貴社に適切な「行動観察調査」を選ぶ

貴社に適切な「行動観察調査」を選ぶ

インターネットで検索をすると、さまざまなマーケティング手法がヒットしますよね。情報収集を日々欠かさない人は、これまで知らなかった新しいマーケティングの手法を知る機会も多いでしょう。

マーケティングの成果を得るには、自社に合った手法を取り入れることが大切です。今回は、企業のマーケティングで行われている「行動観察調査」を取り上げて、調査の概要や活用事例、代表的な手法などをご紹介します。

マーケティングで行われる行動観察調査は、エスノグラフィーとも呼ばれる定性分析の調査手法です。エスノグラフィーは、社会学や文化人類学などの学術分野の研究でも広く採用されており、多種多様な調査のアプローチがあります。

行動観察調査の目的は、通常の調査ではわかりづらい人間の意識にも領域を広げて本音を探ることです。一般的なインタビューやアンケートは、調査対象者の顕在意識の把握には役立ちます。しかし、このような調査では対象者本人が気づいていない潜在意識の把握までは難しいのが現実ですよね。

行動観察調査には、「買い物への調査員の同行」や「Webサイトでのユーザーテスト」などがあります。こういった行動観察調査は、インタビューやアンケートでアプローチができない購買層の潜在的な意識をつかめる可能性が高いとされています。そのため、行動観察調査は他の調査手法とは違った価値があるとして企業からも評価されています。

行動観察調査が重要視されるのは、マーケティング調査に欠かせないアティテュード(態度・気持ち)のデータが得られるからです。アメリカの経営学者であるF・コトラー氏は、マーケティングでは消費者のビヘイビア(行動)を把握するデータとともに、アティテュード(態度・気持ち)のデータが重要になると提唱しました。

彼は「ビヘイビア(行動)は、ビッグデータなどの定量データを分析することで詳しく把握ができる」とも述べています。実際、顧客の購買履歴などが入手できれば、ビヘイビア(行動)のデータを得ることはさほど難しくはないでしょう。

一方、アティテュード(態度・気持ち)は定量データで把握することが困難です。顧客の態度や心理状態などは、ビヘイビア(行動)のように単純に定量化できないケースが少なくありません。

マーケティングの分野でしばしば行われる調査には、Webサイトやメールを介して実施されるインターネット調査などがあります。この調査で得られる回答は、言語として表せるものに限定されます。したがって、言語化ができない潜在意識の把握はインターネット調査では難しいです。複数の調査対象者に進行役が質問を投げかけるグループインタビューも、マーケティングの調査としてよく知られています。グループインタビューは、調査対象者のより深い心理にアプローチをして回答が引き出せるケースがあります。

たとえば、進行役が調査対象者の気づきを誘発するような何らかのきっかけを与えたようなケースです。グループインタビューでは、進行役が意識的に調査対象者の潜在意識を引き出すような質問をしたり、相手が意識していなかった心理に気づくような問いかけをすると、インターネット調査ではつかめなかった相手の深い心理まで把握ができる可能性が出てきます。

調査を行う主体にとっても、時に想定外の気づきが得られるのが行動観察調査です。行動観察調査の場合は、調査対象者の行動を観察することで相手の心理状態をイメージします。買い物などをする場合、人間は無意識に行動をしているケースが少なくありません。このような顧客の行動を客観的に観察することは、潜在意識を把握するヒントを得るきっかけになります。調査対象者の行動観察は、これまで気づかなかった問題点の発見も促してくれることがあります。

問題点を分析して新たな仮説が発見できれば、調査対象者の潜在意識もよりイメージしやすくなるでしょう。対象者が行動に至るまでのストーリーをイメージすると、マーケティングにもプラスになることが考えられます。

行動観察調査は、国内外のさまざまな業種の企業がマーケティング戦略の一環として取り入れ始めています。

しかし行動観察調査を行うには、一定のコストや手間がかかります。コストや手間をかけても調査を進める価値があるかどうかを知りたいときは、実際に調査を行っている企業の事例が参考になるでしょう。調査をすることでどのような変化が見込めるのかも、チェックしておくと役立ちますよ。

行動観察調査を顧客のニーズの把握に役立てている1つ目の企業が、メーカーの花王です。

2007年に、自社の生活研究センターでエスノグラフィーを活用した、アンチエイジングに関する調査を行いました。この調査では、アンチエイジングに「思い入れを強く持っている人」や「嫌悪感を覚える人」などのエクストリームユーザーを選び、社員食堂や自宅などユーザーにとって身近な環境でインタビューを実施しました。調査で得た情報を分析するプロセスにもこだわり、活発な意見交換ができる工夫をしているのも花王の特徴です。調査の結果、「エイジングのアクションには、その人のアイデンティティへの思いが関係している」という仮説が得られました。このような仮説はエクストリームユーザーのみならず、一般の消費者の傾向にも適用できることがわかっています。

住宅設備のメーカーとして知られるLIXILも、行動観察調査を商品開発に役立てている企業のひとつです。同社が発売する「ひろまるコンロ」は、大阪ガスによる行動観察調査で得られた結果を生かして開発された商品です。調査ではカメラを使いながらスタッフが調査対象者の自宅に出向き、家庭でどのようにコンロが使われているかを見守りました。行動観察によって見えてきたのが、従来型のコンロは使用中に複数の鍋で同時調理がしにくいといった不便が生じるケースがあることです。現場でしっかりと問題点を把握したことで、同社では使いやすさを向上させた「ひろまるコンロ」を開発することができました。

行動観察調査は、アメリカの企業でも広く活用されています。デザインコンサルティング会社のIDEOでは、子供が歯を磨くときの様子を行動観察調査で把握して子供が使いやすい歯ブラシを開発しました。この調査で注目されたのが、子供が歯磨きをするときの指の動きや力の入れ方です。同社では「細かく指を動かしながらのブラッシングが苦手」などの子供の傾向に注目し、デザインに工夫を凝らしたオリジナルの歯ブラシを新たにリリースしました。発売された歯ブラシはアメリカで高い売れ行きを見せ、子供はもちろん、大人の消費者からも好評を得ています。

このように行動観察調査をすることで、顧客の表面的な意識のみならず、潜在意識の領域まで浮かび上がらせます。では、この顧客の潜在意識を具体的にどこに落とし込めばいいのでしょうか。

マーケティングでは、カスタマージャーニーを意識してプランを練るケースが多いですよね。ペルソナを設定した顧客が商品の購入や契約に至るまでのプロセスを表したカスタマージャーニーマップは、顧客の心を巧みにつかむ上でも役立ってくれる可能性があります。より効果が期待できそうなアプローチを考えるなら、カスタマージャーニーマップを作る際に、「商品を見つける」や「購入する」などのフェーズごとに顧客の心理を、行動観察調査で得た結果から分析しましょう。

カスタマージャーニーの作成で重要になのは、顧客の心理をいかに正確に把握するからです。行動観察調査を行うことで、新たな気づきやニーズを得られ、より深い分析にもとづいたカスタマージャーニーを作成できます。顧客が本当に望んでいる商品やサービスを提供できるならば、コストや手間をかけてまでも行動観察調査を実施するメリットは大きいといえるでしょう。

関連記事:カスタマージャーニーとは?マップの作成方法や企業事例を学ぼう

幅広い行動観察調査

購買観察調査の活用イメージを紹介しましたが、ここでは詳しく「行動観察調査の手法」を解説します。マーケティングに取り入れるときは、自社に合ったスタイルの手法を選ぶのがベストでしょう。

行動観察調査の定番ともいえるのが、調査する側が調査対象者の自宅や職場などに赴くスタイルです。このようなスタイルの調査は、訪問観察調査とも呼ばれます。訪問観察調査のメリットは、慣れ親しんだ環境に身を置くことで無意識のうちに現れてしまう行動も含めて観察ができることです。無意識の行動にはその人の潜在意識が表出しやすく、じっくりと観察することで新たな事実が発見できる場合も多々あります。

訪問観察調査のデメリットは、一定のコストがかかることです。この調査では、調査をする側が相手の自宅や職場まで出張するため、スタッフの旅費や車両費などが発生します。調査をする側に分析力などが求められることも訪問観察調査のデメリットといえるでしょう。ちなみに、5名から6名を対象にした訪問観察調査の費用の相場は、10万円から20万円前後です。

店舗や事務所などではカメラを使って来客の行動を観察する行動観察調査もよく行われますが、このようなスタイルの調査では店舗や事務所の要所要所にAIカメラなどを設置します。AIカメラでの行動観察調査のメリットは、来客がふとした拍子に見せる表情や行動を逐一観察できることです。カメラを用いるとスタッフがその場に居合わせなくても、画像を後から見て相手の反応がチェックできます。たとえば、アパレルショップでAIカメラでの行動観察調査を行う場合、来客がどのような順番で店内を回るかや陳列棚での足の止め方などを分析することが可能です。画像をよく分析することで、商品を買う人がどういった行動を取って最終的に購入に至るかなども見えてくるかもしれません。

このスタイルで行う調査のデメリットは、高額なコストが発生することです。AIカメラを使って店舗の行動観察調査を行う場合、費用の相場は初期費用も含めておよそ120万円前後です。継続して調査を行うと、ランニングコストもかさむ可能性があります。

この他、パソコンやスマートフォン、専用のシステムなどを使って行われるアイトラッキング調査も行動観察調査のスタイルのひとつです。視線計測とも呼ばれるアイトラッキングは、視線の動きからその人の心理状態を分析するのが特徴です。アイトラッキングシステムと連携したゴーグルを調査対象者にかけてもらい、視線の動きから購入に至るまでの状態を把握する行動観察調査はショップなどでもしばしば採用されている行われているアプローチです。アイトラッキングでの行動観察調査のメリットは、比較的手間がかからないことです。この行動観察は対象が視線に限定されています。そのため、調査をする側の負担が軽く、必要な情報がスムーズに入手しやすいというメリットがあります。

アイトラッキングでの行動観察調査のデメリットは、視線の動きと心理状態をひもづけして分析する力が調査する側に求められることです。一定の知識がないと、正しく情報を分析するのは難しくなるでしょう。ちなみに、3名前後の調査対象者を設定して行われるアイトラッキングでの行動観察調査の費用は、35万円から40万円前後です。

ここまでお読みいただいた方の中には、「行動観察調査は実施したいけど、長い時間をかけていられない」という方もいるのではないでしょうか。そんな方にご活用いただきたいのが「IDレシートBIツール」です。

当社では、一般消費者が日々買い物する際に記録される、「レシートデータ」を収集しています。家計簿データを活用していますので、日常の自然でリアルな買い物状況が分かります。また、全国各地のコンビニエンスストア・スーパー・ドラッグストアに限らず、飲食店や百貨店や各種専門店とあらゆる業態のデータが存在します。

「IDレシートBIツール」は日々最新のレシートデータを集めて、3億枚ものレシートをご自身で分析できるサービスです。消費者の購買や併買のデータを、店舗・カテゴリーを横断的に確認できます。そのため、ひとりのお客様がどのスーパーでどの商品をいくらで購入したのか、別の店舗に行ってからはどんな商品を購入したのか、各店舗で同時購入したのはどんな商品なのかなど、行動観察調査にも活用できます。

独自のBIツールで簡単に分析・集計できるので、調べたいときにすぐに分析できます。レシートデータは、日々最新情報が更新されるので、いつでも最新データで分析が可能です。

ご興味を持っていただけましたら、ぜひこちらをご覧ください。

行動観察調査のメリットを活用すれば、他社に差を付けられるような効果的なマーケティングができる可能性があります。調査をする上でひとつのポイントになってくるのが、対象者のどのような行動に注目をするかです。分析をする行動データを選ぶ際には、従来の手法に捕らわれることなく柔軟な発想をすることも必要になってくるでしょう。

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