効率的な顧客アプローチが可能!
「CRMマーケティング」を知ろう

効率的な顧客アプローチが可能!「CRMマーケティング」を知ろう

顧客との良好な関係を築き、長い目で見た売上の向上につなげていくための手法として、CRMをマーケティングに生かす手法が注目されています。顧客を適切に管理し、社内で共有することには大きなメリットがあるからです。この記事では、CRMマーケティングの基本情報、企業が導入することのメリットやデメリット、導入・運用のためのプロセス、事例などを紹介します。

CRMとは、「Customer Relationship Management(顧客関係管理)」の頭文字をとった略称で、「顧客と企業との関連性を管理する」という概念を指します。顧客の情報を管理、分析し、マーケティング施策に生かす仕組みをCRMマーケティングといい、BtoB、BtoCのいずれにおいても有益です。BtoBでは、顧客の所在地やサービス展開地域、ターゲットとする年齢層や取引の履歴など、BtoCでは、年齢や性別といった基本情報に加え、プレゼントの応募状況やサービスの利用頻度・ライフスタイルなどを、顧客の情報として管理できます。CRMマーケティングを用いることで、顧客のニーズを正確に把握して、提案やフォローを適切なタイミングで行えることが特徴です。

類似するマーケティング用語に「MA(マーケティングオートメーション)」という言葉があります。MAが見込み顧客の獲得を最終目的とするのに対し、CRMマーケティングでは既に取引のある顧客を対象としており、顧客満足度や顧客ロイヤルティーの向上を目的とします。CRMがマーケティングに必要とされる背景には、SNSを通じた情報収集や口コミの検索が一般的となっていることが大きく関係しています。顧客は、自らが購入した商品や利用したサービスの感想や体験を拡散、共有し、それを参考にして購買行動に至る人が増加しているからです。

関連記事:CRM分析を効果的に使う!CRM分析の重要性と8つの分析手法を解説

CRMマーケティングにはメリットとデメリットがあります。よりよく運用するために、それぞれの特徴を把握しておきましょう。

CRMマーケティングを導入することで顧客情報を一元管理でき、社内で共有しやすくなります。複数の人が俯瞰(ふかん)的に情報を見ることにより、担当者ベースでは見えなかった潜在顧客を見いだすのにも有効です。顧客情報の可視化により、分析がスムーズに進み、戦略を立てやすくなります。たとえば、売上が少なく人気がないと思われていた商品の購入者を分析してみると、「10代とその親世代に集中しており、東海地方に住む人が多い」と分かったとします。この場合、「商品を親子で利用している」「親世代に流行したものが10代でリバイバルヒットしている」「東海地方のテレビ番組で取り上げられた」などと分析できます。この分析により、10代の利用者が多いSNSサービスに広告を出したり、東海地方でしか購入できない限定品を開発したりする、といった戦略が考えられます。他地域にも潜在的な顧客がいると推測できるため、10代とその親世代に向けたプロモーションを広く行うことで、さらに顧客を発掘することも可能です。

CRMマーケティングの導入は顧客満足度の向上にも有効です。一般的に顧客とのやりとりは担当者のもとに蓄積されて留まることが多く、担当者が異動してしまうと有益な情報を引き継げずに、関係が途切れてしまいがちです。社内の誰もがアクセスできる状況にあれば、たとえ担当者が交代したとしても取引の連続性は保たれます。たとえば、顧客との雑談の中で「将来的に新サービスの立ち上げも視野に入れている」といった話が出たとします。この情報を社内で共有し、新サービスに向けてどのようなサポートができるかを検討しておけば、数年後、実際に新サービスが形となるときに向けて適切なタイミングで提案を行えます。顧客の立場から考えると、「自社のことを考えて対応してくれている」と感じるのではないでしょうか。顧客との取引が増えるほど情報は蓄積され、顧客ニーズの把握がしやすくなります。情報を分析し、最適なタイミングでの提案を繰り返すことで、顧客満足度は向上していきます。

CRMは、情報を蓄積して分析する手法であり、1度だけ行って結果が出るものではありません。CRMの導入後は社内でPDCAを回しながら運用していく必要があり、結果が出るまでに手間と時間がかかります。そもそも顧客満足度は時間をかけて醸成していくものです。しかし、すぐに成果が出ないものに対して、時間をかけて取り組む余裕のある企業は少ないかもしれません。対策として、CRMの導入を売上の増加に直結する手段として考えないことが挙げられます。CRMの導入は長い目で見れば売上の増加に貢献しますが、短期的な効果を期待しすぎるのは禁物です。それよりも、情報の一元化による担当者の負担軽減や、新商品・新サービスを開発する際に活用できることを目的に導入するとよいでしょう。

関連記事:顧客分析とは?必ず押さえておきたい目的やメリット・分析方法を紹介
関連記事:顧客分析に効果的なフレームワークとは?代表的な手法を紹介

CRMマーケティングを効果的に運用するためには、社内の意識統一など導入に向けた準備が欠かせません。ここでは運用前に気を付けたい点を紹介します。

CRMを導入しようと考える背景には、解決したい課題があるはずです。CRMをどのように活用していくか、その方向性を決めるためにも自社の課題を洗い出して再確認しておきましょう。CRMの導入を検討する企業では、情報が分散化して有効利用できておらず、顧客満足度や顧客ロイヤルティの向上に生かせていないことが多いです。たとえば、アンケートを取っていても結果がデータ化されていなかったり、製造部門と営業部門で情報が共有できていなかったりしませんか。こうした課題を知り、情報をどのように分析してマーケティングに生かしていくかの方向性を定めておきましょう。

LTVとは「Lifetime Value(ライフタイムバリュー)」のことで、顧客から生涯にわたってもたらされる利益や価値を指します。KPIとは「Key Performance Indicator(重要業績評価指数)」の略称で、目標達成に向けて順調に進んでいるかを確認するための中間指標です。CRMは、1度の取引だけで分析するものではなく、PDCAを回しながら情報を蓄積し、分析して生かしていくものです。つまり、KPIを設定する際に対象となるのは1度の売上ではなくLTVであり、KPIはLTV向上を目的として設定する必要があります。LTVは、「購買単価×購買頻度×継続期間」など、数種類の計算によって求めることが可能です。どれくらいのLTVを目標とするかを設定したら、「定期購入の割合を50%にする」「毎月100個売る」などのKPIを定め、実行していくとよいでしょう。

CRMのメリットは、一元化した情報を広く社内に共有できることですが、目的を定めずになんとなく導入してしまい、社内への理解が深まっていない状態だと十分に生かせません。導入の際には社員に向けて講習などを行い、CRMの意義を共有する必要があります。運用を始めた後も適宜フォローを行い、より効果的な利用方法を研修を行うとよいでしょう。まず営業部のひとつの部門から導入するなど、少しずつ進めておくと、利用方法やメリットを他部門の人に理解してもらいやすくなります。CRMの担当部署や責任者を決めておくことも大切です。

関連記事:消費者インサイトとは?調査方法と活用事例を紹介

CRMマーケティングのプロセス

CRMマーケティングの導入から実施、評価までのプロセスを順を追って紹介していきます。

CRMは顧客情報の収集からスタートします。BtoBの場合は名刺や企業ホームページなど、BtoCの場合は、レシートなどのPOSデータから購買行動の膨大な情報を得られます。ポイントカード、アプリ会員などからも情報を収集していきましょう。収集した情報は、顧客情報を分析する際に基本となる4つの切り口「デモグラフィック属性」「ジオグラフィック属性」「サイコグラフィック属性」「行動属性」を用いてセグメント化できます。

デモグラフィック属性とは、人口統計学的な属性のことで、年齢や性別、居住地域や職業、学歴や家族構成、年収などを指します。市場を細分化して考える際に基本となる属性で、販売履歴や会員情報、アンケートなどで情報を収集できます。

ジオグラフィック属性とは地理学的な属性のことです。デモグラフィックに含まれる居住地域に加えて、人口密度、人口規模、気候、文化などを含みます。小売業界、飲食業界、不動産業界などで用いられることが多い属性です。関西と関東でうどんのスープが異なったり、食パンの1枚当たりの厚みが違ったりするのは、ジオグラフィック属性を生かしているからです。

サイコグラフィック属性とは心理的属性のことで、価値観や信念、ライフスタイルや習い事、趣味や関心のある分野などを指します。サイコグラフィック属性を分析すると、なぜその商品を購入しようと思ったのかを可視化できます。顧客にインタビューやアンケートを行って情報収集できますし、顧客に送ったメールの開封率やウェブサイトへのアクセス情報などからも把握が可能です。顧客の潜在的なニーズを掘り出すのに有効な属性です。

行動的属性は別名を「ビヘイビアル属性」といい、サービスの利用頻度やWebサイトへのアクセス、インターネット使用時間、商品購買履歴、行動範囲などを指します。実際に購買者がとった行動をもとに分析するため、その後の予測がたてやすく、売上に直結しやすい属性だといえるでしょう。購買者のニーズを把握するのにも有効です。

社内に既に情報がある場合はデータのフォーマットをそろえる加工を行います。部門や組織が異なると、それぞれが独自のシステムやフォーマットを利用しているケースがありますが、フォーマットが異なっているとデータの分析ができません。名刺など電子化されていないデータも合わせて、同じフォーマットに加工する必要があります。データの加工にはコストや手間がかかりますが、CRMの強みは部門を横断してデータの一元化が可能な点であり、必要不可欠な作業です。

データを分析してどのように活用するかを考えたうえで、情報を分析し、顧客を分類していきます。情報を収集しただけの段階で何も分析を行っていない場合と、すでに分析を行ったうえに深めたい場合とでは、分析手法が異なります。デシル分析やRFM分析など、さまざまな分析手法があるので、状況に応じて手法を選択しましょう。

分析をもとに導き出したターゲットを顧客として取り込むために、KPIを設定していきます。「新サービスの利用者を前年比30%増」と目標を定めたら、Web広告からの会員獲得を30%、メルマガ利用者からの会員獲得を20%、アプリをダウンロードしたユーザーから10%など、数値化していきます。具体的な数値を出してマーケティング施策を立てることで、目標を達成しやすくなります。部署を超えた担当者も交えて作業をすると生産性が高まります。また行動のステップに沿って記入していくことで、ペルソナが抱く思考をイメージしやすくなります。

立案したマーケティング施策をできるだけ忠実に実行していきます。途中経過を検証するのに役立つのがKPIです。KPIをひとつずつクリアしながら最終的な目標を達成できるように進めていくとよいでしょう。施策を実行し終えた後は、KPIをもとに評価を行い、業務の改善に役立てていきます。目標が達成できなかった場合は、分析方法に誤りがなかったかなどを見直し、次回の施策立案に生かしましょう。CRMからは過去の失敗例や課題を把握できるため、PDCAを回して改善を行います。施策の実行だけで終わらせるのではなく、結果を分析して改善し、次回に生かすことにCRM導入の意味があるのです。

CRMマーケティングは、インターネットを使った訴求と相性がよいことでも知られています。具体的な方法と効果、活用事例を紹介します。

アドレサブル広告とは、顧客データをもとに特定のユーザーに特定の広告を配信するものです。ターゲットとする層にピンポイントで訴求できるため、コストパフォーマンスが高い特徴があります。たとえば、商品Aに対する新規購入者を開拓したい場合、Aを好む購買者にどのような傾向があるかをCRMマーケティングで導き出します。導き出されたターゲットが多く視聴するWebページや動画サイトなどに広告を配信することで、商品Aに興味を持つ可能性が高い人にアピールできます。また、新商品Bを自社の顧客にPRしたい場合は、既存の商品の中からBに類似する商品Cを探し、Cの購買者に向けて広告の配信を行うことも有効です。訴求するターゲットが明確に定まっているため、万人に受ける広告を作る必要はなく、よりターゲットが好む広告を企画できるのも特徴といえるでしょう。Facebook、Instagram、Twitterなどで配信できます。

メールマーケティングとは、メールの送信を行うことによって、ユーザーに行動を起こすように誘導する手法です。CRMと組み合わせることにより、顧客1人ひとりに合わせたメールの送信ができるほか、同じ情報を必要としている人に対しての一斉送信もスムーズに行えます。たとえば、美容院やエステなど定期的にユーザーが訪れる業種では、前回に受けた施術などをもとに一定の期間を設けてフォローメールを送ることが可能です。また、Webサービス利用頻度の低下と退会時期の関係性を把握することで、利用率が下がっているユーザーに対してクーポンやプレゼントをメールで配信し、サービスの利用を促すという使い方もできます。メールマーケティングは、ユーザーが必要としている適切なタイミングに配信することが重要です。CRMを活用することで、「メールの開封率自体を上げられた」というケースもあります。

関連記事:One to Oneマーケティングの必要性や目的は?企業事例から学ぶ実践法

顧客満足度や顧客ロイヤルティーの向上を目的とするCRMマーケティング。そもそも自社商品の「買う人」と「買われ方」を的確に認識することで、その後のマーケティング施策を検討しやすくなります。

たとえば、レシートデータを活用して顧客の思考や市場の実態を把握する方法があります。具体的にはレシート1枚で、日付・時間・商品名及び金額(値引・単価・個数)・合計金額・電話番号、さらには購入した店舗のチェーン名・店舗名などの情報からユーザーのリアルな購買行動を把握できます。

「膨大なデータを自社で集計・分析するには時間がかかる」とお悩みの方はBIツールの導入がおすすめです。「IDレシートBIツール」は独自で構築した膨大なレシートデータから、コンビニエンスストア・スーパー・ドラッグストアなどの店舗別の売れ行きを可視化しています。自社と競合商品の実売価格・売上が確認でき、顧客の理解だけではなく、商談時の資料としても利用可能です。

詳しいIDレシートBIツールの情報についてはこちらをご覧ください。

SNSの広がりにより人々の購買スタイルが変化し、顧客満足度や顧客ロイヤルティを向上させることが重視される時代。CRMマーケティングを導入して顧客を管理することが、長期的な売上の増加や経営の維持につながることが分かったのではないでしょうか。データは収集するだけでなく分析し生かすことで初めて有益なものとなります。今回の記事を参考に、CRMマーケティングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

お問い合わせ

流通横断かつユーザ軸での貴社/競合ユーザ様の購買動向の違いが分かります。

詳細資料・サンプルレポートをご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。