未顧客理解とは?
未顧客理解とは、ビジネス書『“未”顧客理解なぜ「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?』の中で著者の芹澤連氏が提唱している概念です。
本書は図解や漫画、具体的な事例などを用いて議論が進められているため、マーケティングについての知識が多くない方でも読み進めやすいビジネス書となっています。さらに本書の中で芹澤氏は、マーケティングにおいてもはや「格言」となっている通説ではなく、エビデンスに基づいた形で新たな視点を提示しています。
こちらの記事では、未顧客理解の概要を知るためのポイントを解説していくので、さらに知りたいと感じた方は是非、実際にこちらの本を読んでみることをおすすめします。
未顧客とは?
未顧客理解とは、読んで字のごとく「未顧客を理解すること」を意味しますが、この「未顧客」は私たちにとって耳慣れない言葉です。
未顧客とは、商品やサービスを買わない人を意味しています。ノンユーザーや、ライトユーザーと呼ばれる層が未顧客にあたるものです。企業にとっては、顔の見えない存在でもあります。
従来、すでに購入している顧客に対しては企業のもつデータを基に分析され、戦略を打ち立てられてきました。その一方で、未顧客に関してはデータを集めることの難しさから、盲点となっているのが現状です。しかしながら消費者層の大半は自社の顧客ではなく、未顧客によって占められていることを踏まえると、未顧客に対するアプローチは考えるべき課題と言えるでしょう。
顧客理解と”未”顧客理解
ここで、既存の概念である「顧客理解」との対比を導入することで「未顧客理解」を捉えていきます。
まず従来の顧客理解とは、ビジネス戦略やマーケティング戦略を考えるために、顧客が求めているものや顧客の抱える課題を捉えようとすることを意味します。顧客理解においては、ペルソナや、ターゲットプロファイルなどを設定し、人を理解しようとします。しかしながら芹澤氏は、このような理解は企業視点での理解に過ぎないと指摘しています。
一方、未顧客理解のポイントは、企業視点ではなく顧客視点を捉えることです。つまり、顧客の見方に立つことが、未顧客を理解する上では重要とされています。そのためには「人」ではなく、人の「行動原理」を理解し、「顧客にとっての合理」を捉える必要があります。
未顧客理解に注目すべき理由
未顧客の重要性を最初に提示したものとして、芹澤氏はアンドリュー・アレンバーグによる「負の二項分布」を挙げています。負の二項分布は、ノンユーザーやライトユーザーの顧客数は非常に多く、ヘビーユーザーになるほど顧客数が劇的に少なくなることを示しています。ブランドがこの分布にしたがって成長するのであれば、ライトユーザーをいかに沢山取り込めるかが重要となります。
さらにアレンバーグの研究を発展させたものの中で、未顧客理解に注目すべき理由として言及されるひとつの例に、ダブルジョパディの法則があります。ダブルジョパディの法則とは「市場におけるシェアが大きいほど顧客数は多く、購入頻度も高い」ということを示しています。ここでポイントとなるのが顧客が増える→購入頻度が増えるという方向です。これは不可逆なものとされており、購入頻度が増えるからといって顧客数が増えるとは限りません。
そのため、まずは顧客数を増やすことが必要であり、そのためには未顧客を顧客へと変えていく努力をする必要があるのです。
未顧客に購入してもらうには?
既存の顧客は何もしなくても自社を商品購入の際の選択肢に入れますが、未顧客が自然と自社を商品購入の選択肢に入れることはありません。さらに未顧客はただ無関心な人であり、理解をするための手がかりがないものです。
そのためブランドとしては、未顧客の生活文脈の中になるべく多くブランドへの入口を設定し、さらにその入口とブランドの結びつきを強めることが必要となります。これによって、未顧客がブランドに到達する確率を高められると期待できます。
未顧客をどのように理解するか
では実際、未顧客理解を進めていくにはどうすればよいのでしょうか?芹澤氏は「未顧客理解の5原則」として以下のように説明しています。
原則1:再解釈の重要性
原則2:市場の再解釈
原則3:ターゲットの再解釈
原則4:ベネフィットの再解釈
原則5:ポジショニングの再解釈
(芹澤連『“未”顧客理解 なぜ「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?』112頁より)
この5原則では、商品の置かれる文脈が変わればその意味も変わるということを踏まえて、市場やターゲット、顧客のベネフィット、そして商品のポジショニングを再解釈することの重要性について詳しく述べられています。
これらの原則をもとに、従来の顧客理解の考え方とは切り離して未顧客を捉え、未顧客の置かれた文脈や彼らにとっての合理性を理解すると同時に、ブランドの価値と生活文脈における接点を強化することが、本書において提言されている「未顧客理解」と言えるでしょう。
IDレシートで未顧客のデータを集める
データを集めることが難しいとされている「未顧客」ですが、IDレシートを使えば未顧客の分析に役立つ情報を集めることができます。
IDレシートは、消費者と紐づいた日々の買い物レシートを、「レシート商品特定システム」によってマーケティングデータ化しています。そのため自社では商品を購入していなくても、他社や他のカテゴリの商品を購入している「未顧客」を発見し、分析することができるのです。
まとめ
今回の記事では、「未顧客理解」という新しいマーケティングの視点についてご紹介しました。新規顧客の獲得に悩んでいる方や、マーケティングの新しい動きに関心のある方は、是非今回ご紹介した本をお手に取ってみてください。
「IDレシートBIツール」の詳しい情報はこちらをご覧ください。