商圏分析とは?
エリア内の競合に勝つための手法を覚えよう

商圏分析とは?エリア内の競合に勝つための手法を覚えよう

「商圏分析という言葉は聞いたことあるけど、今まで理解できていなかった」

「商圏分析を実施する方法が分からない」

このようなマーケター初心者の方は多いのではないでしょうか。この記事では、商圏分析を行う目的やメリットを紹介します。さらに無料ツール「jSTAT MAP」を活用した実施方法も解説するので、今すぐ商圏分析を実施したい方はぜひ参考にしてください。

ある店舗や商業施設の消費者が、生活を営んでいるエリアを「商圏」と呼びます。すなわち、店舗がマーケティング活動をするときに、効果を及ぼす地域だと言い換えられます。そして、商圏の中から収集できたデータを基にして、販売や営業、宣伝の戦略を立てていくことが「商圏分析」です。かつて、小規模な店舗にとっては商圏分析が大きな課題になっていました。なぜなら、分析に必要なデータを集めるためのツールが手軽に入手できなかったからです。

しかし、地理情報システム「GIS」の登場により、状況は一変しました。GISでは人口の分布、増減率などを簡単に確認できます。また、各エリアにおける商業施設や交通機関の位置を解析し、店舗の立地の参考にもできるのです。このように便利なGISが広まったことにより、商圏分析をするかしないかで他店との差がつく状況になったといえます。

商圏分析のメリットは、エリアの特性や消費者動向を可視化できる点です。ターゲットの属性やライフスタイルをイメージしながらマーケティングできるようになり、無駄な宣伝にコストをかける必要がなくなります。退転の危険が減少するだけでなく、売上向上にも役立つでしょう。

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商圏分析の目的や活用方法には下記が挙げられます。

  • 将来の売上予測ができる
  • 店舗開発のための調査に生かせる
  • 販売促進エリアを絞れる


ひとつずつ確認しましょう。

エリア内の消費者動向が見えてくれば、店舗の売上予測がしやすくなります。なぜなら、商圏分析を徹底的に実践すれば、ターゲット層の収入状況や購買活動の傾向まで明らかになるからです。そのため、店舗側は消費者のニーズをつかみ、「この商品をこれだけ仕入れれば、これだけ販売できる」という予想を立てられます。不良在庫を減らすために、売上予測は欠かせません。また、将来の売上が見えてくれば、販売計画の精度も上がります。

商圏分析で売上予測をする際、頻繁に用いられている手法が「重回帰分析」です。重回帰分析とは、複数の要因があるとき、それぞれがどのように売上へと影響を与えているのかを判断できる計算です。数学的には、「ある目的変数を複数の説明変数で求める」と表現されます。この場合、目的変数とは売上のことで、説明変数とは「商圏人口」「商圏実績」「商圏競合数」などに係数をかけた数値を意味します。説明変数の和に別の係数を加えれば、売上になるという理論です。

あるエリアに新店舗を開発するときにも商圏分析は活用できます。まず、商圏分析では人口や世帯数の分布を把握できます。その結果、ターゲット層が通いやすい立地を選定しやすくなります。次に、競合店舗の影響が少ない場所を探す際にも商圏分析が役立つでしょう。そのほか、将来の人口まで予測できるので、長期的な視点に立って新店舗の計画を練ることが可能です。

たとえば、現時点では人の少ないエリアでも、マンションや団地が建設されれば状況が変わるでしょう。逆に、にぎわっているエリアでも、治安が悪化すれば「住みたい」と考える人は減っていきます。商圏分析はこれらの要素を踏まえて人口の変動を予測し、新店舗にふさわしい場所を見つけ出す手段なのです。

商圏分析は、エリアごとの重要性を見極めるためにも便利です。エリア全体に同じだけの労力をかけて営業、宣伝するのは非効率的なアプローチになりかねません。特に、反響の少ないエリアへの宣伝にコストをかけても回収はしにくいでしょう。商圏分析では、マーケティング活動に対する住民のリアクションをデータ化できます。地域によって反響が大きかったり、小さかったりする状況を確認できるので、今後のマーケティングの参考になるでしょう。

そうやって販売促進エリアを絞り込めば、キャンペーンを展開するときも余計なコストをかけずに済みます。反響の大きいエリアに集中してポスティングしたり、折り込みをしたりすればいいからです。マーケティングに潤沢な予算を確保できない小規模な店舗でも、エリアを絞ることで十分利益につなげられます。

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商圏分析の方法:jSTAT MAPを使用した場合

「jSTAT MAP」とは商圏分析や立地診断に活用される無料ツールです。独立行政法人統計センターが運営している「政府統計の総合窓口(e-Stat)」にアクセスすれば、誰でも利用可能です。jSTAT MAPなら、都道府県から小地域にいたるまで、さまざまな統計データをメッシュ地図で確認できます。年齢別人口や世帯数といった基本情報はもちろん、使い方次第で経済センサスも見えてくるでしょう。しかも、それぞれのデータをレポートにして出力できる機能まで備わっています。

以下、都内の飲食店が出店候補地を探していると仮定して、jSTAT MAPを使った商圏分析の手順を記していきます。

jSTAT MAPそのものはアカウント登録をしなくても利用できます。しかし、商圏分析機能を使うにはアカウント登録が必須です。アクセスすると最初にログイン画面が表示されるので、「アカウント作成する」というボタンをクリックします。そうすると、e-Stat内の「ユーザー登録」画面へと進みます。メールアドレスを入力して仮登録すれば、本登録のURLが送られてくる仕組みです。本登録画面でパスワードを設定すれば、アカウント作成が完了し、jSTAT MAPを自由に利用できます。

ツールにログインすると、地図の画面が表示されます。その左上には検索スペースが設けられているので、キーワードを入力してみましょう。jSTAT MAPのシステムは、住所、施設名、郵便番号、緯度、経度、メッシュコードといったキーワードから、エリアを特定します。たとえば、「東京都杉並区」と入力もできますし、「166-0001」と郵便番号で検索をかけることも可能です。検索した商圏は候補地として、ツール内に登録もできます。

気になるエリアを見つけたら、レポートを作成して出力しましょう。レポートを見れば、細かい商圏分析ができます。

レポートを作成する前には、チェックリストが出てきます。ここでは、レポートに必要な項目を選んでいきます。「基本分析」や「かかる小地域」「世帯数」など、確認したい項目にチェックをつけていきましょう。詳細なレポートが欲しい場合には、全てにチェックをつけておくのが無難です。

出力の前に、エリアを絞り込みます。エリアは「半径設定」か「到達圏」のいずれかで表示されます。半径設定は指定された距離を半径として、円になった状態の地図です。到達圏は、自動車や徒歩で到達できる範囲を地図にしたものです。片方を選んだあとで地図の一部をクリックすれば、「リッチレポートを作成する」というボタンが表示されます。それをクリックするとレポートが作成されて、ダウンロードが可能となります。

メニュー内の「統計地図作成」という項目に「レポート作成」が含まれています。それをクリックすれば、「シンプルレポート」と「リッチレポート」という選択肢が表示されます。レポートを作るときは最初にいずれかの形式を選ばなくてはなりません。シンプルレポートはExcelかHTML形式、リッチレポートはExcel形式のみで出力されます。特に理由がなければ、リッチレポートでかまいません。

出力したレポートは、すぐにチェックをかけるようにします。求めている項目がそろっているか、エリア設定を間違えていないかなどを見直しましょう。商圏分析は少しでもエリア設定がずれると正確性を失ってしまいます。レポートは商圏分析の中心になるデータなので、慎重に作成することが大事です。

この段落では、商圏分析と合わせて使える「ハフモデル」についてみていきます。

消費者がある店舗へと足を運ぶ確率を数字で表す理論が「ハフモデル」です。提唱したのは、カリフォルニア大学のデービッド・ハフ博士です。ハフ博士は1960年、自身の研究により、消費者は小さな施設よりも大きな施設で買い物をしやすいという傾向を発見しました。また、消費者はより近い施設のほうを好むというデータもあります。すなわち、マーケティングでは、「消費者の近場にある大きな施設」が最も有利で、「遠くにある小さな施設」が不利だといえるのです。

ハフ博士は研究結果を基にして、消費者が施設に出向く確率を、計算式で求められると主張しました。その後、ハフモデルは世界中のマーケターから注目され、商圏分析のスタンダードな方式になっていきます。ハフモデルを踏まえて、競合のいる商圏に新店舗を建てるとすれば、「より大きく」「より近く」を意識する必要があります。

消費者がある店舗を訪れる確率が「吸引率」です。そして、ハフモデルは吸引率を求めるための理論だといえます。ハフモデルの計算式はやや複雑です。まず、ハフモデルでは店舗の売場面積を「魅力度」と表現しています。面積が広くなるほど、消費者にとっての魅力が増すというハフ博士の理論によるものです。魅力度の単位は平方メートルです。これを、消費者と店舗の距離(メートル)で割ります。この数値を仮に「A」とします。

次に、同じ商圏にある施設の売場面積を、消費者からの距離で割ります。これが「B」です。吸引率は、AをAとBの和で割って、100をかければ求められます。ただ、正確にはAにもA+Bにも1~2の距離抵抗数をかけなくてはなりません。距離抵抗数とは、消費者から離れている店舗の確率を低くするために設定される数値です。

仮にある施設「甲」の売場面積が1000平方メートルで消費者から500メートル離れていたとします。また、別の施設「乙」が2000平方メートルで、100メートル離れていたとします。このとき、甲の吸引率は「2÷22×100」なので、およそ「9%」です。すなわち、甲の吸引率が低く、立地条件はそれほどよくないとの見方ができます。逆に、乙の吸引率はおよそ「91%」で、甲よりもかなり恵まれている立地条件だといえます。

ちなみに、ハフモデルの計算式にはさまざまな応用が利きます。売場面積を純粋な店舗面積にしたり、駐車場の台数や品数にすることも可能です。さらに、計算に用いる距離も、「消費者がかかる時間」に置き換えられます。自社が重要視している項目を使い吸引率を求めるのもひとつの方法です。

日本では1980年代から、ハフモデルを進化させた「修正ハフモデル」が使われるようになってきました。修正ハフモデルは、当時の通産省が大規模小売店舗法に基づく出展の審査を行うために考案したものです。それまでのハフモデルは60年代に提唱された理論であるため、時代の流れに対応できない部分がありました。修正ハフモデルでは従来の弱点を克服するべく、「価格帯」「営業時間」「地域の注目度」などを使って吸引率を求められるように改善されています。

修正ハフモデルの登場により、マーケターは変則的な条件下でも正確な吸引率を計算しやすくなりました。たとえば、昔のハフモデルでは「身近で大きな飲食店」は「遠くにある小さな飲食店」よりも吸引率が高いと無条件で結論付けられてしまうでしょう。しかし、遠くのエリアにブランド力があったり、店舗の営業時間が通いやすかったりすると、吸引率は変わってきます。面積や距離以外の特殊な要素にも対応できるため、日本では広く知られる商圏分析の手法になりました。

修正ハフモデルの強みは、魅力度の定義を柔軟にしている点です。全ての消費者が面積や距離だけを評価して、商業施設に通っているわけではありません。この大前提を見逃してしまうと、算出した吸引率の信頼性は下がってしまいます。修正ハフモデルは商圏ごとの特徴を織り込み、独自のマーケティング戦略の土台を組み立てる際のツールとして適しています。市場動向の変化にも取り残されにくいのもメリットです。

商圏分析ももちろん必要ですが、マーケティング戦略で成功するには、商品やサービスの顧客理解が欠かせません。「IDレシートBIツール」は、顧客の購買行動の把握によって効果的なマーケティングに貢献するツールです。数万規模のお買い物レシートのデータを蓄積した「IDレシート」は、商品の買われ方や顧客の嗜好(しこう)、価値観などを把握でき、顧客の可視化を実現します。また莫大(ばくだい)なデータを整理するBIツールによって、さまざまな業務を抱える多忙なマーケターでも求める情報の特徴を簡単につかむことが可能です。

さらに、POSデータでは見えづらかった自社商品の「買う人」と「買われた」をしっかりと把握できるため、自社と競合商品の実売価格・売上が確認でき、顧客の理解だけではなく、商談時の資料としても利用可能です。

「IDレシートBIツール」の詳しい情報はこちらをご覧ください。

無計画のまま新店舗を出しても、競合の集客力に対抗するのは困難です。商圏分析によるデータマーケティングで、店舗を構える場所から慎重に選ぶことが大事です。また、商圏分析では修正ハフモデルも取り入れてみましょう。さまざまな要素を基準にして吸引率を求められるので、エリアの特徴に合ったマーケティング活動につなげられます。

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