コンビニ最大手セブンの『セブンセントラル』とは?
背景や導入効果も

データベース

常に変化し続けるトレンドや多様化する顧客の要望、次々に登場する新製品といった競争環境に対応するため、特に小売業界では、あらゆる領域でビッグデータを活用する企業が増えています。

その中でも、コンビニエンスストアチェーン最大手のセブン‐イレブン・ジャパンが2020年9月より稼働開始しているGoogle Cloud上のビッグデータ活用基盤「セブンセントラル」は、世界トップクラスの2万を超える店舗から集まるデータをクラウドに集約し、リアルタイムに活用できるようにする仕組みとして大きな注目を集めています。

しかし、聞いたことはあっても実際にどのようなシステムなのかわからないという方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、セブンセントラルとはどのようなものなのか、目的や導入効果、今後の展望などについてわかりやすく解説していきたいと思います。

小売業におけるビッグデータ活用の背景について解説します。

ビッグデータというと「大量のデータ群」をイメージする方も多いかもしれませんが、それは一側面に過ぎません。ビッグデータの主な特徴には以下の4つが挙げられます。

【ビッグデータの特徴1】Volume(容量)

その名の通り、ビッグデータは膨大な量のデータ群です。数テラバイトから数ペタバイト程度のデータ量を指すことが多いとされています。

【ビッグデータの特徴2】Variety(種類)

ビッグデータには、テキスト、音声、ビデオ、ログファイル、位置情報など、様々な種類・形式が含まれる非構造化データや非定型的データが含まれます。

【ビッグデータの特徴3】Velocity(頻度・スピード)

ビッグデータの多くは、日々膨大に生成・記録され続け、リアルタイム性が強い傾向にあります。小売店等のPOSデータや交通ICカードの乗降履歴などが、その一例です。

【ビッグデータの特徴4】Value(価値)

ビッグデータは、事業成長要因を探るために活用されます。よって、ビッグデータの収集・解析は、事業戦略に基づいて行われ、サービス開発・改善、業務の効率化、新産業の創出などを可能にするものとして期待が集まっています。

このような特徴をもつビッグデータを活用することにより、今まで気づくことのできなかったビジネスチャンスの創出、ビジネスリスクの回避、業務効率の向上に役立てることができると、期待が寄せられています。

小売業界におけるビッグデータ活用の主なメリットは、下記の通りです。

集客力の向上

実店舗であれば、POSデータやIDレシートデータ、ECサイトであれば、アクセス状況やユーザー属性などのデータを収集し網羅的に分析することで、ユーザーの動向を把握することができます。「いつ」「どんな人が」「どんなきっかけで」購入に至っているか、というカスタマージャーニーを正確に描くことができれば、それに応じた集客施策を講じることができるようになります。

販売力の向上

「気候変動」「外部環境の変化」「イベントの有無」によって、顧客ニーズは目まぐるしく変化します。ビッグデータを上手に活用していけば、需要予測の精度が上がり、売上向上につながる販売戦略を立てられるようになります。

顧客がどのような商品・サービスを求めているかは、現場の販売員・責任者の肌感覚や属人的な判断に任されてきた部分も多かったのですが、ビッグデータという客観的なエビデンスに基づいた売り場づくり・サービス提供が、販売力をさらに向上させます。

無駄のない在庫管理

正確な需要予測ができるようになると、在庫切れになることも少なくなり、販売機会の損失を防ぐことができます。また、在庫を最適な量に保つことで余剰在庫の保有コストの軽減にもつながります。

ここからは、コンビニエンスストアチェーン最大手のセブン-イレブン・ジャパンが、Google Cloud上に構築したビッグデータ活用基盤「セブンセントラル」を例に挙げ、ビッグデータの活用方法をご紹介していきます。

2019年初頭から本格的な開発が始まり、2020 年 9 月に本格リリースされた「セブンセントラル」の稼働により、それまで社内外に散在していた、約21,000店のPOSデータなど各種データをクラウドに集約し、リアルタイムに分析・活用できるシステムで、今後、中長期的に加速させていく IT 戦略を下支えするためのものであると発表されています。

膨大なデータへのアクセスを、容易かつリアルタイムにするために、Google Cloudのさまざまなツールが駆使されています。

  • セキュリティの観点から、各店舗のストアコンピューターはインターネット接続されていないため、Google Cloudの「Partner Interconnect」を活用して閉域網接続を行った
  • Google Cloudのストリーム分析「Streaming Analytics」を活用してPOSデータをリアルタイムに加工
  • データベース「Cloud Spanner」やデータウェアハウス「BigQuery」から、リアルタイム活用が可能に

また、標準化されたAPIを介してアクセスを行うことで、データと業務ロジックの分断が可能になっただけでなく、API利用数が可視化されることによって『いつ誰にどのようにデータを使ったか』を把握できることも大きな特徴です。

セブン-イレブン・ジャパンが「セブンセントラル」の着想に至ったのは、以下のような背景がありました。

創業早期から積極的に情報システムを取り入れてきたセブン-イレブン・ジャパン。技術革新が急速に進む中で、開発を重ねてきたが故に、データがサイロ化*してしまったといいます。

*システムが、他のアプリケーションとの連携を持たずに孤立してしまうこと

システム容量が大きくなるにつれ、異なるベンダーが開発した複数システムにデータが分散、サイロ化した上に、管理・運用もベンダーに依存していたため、必要なデータが効率的に取り出せなくなったり、各店舗のデータ参照に時間がかかり(最短で翌日の取得など)、適切なタイミングでデータドリブンな判断がしづらくなったりとさまざまな課題が発生していたそうです。

そこで、時間やコストがかかる既存システム同士の連携ではなく、システム本部自らが開発・運用できる新たな体制構築を着想します。全国に2万点以上ある店舗データがリアルタイムに収集・活用できるようになれば、刻一刻と変化する市場の動向をより正確に把握することができ、的確な販促活動の実施、適切な在庫管理、業務効率の改善、新サービスの開発・拡張につながる、と期待されていました。

では、セブンセントラルの導入により、実際にどんな効果がもたらされたのでしょうか?

セブン-イレブン・ジャパン執行役員・システム本部長の西村氏によると、データ取得に要する時間が劇的に短縮されたと語ります。セブンセントラル稼働前までは、依頼した翌朝にしか手に入らなかったデータが、最短1分で入手できるようになったのだそうです。

これにより、ほぼリアルタイムな在庫確認が可能になったため、その情報をアプリに掲載し、ユーザーがすぐに在庫状況を確認できるようなサービス提供も可能になりました。

2020年のローンチ以降、既存業務の改善や、新しいサービスの開発・拡充につなげられそうだ、と社内各部署がセブンセントラルの活用に手を挙げ、さまざまな分析がスタートしているそうです。またセブン-イレブン・ジャパン内だけにとどめず、セブン&アイ・ホールディングス関連会社全体での活用も視野に入れているのだとか。

さらに、AIによる機械学習を取り入れて新しい領域へチャレンジしたり、Google マップにデータ分析の結果を反映させて、動画メディアと連携するなど、新たな可能性も模索しているようです。

以上、小売業におけるビッグデータ活用の基本や活用事例「セブンセントラル」について紹介しました。セブン-イレブン・ジャパンだけでなく、多くの企業が直面しているデータのサイロ化やベンダー依存という課題からいち早く脱却し、より簡単に、素早くデータにアクセスできる環境構築の実現が事業成長の鍵と言っても過言ではなさそうです。

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