析を行うためには「時系列データ」についての理解が欠かせません。また、エクセルなどのツールで過去データを活用する方法にも種類があるので、それぞれの特徴を押さえて最適な手法を取り入れていけば将来的には売上アップにもつながるでしょう。
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傾向分析には時系列データの理解が必須
傾向分析を活用して売上増を目指すために、はじめに「時系列データ」について理解しておきましょう。ここでは、時系列データとは何か、時系列データが変動する要因の種類について説明します。
時系列データとは?
時系列データとは、一定の期間に連続して測定された情報量のことをいいます。時系列データと見なすには、前後の数値に統計学上の相関関係があることが前提です。また、測定する時間により数値が変化していく傾向を把握することを目的としています。時系列データの具体例として、店舗の売上の場合を挙げてみましょう。店舗の売上の時系列データは、売上自体を指すものではありません。店舗で一定期間に売上が発生したときの数値を集めたものが時系列データです。
時系列データの変動要因
時系列データには時間軸で変化していくという特徴があり、主に4つの変動要因があるので要因ごとに説明します。
季節変動
季節変動は季節によって変化する要因で、繰り返し変化する周期変動のひとつです。1年周期で変化するパターンを繰り返すという特徴があります。たとえば、大気中の二酸化炭素の濃度変化の場合は、夏は低く冬に高くなる傾向です。また、1年間に旅行する人数の変化では、年末年始や夏休みなどには増加するというパターンを繰り返しています。この場合には、時系列データを分析することで旅行会社の売上予測が可能になるでしょう。
傾向変動
傾向変動は「トレンド」ともいい、長期的な増加傾向や減少傾向を表すものです。傾向変動は細かく捉えるのではなく大きな変化を把握するための変動要素で、経済の動きなどを分析する際などに使われています。たとえば、二酸化炭素濃度のデータの場合などは、長期的に観測された時系列データが用いられています。その結果、何十年のあいだに二酸化炭素濃度が高まっている、と分析されていることはよく知られているでしょう。
循環変動
循環変動はサイクルとも言われる変動要素で、周期性のある変化を表すものです。傾向変動と混同しやすいのですが、循環変動のほうは上昇傾向と下降傾向の動きが一組に含まれています。たとえば、景気を時系列データで見ますと、3年、5年、10年など一定の期間で繰り返し変化が起こっていると分かります。このような時系列データを使えば、ある程度の予測を立てて対策を行うことも可能です。
不規則変動
不規則変動は「ノイズ」ともいい、ほかの3種類の変動要素以外の短期間の変化を表すものです。予期せぬ自然災害による株価の変化などがこれにあたります。不規則変動では、データの変化が元に戻るケースと戻らないケースがあるので継続して注視しなければなりません。また、時系列の分析において、何を不規則変動とするかは目的によって変わるのも特徴です。たとえば、長期的傾向を把握する場合、短期的な変動は不規則変動になります。
エクセルを活用!傾向分析に役立つ3つの手法
ここでは、エクセルを使って傾向分析を行う手法を説明するので参考にしてください。
移動平均法
移動平均法は、対象月から少しずつ移動しながら平均を導く傾向分析の手法です。対象月に近い時期の状況を把握しやすいメリットがありますが、反面すべてのデータの活用は難しいという特徴があります。
エクセルに入力する際には、参照範囲のAVERAGE(平均値)を活用します。
<例>Tシャツの売れ行きの傾向分析について
①1月〜12月のTシャツの売れ行きを調査する。
②3カ月ごとに平均値を出す。
③売上は「数値A=1月の100枚」、「数値B=2月の170枚」、「数値C=3月250枚」、「数値D= 4月200枚」と設定する。
この例で1~3月までの平均値を算出するには「=AVERAGE(数値A:数値C)」を入力します。次の3カ月の平均を出すには「=AVERAGE(数値B:数値D)」を入力します。
SUBTOTAL関数
SUBTOTAL関数は、集計する方法に従いさまざまな集計値を求める際に使うものです。エクセルの指定範囲内に、ほかのSUBTOTAL関数による小計が入っている場合には、自動で排除する仕組みも備わっています。SUM関数と異なるのは、店舗ごとの小計と総合計を求める時などに活用できる点です。SUM関数を使う場合には、集計範囲すべての合計値が算出されてしまいます。フィルタ機能を利用するなら、SUBTOTAL関数を使うほうがいいでしょう。
エクセル入力時は「=SUBTOTAL(集計方法,参照範囲)」を活用します。集計方法「1〜11」で示されている異なる計算方法の中から選択・指定します。たとえば「1」(AVERAGE)は、平均値を求める計算方法です。傾向分析に活用するのは「9」(SUM)で、合計値を求める計算方法として選択します。
ピボットテーブル
ピボットテーブルは、蓄積された膨大なデータを集計・分析できるエクセルの機能です。店舗の売上分析やグラフ化などを瞬時に行えるため、関数を使って傾向分析を行うのが苦手な人にもおすすめの方法です。ピボットテーブルを活用するには、1行目にタイトル行を入れる、2行目以降に空白行がないこと、連続したデータがあることが必要です。また、テーブル化する対象範囲にデータ以外の情報がないこともポイントになります。
ピボットテーブルの便利な機能「ピボットグラフ」では、データの可視化が可能です。ピボットテーブル内のデータを自動的にグラフ化できるため、数値だけで見るよりも傾向分析が簡単になります。ピボットグラフを呼び出すには、ピボットテーブルツールを選び、分析をクリックするだけなので簡単です。
【番外編】傾向分析と合わせて活用したいデータ分析法
データ分析には傾向分析以外にもさまざまな手法があります。ここでは、主なデータ分析法について紹介します。
回帰分析
回帰分析とは、データを分析し傾向予測を行う基礎的な手法です。関数をデータに当てはめて数値の変動を分析し、変化についての説明や予測などを行います。この変数の数によって回帰モデルや目的は異なり、1つの場合は「単回帰分析」でグラフは線型で表されます。変数が2つの場合は「重回帰分析」で、単回帰分析よりも高度な分析が可能になるのが特徴です。
回帰分析を活用する例として、広告を最適化するために「クリック率」を分析する方法があります。たとえば、単回帰分析では「背景のカラーや模様、質感」をどのようにすると広告のクリック率がアップするのかを予測する、重回帰分析では複数の変数を用いて背景以外の要素を分析することも可能です。
決定木分析
決定木分析は、顧客データやアンケートなどの情報に基づき、ツリー状のモデルを作成する手法です。データの予想や見分け方、分類などを目的に活用されています。アンケートやリサーチ結果の原因である「説明変数」は、クロス集計をしなくても単一回答や複数回答などの多様な設問スタイルの調査結果から分析できます。決定木分析は、購入の可能性が高い顧客の人物像を把握したり、企業の商品が顧客に与える影響が高い要素を分析するケースに活用されています。
因子分析
因子分析とは、統計学をもとにした分析方法のひとつです。さまざまな因子(原因)が影響した結果の背景には、どのような要素があったのかを分析します。アンケートの回答を分析し、表面には見えない顧客の意識などを発見する目的で使われるという特徴があります。たとえば、売上が減少している系列店舗をリニューアルする際にアンケートを実施し、各店舗の顧客属性を分析したという事例があります。この事例では、各店舗の顧客属性のニーズに合わせて、スーパー内の店舗にはサンプルを置く、学生が多いエリアには低価格の商品を増やすなどのリニューアルを行い売上を伸ばせました。アンケートの因子分析を活用したことで、売上が伸びた例です。
ABC分析
ABC分析とは、アルファベットのように店舗の売上額や在庫などをランク付けして、管理する度合いの優先順位を明らかにする分析方法です。これにより事業を効率化し、最適な経営戦略を立てることを目的としています。実際の経営に則した指標を持てるという特徴があります。たとえば、コストが高い項目があれば削減への工夫をする、売上額が高い商品のマーケティングに力を入れる、在庫の優先度合いをランク付けする、などの活用方法があります。
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レシートデータから売上傾向を分析できる「IDレシートBIツール」
傾向分析やほかのマーケティングに役立つ分析には、レシートデータも活用できます。レシートには、顧客の思考や市場の実態を把握できる有益な情報が満載です。具体的にはレシート1枚で、日付・時間・商品名及び金額(値引・単価・個数)・合計金額・電話番号、さらには購入した店舗のチェーン名・店舗名などの情報からユーザーのリアルな購買行動を把握できます。
では、具体的にレシートデータから売上傾向を分析するには、どのようなデータ分析をすればいいのでしょうか。当サイトに掲載している"IDレシートデータ"活用事例を紹介します。
「カヌレ」そっくりの人気菓子「カヌレット」の購買特徴や相乗効果を分析
2022年4月、フランスの焼菓子「カヌレ」そっくりのグミ「カヌレット」(UHA味覚糖)が発売され、一時は売り切れが続出する人気商品となりました。「カヌレット」の購買特性や、「カヌレ」との相乗効果には、どのようなものがあったのでしょうか。レポートの中から、ポイントとなる一部を抜粋して紹介します。
■「カヌレット」の購買額推移
まずは、「カヌレット」の購買額推移を確認します。
時系列で、変化が出ていれば、何かしらの要因があると推測できます。グラフが伸びているタイミングに、どのような要因があるかを推測して、影響ありそうな事象を突き合わせて検証していきます。
「カヌレット」とグミTOP10商品の購買額比較
■期間別の変化の要因分析
次に、「カヌレット」の購買額の推移の山を期間で区切り、対象期間ごとの購入者属性の変化を割り出します。年代別に変化が見受けられるので、その理由を推察していきます。
「カヌレット」購買額の推移と期間の定義
「カヌレット」購入時期別のデモグラ変化~年齢・職業~
「カヌレット」購入時期別のデモグラ変化~まとめ~
■購入業態の分析
上記で、一度減少傾向に推移した後、なぜ安定に推移したのかを、商品が購入されている店舗の業態変化を調べます。その結果、10月の購買額の過半数が、コンビニでの購買となっており、それ以降コンビニでの購買が目立つことが分かりました。
「カヌレット」業態別の購買額推移
このように、一度減少した購買額が、なぜ10月に急激にコンビニで増加に転じたのか、その背景に「カヌレ」の存在が関係していないか、という分析を行っています。
詳しい分析結果は、こちらをご覧ください。
https://receiptreward.jp/solution/report/analysis16_230412.html
また、その他のいろいろな視点での"IDレシートデータ"活用事例は、こちらをご覧ください。
https://receiptreward.jp/solution/report/
「IDレシートBIツール」の詳しい情報はこちらをご覧ください。