売上分析の目的・方法・メリットとは?

売上分析の目的・方法・メリットとは?役立つ4つの手法も紹介

売上分析とは、特定の条件や切り口を選んで詳しく売上高を分析する方法です。自社の経営状況を把握して、適切な目標を設定するために欠かせません。この記事では売上分析とは何か、どのような手順で行うのか、活用できるフレームワーク、メリットなどを解説します。自社の効果的な営業活動やマーケティングにつなげるためにも、売上分析の基本を理解しておきましょう。

売上分析とは、特定の期間や商品などの条件を絞り、詳細に売上高を分析することです。売上分析を実施する目的は、自社の経営状況を正確に把握することで具体的な目標や改善項目を設定するためです。つまり、現実と理想のギャップを、売上という客観的なデータによって分析し、営業活動やマーケティングに活用するために実施します。そして、次年度や来月の具体的な目標を、数値で設定できる状態を目指します。

売上分析には分析対象の細分化が必要です。具体的には、月別・商品カテゴリー別・顧客別・営業担当者別などの分け方があります。それらを前年の同月と比較したり、競合会社の施策と関連させて分析することもあります。売上分析を実施するうえで勘違いしてはならないことは、分析しただけで自動的に解決策が見つかるわけではないことです。売上分析でできることは、事実の確認と問題点や課題の発見に留まります。そこからマーケティング施策の立案や実施につなげるためには、他のマーケティング手法を組み合わせることが必要です。

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売上分析は「目的の定義」「売上データ収集」「分析結果の可視化」の手順で進めます。それぞれのステップを詳しく解説します。

売上分析を実施する前に必要なことは、目的を明確に定義しておくことです。売上データから得られる情報は膨大であり、目的もなく分析してしまえば非効率になってしまうからです。また、分析のための分析になってしまったり、木を見て森を見ずという状態になったりして成果も上げられません。「売上分析をすれば、何か解決策が見つかるはずだ」という考え方は避けましょう。あらかじめ分析の目的や軸を定めることで、初めて必要な情報を選別できます。

では、目的や軸をどのように定義すればよいのでしょうか。たとえば初めに、企業全体や部門・個人など、「どの範囲の目的なのか」を決めます。大きな目的があって小さな目的に落とし込むのはかまいませんが、組織のどの階層の目標なのかを定義しておくことは必須です。具体的には「自社業績に貢献度が高かった今季の売れ筋商品を把握する」という目的が挙げられます。営業部なら「既存顧客のニーズをパターン化する」などが挙げられるでしょう。個人レベルなら「担当者別の商品紹介セミナーの効果を測定する」などが考えられるかもしれません。いずれにしても、売上分析の範囲と目的を明確にすることで、どの売上データを収集して、どのような角度で分析したらよいかが決まります。

現時点で上記のような目的が設定できない場合は、課題や問題点を見つけて仮説を立てると、売上分析の方向性が決まりやすくなります。たとえば、売上が伸びないのは、営業員のスキルの問題ではなく、「営業員に渡している顧客リストの精度が低いのではないか」という仮説が立てられたとします。この場合、同じ担当者が営業訪問をしているのに、顧客リストで高いランクが付けられた顧客に対する売上が低いなら、仮説を実証する要素になるでしょう。このように仮説を立てると、「営業成績を伸ばしたい」というような漠然とした目的と違って、売上分析を具体的に実施できます。

現状を正確に把握するためには、信頼できる売上データを、分析に必要な量だけ集める必要があります。収集するデータは内部データと外部データに大きく分けられます。内部データとは自社に蓄積されている売上高や顧客単価、商品単価などの情報です。また、事務所費用や人件費などの固定費、営業員の交通費やコピー機の紙・インク代などの変動費なども内部データに分類されます。一方、外部データとは、自社以外から収集する売上データです。無料で活用できる外部データには、国や自治体が公表している調査データなどがあります。また、費用を支払って入手できる専門家の調査レポートや、ベンダーが収集して提供しているビッグデータもあります。

ほとんどのデータは、そのままでは自社の売上分析に活用できません。たとえば単に顧客別の売上を集計するだけでは、いくら詳しく調べても効果的な活用はできないでしょう。特定の顧客層に分類して自社の売上の貢献度を調べることや、売上だけでなく購入回数や頻度でランク付けするなどの加工が必要です。したがって、データを収集する際は、後で加工しやすいようにデータフォーマットを決めておくことが重要です。もちろん、十分なデータ量を蓄積するための通信環境やストレージも欠かせません。また、ビジネスの種類によっては、リアルタイム性も考慮することが必要です。ツールによって自動的に収集・分析できなければ、売上分析ができても、具体的な施策の実行が遅れてしまうからです。膨大な量のデータを効率的に収集して分析するには、データ処理ソフトやマーケティングツールを導入することが欠かせません。また、分析対象や用いる分析手法によっては、データサイエンティストやデータアナリストなどの専門家の登用、人材育成が必要です。

経営者やマーケターなどの分析者が見やすいように分析結果を可視化しましょう。表計算ソフトで集計した数字の羅列のような形式では、現状を把握し、課題や問題点を発見するのは難しいからです。また、分析途中で売上データを可視化することも役立ちます。データ量が膨大な場合や仮説を検証中である場合では、注目するべき要素やパターンに「アタリ」を付けることが重要であるからです。

可視化ツールとして、Excelの利用が検討できます。売上データからグラフを作成することや、ピボットテーブルの機能を使って必要なデータを抽出するなどが可能です。しかし、Excelはビッグデータのような膨大なデータ量に対応しておらず、搭載されている統計機能や分析手法も限られています。そのため、一般的にはBIツールの利用がおすすめです。BIとは「ビジネス・インテリジェンス」の略で、内部や外部から収集する膨大なデータを分析して、経営に活用することを意味します。BIツールを活用すると、大量の売上データを分析して、売上分析のレポートやダッシュボードなどを自動的に作成できます。必要な情報が見やすく視覚化されるため、現状を理解しやすいでしょう。また、経営判断のスピードもアップします。BIツールのなかには、基幹システムや外部業者が提供しているデータベースと連携できるものもあります。このようなBIツールを活用すれば、さらにデータ収集や分析を自動化しやすくなり、分析スピードを上げることが可能です。

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売上データの分析に役立つ4つの手法・フレームワーク

売上分析を的確にかつ効率的に行うには、確立された手法・フレームワークを活用するのが有効です。ここでは、アソシエーション分析やABC分析、デシル分析、RFM分析の概要を解説します。

アソシエーション分析は物事の関連性に注目するマーケティング手法です。連関分析などとも呼ばれます。たとえばPOSレジのデータから、同じ商品を購入している顧客層を見つけ出す「マーケットバスケット分析」は、多くの店舗が実施している方法です。一見関連性のない物事の相関性に注目することで、新たな顧客層を見つけ出すこともできます。たとえば、ドラッグストアでおむつを購入する男性は一緒にビールを購入しやすい、という今では広く知られている法則は、アソシエーション分析によって発見されました。

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ABC分析は商品の売上高を全体の売上に占める割合に応じて、A・B・Cにランク付けする手法です。自社の売れ筋商品、強みなどを定量的に分析できるでしょう。「売上の8割は全顧客の2割が生み出す」というパレートの法則がありますが、商品に関してもこの法則が当てはまるケースは少なくありません。主力商品を軸にした経営や営業活動で売上向上を図りたい場合は、ABC分析で現状を把握するのが効果的です。

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デシル分析は一定期間の購入金額の高い順に顧客を並び替え、10グループに分けてランク付けする手法です。優良顧客がわかるとともに、自社の収益がどのような顧客によって支えられているかも判断できます。たとえばランクが最も高い1グループによって売上の9割以上が占められているなら、ロイヤルカスタマーが自社の収益基盤と考えられるでしょう。シンプルな方法で売上貢献度の高い顧客を見つけられるため、特定の顧客層に集中的なアプローチを行って売上向上を目指す場合に向く方法です。分析に必要な要素は顧客情報と購入金額、購入日だけなので、どの企業でもすでにある売上データで分析できるでしょう。また、計算方法も単純であるため、Excelなどの一般的なソフトでも、十分に分析可能です。

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RFM分析はデシル分析を進化させたような手法です。Monetary (購入総額)だけでなく、Recency(直近の購買日)とFrequency(購入頻度)の総合点で顧客をランク付けすることにより、精度が高められます。また、R・F・Mのバランスによって、どのような顧客かを推定可能です。たとえばMとFが大きいのにRが小さい(遠い)場合は、かつての優良顧客が競合他社に離反した可能性が疑われます。部署を超えた担当者も交えて作業をすると生産性が高まります。また行動のステップに沿って記入していくことで、ペルソナが抱く思考をイメージしやすくなります。

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売上分析で企業側が得られるメリットは、顧客や市場ニーズを深く理解できることです。販売促進の効果を検証し、数字に基づいた目標を設定できるメリットも期待できます。それぞれを詳しく解説します。

ロイヤルカスタマーとは、自社商品に愛着を持っており、継続的に購入してくれる既存顧客のことです。購入額や購入回数が多い優良顧客と同じ意味で使われることもありますが、競合他社に離反しにくい点が異なります。自社商品に対して強い思い入れを持っており、長期にわたって安定した収益が見込めるため、企業が最も大切にするべき顧客です。売上分析を行うと、ロイヤルカスタマーを発見できます。顧客ごとの売上高を時系列で詳しく分析するのは、売上分析の基本であるからです。売上分析によってロイヤルカスタマーを認識して理解を深めれば、安定した収益につながる適切な営業活動を実施できるようになるでしょう。ロイヤルカスタマーに対して集中的なアプローチをすることで、売上向上が図れる場合もあります。

売上分析では、どのような商品の売上が大きいのか、また、その商品を購入している顧客の特徴は何かを分析するのが基本です。つまり、売上分析には顧客分析が含まれることが多く、顧客ニーズ、市場トレンドの理解が深まります。特に会員情報と売上を照合できるビジネス形態の場合、どのような基本属性を持つ人に何が売れたのかが詳しくわかります。たとえばスーパーの全店舗の売上を集計した結果、20代男性の春雨ヌードルの購入数が増加しているという、今までなかった変化を発見したとしましょう。外部状況も含めて分析すれば、「外出規制によって運動ができず体重増加に悩む男性が増え、ヘルシーな食べ物に対する需要が高まっている」などと市場ニーズを推測できます。このような分析結果は、マーケティングで行うペルソナ設定の情報としても活用できるでしょう。

売上分析は効果測定の手段としても活用できます。売上分析を行い現状把握と課題発見ができた後は、目標設定を行い施策を実施します。したがって、売上分析後は効果測定を実施するのが一般的です。このサイクルで改善やより高い目標設定を繰り返すことで、さらにパフォーマンスを高めていきます。販売促進の施策ごとに効果測定を行い、売上への貢献度が高かった施策に重点的に予算を配分することにも役立ちます。ノウハウを共有して、他の事業所や店舗に導入も可能です。

たとえば販売促進の一環で、ウェビナー(Web上で実施するセミナー)を新たに加えたとします。この場合は、ウェビナー経由での商談化、契約数などを分析します。効果検証の結果によっては、通常のセミナーをオンラインに移行して、コストを削減しながら売上向上を目指すなどの目標を立てられるでしょう。

売上分析によって現状が的確に把握できれば、自ずと目標設定も現実的になります。仮に集客数と売上に比例関係があるならば、集客数を増やせばどのくらい売上が上げられるかが予測できるでしょう。適切で達成可能な目標が決まれば、営業活動やマーケティングの施策もより具体的に絞り込めます。「売上を3%上げるには集客数を20%増やせばよい」のように成果達成の具体的なプロセスがわかっていれば、具体的な施策も決めやすくなります。また、関係者のモチベーションも高まるでしょう。部署を超えた担当者も交えて作業をすると生産性が高まります。また行動のステップに沿って記入していくことで、ペルソナが抱く思考をイメージしやすくなります。

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売上分析を効率的にするには、切り口を決めておくことが大切です。切り口とは、最も基本的な要素では「いつ(購入時期)」「誰が(顧客)」「何を(商品)」「どれだけ(購入頻度)」などがあります。また、売上分析に活用されている手法やフレームワークも切り口の種類です。切り口を決めておけば、データの抜けがなく効率的に売上分析ができるでしょう。定期的な効果測定として売上分析を行う際には、分析にブレが生じるのを防いでくれます。切り口を決める際には優先順位を決めておくと、なおよいでしょう。データ収集や分析はやろうとすれば限りがないからです。時間がなくて肝心の分析ができていない事態を防ぐために、重要なデータから順に分析できる方法を決めておきましょう。

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自社の売上分析を横断的に実施するには、レシートデータを活用できます。レシートには、顧客の思考や市場の実態を把握できる有益な情報が満載です。具体的にはレシート1枚で、日付・時間・商品名及び金額(値引・単価・個数)・合計金額・電話番号、さらには購入した店舗のチェーン名・店舗名などの情報からユーザーのリアルな購買行動を把握できます。

「膨大なデータを自社で集計・分析するには時間がかかる」とお悩みの方はBIツールの導入がおすすめです。「IDレシートBIツール」は独自で構築した膨大なレシートデータから、コンビニエンスストア・スーパー・ドラッグストアなどの店舗別の売れ行きを可視化しています。自社と競合商品の実売価格・売上が確認でき、顧客の理解だけではなく、商談時の資料としても利用可能です。

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条件や切り口を決めて詳細に売上高を分析する売上分析は、的確に現状把握するために欠かせない方法です。売上分析を適切に実施することで、ロイヤルカスタマーの発見や市場トレンドの検証などができます。また、理想と現実を埋めるための適切な目標数値も設定できるでしょう。売上分析の基本手順に従い、手法・フレームワークも活用しながら、自社に合った売上分析を進めましょう。

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