ビッグデータとは簡単に表現すると「ビジネスで使えるデータの集まり」
そもそもビッグデータとは「事業に役立つ知見を導出するためのデータ」であることが、鈴木良介著『ビッグデータビジネスの時代』にて定義付けられています。また同書ではビジネスにおける目的として「ビッグデータを用いて社会・経済の問題解決や、業務の付加価値向上を行う、あるいは支援する事業」と述べられています。つまりビッグデータとは「ビジネスにおいて問題解決に用いられるデータの集まり」であると表現できるでしょう。
またビッグデータは「4つのV」から構成されているという概念があります。
- Volume(量):質が良いデータ集まっていること
- Variety(速度):受信したデータに基づきアクションを起こすスピードが高速であること
- Variety(多様性):利用可能な多くのタイプのデータであるこ
- Veracity(正確性):リアルタイムのデータがあること
このように4つのVはビッグデータの特徴を示しているのです。
さらに知識を深めるべく、ここからはビッグデータの3つの種類とIotとAIとの関係性について紹介します。
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ビッグデータは大きく3つの種類に分類できる
ビッグデータは多様性の特徴から3種類に分類でき、それぞれ以下の違いがあります。
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構造化データ
二次元の表形式になっている。
データの一部を見ただけで二次元の表形式への変換可能性や変換方法が分かるデータ。
例:会計ソフトが生成する数値や文字列のデータ
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半構造化データ
データ内に規則性に関する区切りがある。
データの一部を見ただけでは二次元の表形式への変換可能性や変換方法が分からないデータ。
例:電子メールなど一部数値や文字列となるデータ
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非構造化データ
データ内に規則性に関する区切りがない。
データやデータの一部を見ただけで二次元の表形式への変換ができないことが分かるデータ。
例:ブログやSNSのテキスト、位置情報、センサーデータ、音声、動画、閲覧履歴など
IotとビッグデータとAIの関係性
ビッグデータはIotによって蓄積され、AIの学習能力によって使えるモノとして活用されるという関係性が生まれています。IotとはInternet of Thingsの略称であり、わかりやすく表現すると「インターネットに接続されたモノ」です。具体的にはスマートスピーカーやスマートウォッチなどのデジタル情報家電があり、近年目にする機会が増えているためIotの普及が身近に感じられるでしょう。
Iotはインターネットを通じてデータを蓄積するため、企業は蓄積されたデータを分析し活用することで新たな価値を生み出すことができます。またAIには高い学習能力や情報処理能力が不可欠であり、そのためにビッグデータが必要です。ビッグデータの活用によってAIは優れた人工知能を発揮し、これまで「モノ」が成し遂げ得なかったスキルや能力を提供していくことができます。
ビッグデータの身近な活用例
ビッグデータの活用方法として身近な4つのシチュエーションがあります。
- Google検索(検索エンジンのデータ)
- 会計システム(商品の販売履歴や個数など)
- SNS投稿(テキストや画像の投稿)
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キャッシュレス決済(決済時における購入履歴の蓄積)
それぞれの場面においてデータは蓄積され、蓄積されたデータを企業が分析することで新たな事業や商品、サービスを生み出すビジネスとなります。データ1つ1つの存在価値はそれほど大きくないものではありません。しかし1つ1つのデータが蓄積され目的に応じて分析を行うことによって、新たな価値の創造につながるのです。
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ビッグデータの課題はプライバシー面
ビッグデータを活用する際には、プライバシー保護の問題を考慮しなければなりません。なぜならビッグデータには検索履歴や購入履歴など、個人の行動や状態に関する情報が含まれるためです。
具体的には、行動履歴や位置情報が含まれる「パーソナルデータ」は利用価値が高いと期待される一方で、個人にとっては情報の悪用が懸念されています。個人本人の権利や利益が侵害されるリスクがあり、プライバシー意識が高まる現代では利用によって社会的な批判を受けるケースも見受けられているのです。
ただし、近年では匿名化したパーソナルデータが用いられるケースも多くなっています。
情報を守る体制が整えられたことで以前より安全性は高まり、利用価値の高い情報を安心して活用することも可能です。
他にも「改正個人情報保護法」の成立によって、パーソナルデータを保護する体制が整ってきています。具体的には、個人情報の内容を明確化させることで守られる情報の範囲が広がりました。また個人の特定性を低減する匿名加工情報の取り扱いとして、匿名加工情報から個人の特定行為および加工したデータを元に戻す行為を法的に禁止しています。
このようにビッグデータの課題であるプライバシー面は、国や社会によって守られつつあります。しかし情報の利用価値やプライバシー意識は高いものであることには変わりないため、十分に留意しながら扱うことが重要です。
ビッグデータの2つのメリット
ビッグデータの活用による2つのメリットがこちらです。
- リアルタイム性の高さ
- 情報収集のコストの低減に繋がる
1つずつ詳しく解説します。
リアルタイム性の高さ
ビッグデータの構成要素の1つであるリアルタイム性によって、競合他社に先んじた優位性を獲得できます。リアルタイム性とは、大規模なデータに対し高速処理を行い、常に流れ続けるデータを即座に分析していくことです。ビッグデータはVeracity(正確性)という要素を持ち、リアルタイム性のあるデータを持つ特徴があります。リアルタイム性があることで市場のニーズをいち早く察知し、マーケティングや経営戦略に活かすことによって正確なビジネスを生み出すことにつながります。
変化し続ける市場への即座な対応は、他者との競争優位を確立していくのです。
情報収集のコストの低減につながる
質の良いデータが集約されたビッグデータは情報収集コストの低減化を実現します。従来は例えばインタビューやアンケートによる情報収集で、対象者の時間的拘束や実施する人件費用が発生していました。
しかしビッグデータはインターネット上において短時間で大量の情報収集が可能となり、対象者の拘束時間や人件費の削減ができます。ビッグデータによって企業はコストを抑えた情報収集が可能となり、浮いたコストで開発やマーケティングなど必要な事業に投資できるのです。
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ビッグデータの業界ごとの活用例
ビッグデータの活用例を5つの業界別に紹介します。
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飲食業界
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医療業界
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観光業界
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教育業界
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農業業界
それぞれの具体的な活用方法を確認しましょう。
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飲食業界における活用例
飲食業界では「IDレシート」や「BIツール」としてビッグデータが活用されています。
IDレシートとは、お店のレジにて商品が購入された際に記録されるデータです。
購入された商品や商品を購入した人の属性などを分析することで、効果的な販売活動に活用できます。BIツールとはBusiness Intelligenceの略称で、日々蓄積される膨大なデータの分析結果を経営面の意思決定へ活用するサポートを行います。
IDレシートやBIツールの活用は的確な市場調査や分析に貢献し、企業は効果的なマーケティング戦略の立案が可能です。消費者の行動をデータとして参考にした意思決定は、業績アップや企業成長に期待できるでしょう。
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医療業界における活用例
医療におけるビッグデータはDPCとNDBが代表的な活用例です。DPCとは、患者を診断名と実施された医療行為の組み合わせで分類した情報を、データとして蓄積しています。NDBとは、全国の医療施設のレセプト(診療報酬明細書)を集計したデータベースです。
DPCとNDBは臨床研究のための情報基盤を構築することに活用されています。臨床研究は病気の原因や治療方法を解明する医学研究であり、健康を守り続けるために必要な研究です。しかし適切な解明には大規模な臨床研究が求められ、そのためには莫大な情報が必要となるのです。
DPCとNDBは国内における大量の医療データを集積することで、効果的な臨床研究の実施に役立てられています。有効な臨床研究が進むことで国内の医療行政の妥当性は向上され、ひいては国全体の厚生水準が高まることが期待されています。
観光業界における活用例
観光業界では特に位置情報のビッグデータの活用が行われています。
多くの人がスマートフォンやタブレットを所有する現代では、GPS機能によって位置情報のデータが多量に蓄積されるようになりました。蓄積された位置情報のビッグデータから、行動軌跡を抽出し特性を把握することによって人々の行動分析を可能にしています。
近年ではSNS利用者の増加によって、SNS投稿に付加される位置情報と投稿内容を情報として蓄積し、分析することで観光客の行動パターンの把握を行う事例もあります。滞在場所や投稿量などの分析によって、その地点が観光資源として適しているのかどうか正確な判断に期待できるのです。
また各地域の認識パターンの取得によって、地域のイメージを把握しプロモーションに活用している事例もあります。具体的には、ある地域のイメージや認識をビッグデータから把握します。その結果「多くの人がイメージしている地域の良さについて、これまでプロモーションに力を入れていなかった」といった気づきを得られるのです。ビッグデータによって得られた市場ニーズを活かすことで、効果的なプロモーションを実現できます。
観光業界におけるビッグデータの活用は/b>現状の把握とニーズの発掘によって、新たなビジネスを生み出す効果に期待できるでしょう。
このように定量的かつ定性的に顧客の情報を捉えられると、顧客の傾向や行動の理由の特定につながりやすく深い顧客理解が可能です。
教育業界における活用例
教育業界では教育の質の向上に寄与する教育ビッグデータが活用されています。教育に関するデータを多量に集めた教育ビッグデータには、「eポートフォリオ」が大学や高等教育機関を中心に広がっています。eポートフォリオとは、学習プロセスにおける有意味で有用な学びの記録をデータとして蓄積し利活用するものです。
さらにeポートフォリオは大きく2つの意味で使い分けられます。
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広義の定義
「電子的な形式で扱われたすべてのポートフォリオ」
特徴:デジタルデータの利点を活かした処理の優位性 -
狭義の定義
「ポートフォリオを作成するためのソフトウェア、またはポートフォリオをマネジメントするためのシステム」
特徴:ネットワークを使うことで、密に相互的かつ協働的な学習や評価活動が可能
農業業界における活用例
センサーイノベーションの進歩によって新たな発展を目指しているのが農業業界です。センサーイノベーションとはネットワーク技術とセンサー技術を組み合わせたIoTを指します。
効率的なデータ収集を行いビッグデータを構築するための手段として、農業業界において期待が高まっています。農業の生産現場で発生するデータは環境データ、生体データ、栽培管理データに大別され、それぞれのデータを効率的に収集するための技術開発が進められています。
中でも生体データは、近年技術発展に期待が高まっているデータです。生体データとは作物そのものの状態を知ることができるデータであり、従来は目視や手作業での情報収集が行われてきました。そのため時系列計測の困難性や破壊的計測であることなどから、データ収集に大きく立ち遅れてきた背景があります。
しかし現在では、画像解析で高速化する技術やMEMS技術を応用した超小型FTIRを組み込んだグローブ型糖度センサーなど、技術開発の加速化が見受けられているのです。さらに安価で野外でも簡単に使える生体センサーの登場によって、幅広い生体データが効率良く収集できるようになりました。
農業業界ではビッグデータを構築する手段の進歩によって情報収集や分析能力を高め、新たな発展を推し進めています。
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横断的に購買行動を把握するなら「IDレシートBIツール」
「IDレシートBIツール」は、顧客の購買行動の把握によって効果的なマーケティングに貢献するツールです。数万規模のお買い物レシートのデータを蓄積した「IDレシート」は、商品の買われ方や顧客の嗜好、価値観などを把握でき、顧客の可視化を実現します。また莫大なデータを整理するBIツールによって、様々な業務を抱える多忙なマーケターでも求める情報の特徴を簡単に掴むことが可能です。
IDレシートBIツールは事実に基づいた仮説立てやマーケティングに活用でき、効果的な経営戦略をサポートします。
マーケターに有益な情報がレシートには満載
レシートには、顧客の思考や市場の実態を把握できる有益な情報が満載です。具体的にはレシート1枚で、日付・時間・商品名及び金額(値引・単価・個数)・合計金額・電話番号、さらには購入した店舗のチェーン名・店舗名などの情報からユーザのリアルな購買行動を把握できます。
購買行動の把握や分析によって顧客理解を深めることができ、事実に基づいたマーケティングが可能となるのです。
IDレシートBIツールならではの魅力
IDレシートBIツールには他にはない独自の魅力があります。
- チェーンや業態横断での買い回りが見える
- モニタじゃない自然な購買を把握できる
- 定型レポートで誰でもすぐ使える
詳しい特徴について1つずつ確認してみましょう。
チェーンや業態横断での買い回りが見える
POSデータや消費者パネルの購買調査データは種類によって範囲や用途が限定され、なかなかマーケティング上で有効活用できなかった方もいるかもしれません。しかしIDレシートBIツールは、流通チェーン・業態・商品カテゴリ横断してデータを把握できる他にはない特徴を有しています。
例えば、時期・エリア・チェーンで絞りデータを照会することで、職場にいながら自社や他社商品の実売価格を確認できます。また商品カテゴリを越えた併買が確認できるため、顧客の嗜好や行動パターンを明確に捉えやすくなるのです。
外食レシートも併せて分析すると顧客嗜好をより詳細に把握でき、これまで見えなかった課題の特定ができる可能性もあるでしょう。
モニタじゃない自然な購買を把握できる
自然でリアルな購買情報が蓄積されているため、ペルソナがさらに高解像度で捉えられます。蓄積されたデータは、商品購入者の属性、同時/同期間併買や外食傾向などがわかりやすく整理されており、事実データが一目瞭然です。
そのため「このチェーンではこう売れている」「このカテゴリと一緒に買われている」など、POSデータでは見えづらかった根拠となるデータがIDレシートBIツールでは簡単に集められるのです。集められたデータは説得力のあるエビデンスとして商談材料に使用でき、新たなビジネスを生み出す可能性を広げられます。
定型レポートで誰でもすぐ使える
有益で莫大なデータでも誰もが使いやすい、具体的・直感的な定型レポートが提供されます。データは商品・購入者・購入店の3つの軸に分かれレポート化され、様々な切り口でのフィルター検索が可能であることやグラフ表示によって、直感的な操作や情報把握が可能です。
そのため商談前にさっと情報を調べることから、職場でじっくり情報分析を行うことまで、シーンに応じて幅広く活用できます。必要な情報に特化したデータ収集はもちろん、新たな気づきや課題の発見まで可能となり、莫大なデータを有益に使いこなすことができるのです。
IDレシートデータから見る「コンビニでの値上げの影響」
それでは具体的に「IDレシートデータ」から、どのような分析が可能なのか、実際の分析事例を紹介しましょう。
既に公開している分析レポートの中には、「コンビニ食品は、値上げでどのような影響を受けたのか?」という切り口での分析があります。実際のビッグデータ分析の一例として、参考にしてみてください。
値上げ前後で購買数に違いが出た商品は?
商品販売で「値上げ」を実施すると、売上に影響することは予想しやすいと思います。
ただ、「値上げしても、購買数が継続する商品」と、「値上げしたために、購買をあきらめてしまう商品」の差が出てきます。
コンビニ商品の中でも、比較的必需品的なポジションにある「ランチ食材」に関して、カテゴリごとに値上げ前後の購買数の変化を見てみましょう。
■「ランチ食材」の値上げ前後の購買数の変化
下記は、値上げが発表される数か月前の2022年1月時点の購買数を100%とした場合の、月次の購買数の変化を表したものです。
コンビニランチでニーズの高い「おにぎり」に関しては、コンビニ各社あまり影響を受けていないことが分かりますが、サンドイッチなどの「惣菜パン」および「お弁当」に関しては各社購買数が減少に転じていることが分かります。
■カップ麺の値上げで、コンビニPBカップ麺への影響は?
また、この値上げの時期には小麦の値上がりの影響を受けていたため、カップ麺も各社値上げを発表していました。ナショナルブランド(以下NB)の値上げが発表される中、コンビニプライベートブランド(以下PB)のカップ麺は、値上げを控えていました。
そこで、値上げによってNB商品から値上げを発表していないコンビニPBに乗り換えるような現象が起きたのかを検証してみました。
下記が、値上げが発表される数か月前の2022年1月時点の購買数を100%とした場合の、月次の購買数の変化を表したものです。
折れ線グラフのNB商品は、値上げ発表月以降でもやや反応の差はありますが、4月までの3か月は概ね横ばいで推移し、6月にサンヨー食品の値上げ発表があった後には、サンヨー食品以外は1月水準を下回りました。
一方でコンビニPBは、NB各社の値上げ発表のあった2月以降、ファミリーマートはずっと1月水準を超えて推移しており、ローソンは減少傾向に転じています。
その要因に関する詳細は、実際のレポート記事をご確認いただきたいのですが、一番遅く値上げ発表を行ったにもかかわらず、値上げ発表後に購買数を伸ばした「サンヨー食品」の要因に関しては、下記のように分析しています。
「サンヨー食品」のカップ麺を、商品ごとに月別の購買数で比較すると、下記のように値上げ発表後の6月には「塩味」が伸びていることが分かりました。夏に向けて、さっぱり味の「塩味」が伸びることで、値上げ発表後も購買数を伸ばす要因になっていたことが分かったのです。
コンビニ食品の値上げに関する分析は、前編・後編と2ページに分けて分析レポートを紹介しています。上記以外にも、様々な分析をしていますので、ビッグデータをどのように分析するのか、参考事例としてご覧ください。
コンビニ食品は、値上げでどのような影響を受けたのか?<前編>
https://receiptreward.jp/solution/report/report-analysis01.html
コンビニ食品は、値上げでどのような影響を受けたのか?<後編>
https://receiptreward.jp/solution/report/report-analysis02.html
また、その他のいろいろな視点での"IDレシートデータ"活用事例は、こちらをご覧ください。
https://receiptreward.jp/solution/report/
導入事例:コンビニでの購買全体像がリアルに視(み)えました
まとめ
今回はビッグデータの定義や身近な活用例、業界ごとの活用方法を中心に紹介しました。蓄積されたデータはビジネスの問題解決に貢献し、企業は製品やサービスに活用することで新たな価値を創造できます。しかしそのためには目的に応じた分析や、適切な活用方法の選択が不可欠です。
まずは自社における課題や目指す姿を改めて確認し、適切な活用方法を検討してみましょう。
詳しいIDレシートBIツールの情報についてはこちらをご覧ください。