マーケティングに欠かせない因子分析とは?
方法・活用・注意点・事例を解説

マーケティング

マーケティング調査を行う際に耳にする「因子分析」。
「聞いたことはあるけれど、使い方がいまいちわからない」「活用方法がわからない」といった方も多いのではないでしょうか。
また、知っていても、正確な分析方法や活用方法を理解していないと、本当の原因が見えてこないのでマーケティング調査に活かせません。
そこで本記事では、マーケティング調査における因子分析の意味や分析方法、活用事例、メリット、注意点などについて解説します。

因子分析とは、複数の結果(変数)の背景に存在する原因を洗い出す方法で、マーケティング的にはユーザーを理解するために、ユーザーの多変量データに潜む共通因子(原因)を探るための分析手法です。
正しくマーケティングの調査に活用することで、極めて精度の高い解析情報を洗い出せます。
別名では、「多変量解析手法」とも呼ばれており、統計学上のデータ解析にも用いられるポピュラーな手法の1つです。

因子分析

観測変数が潜在変数(因子)から、どんな影響を受けているのかを導き出す分析手法。また、複数の観測変数を要約できる。
因子とは、ある現象の原因となる潜在的なもので、「共通因子」と「独自因子」がある。
共通因子は複数の変数に影響を与える因子で、独自因子は1つの変数のみに影響を与えるものである。

観測変数=共通因子+独自因子

例えば、友人がある日「舌打ちをする」「声をかけても無反応」「大声を出している」といった態度を取ったとします。
このとき、実際に舌打ちをしたり無反応の様子といった実際に観測できる事象を「観測変数」、「怒っているのではないか」という推測のことを「潜在変数(因子)」と呼びます。

因子分析の場合、こういった原因となる変数を、憶測や思い込みで考えるのではなく、統計学上のデータに基づいて導き出す点が特徴です。

因子分析は、主にアンケートのデータ解析や顧客データの解析に役立ちます。
性別や年齢といったデモグラフィックデータではなく、消費者の価値観や意識について分類分けが可能となります。
売れている商品やサービスが、なぜ売れているのかといった背景や理由を把握するのにも役立ちます。
顧客が抱いているブランドイメージを要約し、把握することで販売戦略に活かすことができます。

因子分析の方法を理解しないで調査すると、間違ったデータを元にマーケティングしてしまい、全く意味をなさないものになってしまいます。
そうならないためにも、しっかりと因子分析を理解して解析することが大切です。
ここでは因子分析の手順について解説します。

エクセルデータやアンケート結果など、解析したいデータから原因となりうる因子を探し出します。
そして、「SAS」や「SPSS」などの統計ソフトを使用して、固有値(どれだけ因子に影響を及ぼしているかの値)を計算します。
因子分析はExcel単体で行うのは難しく、Excel統計やSAS、SPSSといった統計ソフトを使うことで自動計算により導き出せます。

ポイント
因子分析に用いるデータには、以下の条件があります。
  • 数量データであること
  • 変数間の相関関係のあるデータであること
  • 1つの共通を説明するために3〜4の質問項目があるのが望ましい
  • 回答者数は観測変数の5〜10倍のボリュームがあるのが望ましい

因子負荷量とは、共通因子への影響の度合いを示す数値です。
-1~1の値をとり、因子負荷量の絶対値が大きいほど、その共通因子と観測変数の間に(正または負の)強い相関があることを示します。
因子負荷量を抽出するには統計ソフトを利用します。一般的な算出方法としては、主因子法や主成分法などがあります。

各因子が、全体にどれくらい影響(寄与)しているのかを示す値を確認します。一般的にはパーセンテージで表記されることが多いです。

各変数に対し、因子負荷量がどれほど影響しているのかを示す合計値を確認します。
共通性が高いほど、洗い出された因子との関連性が高まってくる結果となり、共通性が低い変数は、独自因子の割合が高いことを表します。

各データ因子の得点(影響の強さ)を示す値を把握します。
アンケート結果などの数値を分析したいときは、因子得点を算出することで詳細な調査が行えます。
計算方法は、バーレット法や回帰法などが用いられます。

マーケティングリサーチでよく用いられる一般的な流れとしては、因子得点を利用したクラスター分析です。その後、グループごとにカテゴリー分けを行います。

  • 事例1
    各店舗売場の異なるエリアごとに、化粧品の購入意識調査をアンケートする。

  • 事例2
    評判のいいサービス・商品が売れる理由や背景を把握したいとき因子分析を行う。

因子分析のポイント

次に、因子分析で特に注目して確認する箇所を解説します。

アンケート回答などを分析すると、因子がそれぞれ見えてくるので、どのような因子が抽出されたのかに着目します。内容をしっかりと把握することで、対策案を検討できます。
最初に想定した仮説と比較することでより因子分析が有効なものとなります。

実験や観測などを通じて得られるデータの観測変数に対して、共通因子がどの程度の影響力を及ぼしているのかを示す数値を把握します。
それぞれの因子が、どの項目と相関性が高いのかを把握することが重要です。
例えば、各店舗の売上高に対して、共通因子がどれほどの影響力を示しているのかといったことが把握できます。

各因子が、それぞれのアンケート結果である質問項目などにどの程度関与(寄与)しているかを把握します。
例えば、「Aが売れればBも売れる」などといった相関性の高い組み合わせを把握できれば、他にも相性のいい商品を配置することが可能です。

因子分析を調べると、主成分分析や重回帰分析といったさまざまな分析方法が検出されます。間違えやすい部分なので、それぞれを詳しく解説します。

因子分析と主成分分析はどちらも多変量解析の手法ですが、 因子分析は、「ある結果」の因子(原因)を洗い出す分析方法で、一方主成分分析は、観測変数を総合化するための解析方法です。主成分とは数値を合成して指数をつくるという意味から来ています。

因子分析と間違われる解析方法が、いくつかの説明変数から1つの目的変数を予測する手法である「重回帰分析」です。
「重回帰分析」は既存のデータを要約する目的では使用されず、未確定・未確認のデータを予測する場面で用いられることが多いといった特徴があります。

因子分析はあらゆるデータに応用できる万能な解析方法ではありません。
因子分析を行う上での注意点について解説します。

因子分析に使えるデータは「変数間の相関関係」が確認できる必要があり、数量データに限ります。また、アンケートのデータ解析の場合、アンケート回答者数は観測変数の最低でも5倍は必要です。因子分析はある程度データのボリュームがないと正確な解析ができません。

因子名・因子数などは分析者が決めるので、扱うデータは同じでも他の分析者が行えば違う結果になる可能性があります。

因子分析は大量のデータを扱う際に向いています。解析データの変数が多くて困る場合に、因子分析を行うことでデータの背後にある原因を探ることができます。
アンケートの結果や、顧客データをもっと紐解いて顧客心理を掴みたいと考えている方は、ぜひ因子分析を検討してみてください。

お問い合わせ

流通横断かつユーザ軸での貴社/競合ユーザ様の購買動向の違いが分かります。

詳細資料・サンプルレポートをご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。