コンビニの業界動向

コンビニの業界動向は?
現状や今後の展望、大手3社が取り組む施策もご紹介

コンビニは日本人のライフスタイルそのものと言っていいほど生活に密着した存在となりました。ほとんどの店舗が年中無休、24時間営業であり、日常の買い物だけでなくATMや公共料金の払込み、宅配便といった用事が1店舗で済ませられるという大きな利点を持っています。

しかし、国内での新規出店は頭打ちとの見方もあり、コンビニ大手3社においても今後は既存店の売上アップに戦略をシフトせざるを得ない状況です。日本における数少ない成長産業であるコンビニ業界が、これからの時代をどのように乗り越えていくのか気になるという方も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、コンビニ業界の現状やこれからの動向、大手3社が取り組む施策や、多様化する消費者ニーズを把握するために必要なポイントについて解説していきたいと思います。

コンビニ業界は2019年まで、右肩上がりに販売額を伸ばしていました。しかし2020年はコロナウイルスの流行の影響もあり、販売額は減少。2021年は少し上昇を見せたものの、2019年の水準には届いておりません。2022年も売上推移は上昇していますが、従来の戦略では今後のコンビニ業界の成長は見込めず、新たな戦略を試行錯誤して編み出している状態です。


コンビニエンスストアの販売額の推移

引用元:コンビニエンスストアの販売額の推移


コンビニ大手3社の既存店売上高の推移

引用元:コンビニ大手3社の既存店売上高の推移

コンビニは「フランチャイズ」と呼ばれる方式で、急成長を遂げてきました。本部が加盟店に対して、自社商品の販売やブランドの使用などを認める代わりに、加盟店の利益の一部を受け取るという方式が、フランチャイズ方式です。加盟店はブランド力を活かし、そしてクオリティの高い商品を売ることができるので、店舗を立ち上げればすぐにでも利益を見込めます。一方で本部は利益の一部を受け取ることができるため、加盟店と本部の両者にメリットがあります。

フランチャイズ方式であれば、加盟店が開業資金や人員の補充を行うため、本部は拡大のための資産を大きく削減できます。そのため低リスクで多くの店舗を出店することができ、コンビニは一気に成長していきました。

日本には様々な種類のコンビニがありますが、パッと名前が浮かぶのはセブンイレブン、ファミリーマート、そしてローソンの3社ではないでしょうか。実際コンビニ全体の売り上げの90%を、この大手3社が占めています。確かにこの3つのコンビニは、街で見かけることがとても多いですよね。コンビニはいわゆる寡占状態となっており、実質的にこの3社で顧客を分けるような状況になっています。

コンビニ業界はフランチャイズ方式により、本部の新規出店にかかる費用を削減することで店舗数を増やしていき、急成長してきました。しかし2019年に初めて、店舗数が対前年比で減少。2019年以降は新規店舗を急ピッチで増やしていく戦略は、人口の減少なども影響し、頭打ちになったと考えられます。
店舗数の拡大は難しくなってきたものの、2021年は販売額が緩やかに上昇していることから、既存店舗の売り上げを伸ばす戦略へと、転換していることが読み取れます。従来のフランチャイズ方式による成長から、既存顧客の売り上げを伸ばす方針への転換期といえるでしょう。

引用元:時系列データ|商業動態統計

右肩上がりに伸びていたコンビニの販売額は、2020年に大幅に減少しました。要因はコロナウイルスの拡大により、外出する人が減り、さらには支出を削減する人が増えた事だと予想されます。国民がコロナ禍へ対応したことや、コンビニが戦略の転換をしたことによって少しずつ回復傾向が見られています。感染の拡大によって一時的な落ち込みはあるものの、現在は緩やかな増加傾向です。

コンビニ業界の国内の出店は頭打ちと見られ、従来の戦略では右肩上がりの成長は難しくなってきました。そのためコンビニ各社は海外進出や既存店舗の売り上げの拡大など、戦略を大きく転換しています。

国内のコンビニの店舗数は、2019年に減少。2020年にかけても店舗数は減少し、今後も新規出店による成長は見込めない可能性が高いです。コンビニの店舗数も既に膨大な数になっており、さらに人口が減少しているため、新規店舗を増やす戦略は今の時代に合っていないといえるでしょう。そのため既存の店舗1つ1つの売り上げを底上げしていくことが、今後の戦略として求められます。

日本は少子高齢社会で、人口も減少傾向にあるため、コンビニ各社は海外事業を水面下で強化し始めています。セブン&アイ・HDは北米を中心に海外でコンビニ事業を展開、ローソンは中国事業を強化。米国やアジアは今後も人口や所得の増加が見込まれるため、将来性が高いと考えているのでしょう。

新規出店による成長が見込めなくなり、なおかつ人口も減少しているため、顧客1人当たりの購買単価や頻度を上げていくこと、そしてこれまでコンビニを頻繁に利用していなかった層の獲得が必要です。
例えばローソンを中心に、コンビニ各社は健康をサポートする食品に力を入れています。従来はコンビニの商品と健康というイメージはあまり結びつかず、健康な食品を求める顧客のニーズにはこたえられていませんでした。この課題を解消して、健康に関心のある顧客を獲得することに力を入れています。
セブンイレブンでは「プライベートブランド」を開発して、他のコンビニとの差別化を図っています。「セブンプレミアムゴールド」はこれまでの「すぐに食べれる便利な食品」に、味にこだわるという付加価値をつけています。一流の料理人や、食の専門家が携わって商品の開発をしており、顧客がセブンイレブンに足を運ぶ理由を作っています。「セブンイレブンのあの商品を買いたい」と思ってもらえることが、とても重要です。
ファミリーマートでは「ファミペイ」という電子決済サービスを導入しました。ポイントやクーポンによって、顧客のロイヤリティを高めることが大きな狙いです。加えてファミリーマート以外でも、ファミペイを使えるお店を拡大しており、異なる業態のお店と提携し、新しいルートから顧客の獲得も視野に入れています。

コンビニは販売額の停滞だけでなく、人手不足や、1人の店員当たりの仕事量の増大も課題になっています。コンビニがより便利になっていく一方でその分、店員の仕事量も増えています。もちろんどのコンビニもセルフレジやIoTの活用などで、より効率的にオペレーションできるように取り組んではいます。しかし顧客単価を上げることもが求められるようになり、これまで以上に必要な作業が増えています。今後はさらなる事業展開に伴い、新たな人員が必要となる可能性も高いでしょう。人員の獲得も、今後のコンビニ各社の大きな課題になっていくことが予想されます。

コンビニ_店舗商品

セブンイレブン、ファミリーマート、そしてローソンが人口が減少する日本で、売り上げを伸ばす施策を考え、実行に移しています。どのような戦略を実践しているのか、詳しく解説していきます。

セブンイレブンは個々の課題に即した柔軟な対応を図る「ワンフォーマットからの脱却」という方針のもと、店舗のある土地を「都市型」「住宅型」「郊外型」の3つに分け、住民の層や人数に合わせて、商品の構成を変える戦略を取っています。例えば都市型であればオフィスで働く人のニーズに合わせた商品を多めに、住宅型であれば家庭向けの商品を多めに配置するというような工夫がなされています。こういった戦略を取ることで、その土地の住民がより求める商品が多くなり、1人当たりの購買頻度や購買金額を上げることにつながるでしょう。そして数量のバランスも土地によって調整するため、廃棄商品の減少にもつながります。

2021年10月、ファミリーマートでは新しいプライベートブランドの「ファミマル」を立ち上げました。「安心でおいしい」をコンセプトにした、主に家族に向けた食品を取り扱っています。加工食品や菓子、日用品、飲料、お惣菜、お弁当など、ジャンルは幅広いです。これまで以上に家族層の獲得に、大きくつながっていくでしょう。またコロナ禍で在宅ワークをする人も多くなったため、加工食品やお惣菜などを欲するニーズにも応えられます。

ローソンの新戦略は、4000店舗以上を改装する「店舗理想形改装」の実施。コロナ禍によってライフスタイルが変わり、保存食である冷凍食品の需要が高まったのを受け、冷凍食品売り場を拡大。さらに在宅ワークをする人に向けた惣菜の提供のクオリティを上げるため、厨房設備を新設するなど、現代のライフスタイルに合わせた改装に取り組んでいます。セルフ販売、セルフレジの導入など、人件費の削減やオペレーションの効率化にも力を入れる改装となっており、既存店舗の売り上げ向上を狙っています。

新規店舗の出店による成長が頭打ちとなっている現在、多様化する消費者のニーズをしっかりと捉えて、既存顧客の単価を上げることが不可欠です。目まぐるしく変わる消費者の需要をつかむためには、どういった分析が必要なのでしょうか。

従来のPOSレジやポイントカードからの情報収集では、ニーズを確実にとらえることはできません。なぜなら店舗の垣根を超えた横断的なデータや、全国規模の情報収集が難しいからです。この点が大きな課題となっており、コンビニ各社は新しい情報の収集方法を模索しています。

従来の情報収集の課題を解消するため、「IDレシートデータ」が注目されています。IDレシートは従来の小売チェーンに閉じたPOSレジとは異なり、チェーンを超えて顧客がどのような購買行動をとるか、追跡することができます。店舗や業態の垣根を超え、全国的な規模で広域にデータを収集できるため、ニーズをとらえる精度態が大きく上がるでしょう。取得したデータは商品開発やマーケティングにとても有効で、顧客単価の向上や、既存店舗の売り上げ増加につながることが予想されます。

では、具体的にコンビニの業界動向を分析するには、どのようなデータ分析をすればいいのでしょうか。当サイトに掲載している"IDレシートデータ"活用事例を紹介します。

例えば近年、様々な商品が値上げしています。原則、割引販売をしないコンビニでは、値上げの影響によって、売れ筋商品にどのような変化が生じているかを分析したレポートがあります。そのレポートでのデータ分析例を紹介しましょう。

■売れ筋商品価格の変動
例えば、コンビニチェーンごとの売れ筋商品のランキングと購買額を、値上げ前後で比較すると、どのような商品が値上げしたのかが分かります。さらに、ランキングにどのような変化が出ているかで、値上げの影響がどのような部分に出ているかを見出せます。


セブンイレブン「カウンターフード・ドリンク」
購買数TOP10商品の内容・価格比較

コンビニ大手3社の既存店売上高の推移

■カテゴリごとの平均価格の推移を比較
次に、商品カテゴリごとの平均価格の推移を見ることで、値上げに踏み切らざるを得ないカテゴリと、なんとか価格を維持しているカテゴリを見出すことができます。


ローソン購買数TOP10商品の平均価格の推移

ローソン購買数TOP10商品の平均価格の推移

■値上げ前後の売れ筋商品ランキングと価格の変化
また値上げをする場合には、単に既存商品価格を値上げするだけでなく、オリジナル商品をリニューアルして、付加価値をつけて価格を改変する場合もあります。その際に、コンビニがどのような工夫をしているかを、値上げ前後の売れ筋商品の価格と商品名から見出したのが、下記の例になります。


ファミリーマート「お弁当」購買数TOP10商品の内容・価格比較

ファミリーマート「お弁当」購買数TOP10商品の内容・価格比較


▼"IDレシートデータ"では、帳票ファイルをCSVデータでダウンロードできるので、様々な視点で自由にデータの加工ができます。どのような着眼点で、どのようなデータ分析をすると、何が見えてくるのかは、様々なレポートの事例を確認して把握していただければ幸いです。上記の分析レポートの詳細は、こちらをご覧ください。
購買データから考える「コンビニ冷凍食品」の価値とは?

▼また、その他のいろいろな視点での"IDレシートデータ"活用事例は、こちらをご覧ください。
“IDレシート”分析レポート

コンビニ業界は数年前までは右肩上がりに成長しており、その要因はフランチャイズ方式による、店舗数の拡大にありました。
しかしコロナウイルスの影響や人口の減少に伴い、店舗数を増やすことによる成長は、頭打ちとなっています。こうした状況で今後も成長を続けるために、コンビニ各社は様々な手段で、既存店舗の売り上げを伸ばすことに注力しています。今後のコンビニの戦略はさらに多様化し、顧客単価を上げる様々な施策に取り組んでいくでしょう。

「IDレシートBIツール」の詳しい情報はこちらをご覧ください。

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