ポジショニング

ポジショニングとは?
STP分析におけるポジショニングの重要性や進め方

「STP分析」と呼ばれるマーケティング戦略の手法のひとつに「ポジショニング」があります。
ポジショニングの目的は、自社と競合他社を差別化するポイントを見極め、自社の優位性を打ち出していくために行います。
この記事では、ポジショニングを構成する「STP分析」についてや、ポジショニングの方法、また他社のポジショニング成功事例を紹介しながら解説します。
これからポジショニングを行い、マーケティング戦略を実施していきたい方は、ぜひ本記事をご活用ください。
STP分析におけるポジショニング

STP分析とは、「セグメンテーション(Segmentation)」、「ターゲティング(Targeting)」、「ポジショニング(Positioning)」の3つの要素から構成される、マーケティングの基本戦略です。それぞれの頭文字をとってSTP分析と呼ばれています。

セグメンテーションとは、市場の細分化を指し、市場の顧客に対して、共通するニーズを見出しグループ分けを行うことが目的です。

ターゲティングとは、狙うべき市場の決定を指し、セグメンテーションで細分化を行った結果、自社に優位性のある市場の中からターゲット層を選定することを言います。

そしてポジショニングは、自社の製品がどれほどユニークで魅力的なのか、他社との差別化を図りながら、ターゲットである顧客に示す行為です。
STP分析について詳しくはこちら
https://receiptreward.jp/solution/column/stp-analysis.html

ポジショニング戦略成功のための要素

グロービス経営大学院によると、ポジショニング戦略を成功させるためには、以下の4つの条件が重要な要素として挙げられています。

自社のサービスが市場の顧客に対してしっかりカバーできるか、または十分な顧客がその市場にいるかを見極めます。

顧客に対して自社の強みや魅力が伝わるかを判断します。

顧客からの共感を得られなければ、セグメンテーションやターゲティングを見直す必要があります。
詳しい特徴について1つずつ確認してみましょう。

整合性がないとサービスにブレが生じ、顧客に伝わりにくくなるため、せっかくポジショニングを行っても効果が半減します。

ポジショニングはSTP分析の3つの要素の3番目にあたるフレームワークです。1番目のセグメンテーションと2番目のターゲティングを行った上で、ポジショニングを実施します。 この流れに沿わないと、ロジック通りに分析ができないため、必ずSTPの順に行ってください。

次に、ポジショニングマップについて解説します。

ポジショニングマップとは、市場における自社のサービスや商品のポジションを視覚化するために、意味の異なる縦と横の2軸で作る図表を指します。
ポジショニングマップは競合他社との差別化や、自社の優位性を見出すことに役立ちます。

ポジショニングマップは以下の手順で作成します。

ステップ1:自社ターゲットのKBF(購買決定要因)を列挙
ステップ2:KBFから購買の決め手となりえるものを抽出
ステップ3:競合他社商材と自社のKBFを比較
ステップ4:ポジショニングマップを作り、分析


それぞれの手順について、詳しく解説していきます。

KBF(Key Buying Factor)とは、購買決定要因のことで、顧客が製品やサービスを購入する際に重視する要素のことを指します。

例えば、ノートPCのKBFは、「価格」「軽量」「速さ」「バッテリーの駆動時間」「デザイン」などが考えられます。
KBFはその製品を構成する価値とも言えます。

ステップ1で列挙したKBFから、ターゲットが重視するKBFを抽出します。

例えば、外出頻度が高い営業マンが仕事用としてノートPCを購入する場合、「軽量」「バッテリー駆動時間」「速さ」などをKBFに設定します。

ターゲットに合わせたKBFを抽出したら、競合他社のKBFと自社のKBFを比較します。

例えば、ノートPCのKBFで「軽量」を抽出した場合、他社のノートPCと自社を比較します。また、ひとつだけではなく、複数のKBFを抽出し、そのKBFが優位なポジションにあるかどうかを確認します。

ステップ3で比較ができたら、2つのKBFを横軸と縦軸にして、マトリクスを組みます。

例えば、横軸を「軽量」、縦軸を「バッテリー駆動時間」にし、自社と競合他社の製品のポジションを視覚化します。ポジションが見えると、自社の優位性を把握できたり、差別化できるポイントを見極めることができます。

有効なポジショニングマップを作成するポイントを2つご紹介します。

KBFを列挙した際、最もターゲットが重要視するKBFをポジショニングマップの軸に設定します。重要度の低いKBFを設定してしまうと、優位性や差別化を図るという意義が薄れます。
例えば、外出頻度が多い営業マンがターゲットの「ノートPC」の場合、重要度が高いKBFは「軽量」「速さ」「バッテリー駆動時間」と抽出したにも関わらず、「デザイン」や「HD容量の大きさ」といった重要度が高くないKBFで設定してしまうと、優位性を見出せなかったり差別化にならず有効なポジショニングマップとして機能しません。
ターゲットが重視するKBFを軸にすることが重要です。

ポジショニングマップの横軸と縦軸は、相関性が低いものを設定する必要があります。
例えば、「価格と品質」や「サイズと重さ」は相関性が高く、トレードオフの関係にある要素で、これらを設定してしまうと右肩上がりの直線に沿ったポジショニングになってしまいます。「価格と品質」で設定すると、「低品質は安価で、高品質は高価」というのが図に現れます。「価格」や「品質」に対する軸は、「デザイン」や「味」といった相関性が低い要素を設定しましょう。

ここでは他社でうまくいっているポジショニングの事例を紹介します。

ポカリスエットは初め、「スポーツ飲料」というポジショニングで市場を開拓しましたが、アクエリアスなどの競合が出てきたため、再度ポジショニングを行いました。その時に再設定したのが「健康に良い清涼飲料水」というポジショニングで、「スポーツ飲料」のアクエリアスとの差別化ができ、成功を納めました。

花王のヘルシア緑茶も、ポジショニングによって成功を果たしたと言っても過言ではない事例です。もともと、緑茶の業界は、「お〜いお茶」や「伊右衛門」、「生茶」などといった競合他社の商品が多数あり、市場への新規参入は難しいと考えられていました。
ですが、花王がSTP分析を行ったところ、他社製品のほとんどが若者をターゲットにしていることがわかり、競合がいない「肥満に悩む中年男性」をターゲットにしてポジショニングを行い差別化に成功しました。

牛丼のチェーン店といえば「吉野家」と「すき家」が挙げられます。どちらも牛丼を提供していますが、異なるポジショニングで成功している企業と言えます。
先発の吉野家は「ビジネスマン」、「働く男性」をターゲットにしており、後発のすき家は吉野家のターゲットを外して、「女性」、「ファミリー層」に設定しました。そうすることで、異なる市場に向けてリーチでき、すき家は成功を果たしました。

「翼をさずける」というキーワードでお馴染みの清涼飲料水「レッドブル」は、ユニークなポジショニングを行い爆発的な人気となりました。取ったポジショニングとは、「機能性飲料」で、以下のシチュエーションを提示し、「レッドブルはあなたが必要なときに翼をさずける機能性飲料」というイメージを顧客に発信し、競合他社の製品と大きく差別化を図ることに成功しました。

レッドブルの機能性が活かされるシチュエーション
・やる気を出したいとき
・最高の夜を過ごしたいとき
・長時間のドライブを乗り切りたいとき
・大変な仕事を乗り切りたいとき
・テストで好成績を出したいとき

具体的なシチュエーションを伝えることで顧客がイメージを膨らませやすくなり、購買意欲を高めています。

マーケティングにおいて「ポジショニング」は、競合商品との機能やターゲット属性の違いを意図する場合もありますが、コンビニのようなチェーン店では「立地」という見方もあります。都心のビジネスパーソン利用が多い店舗と、郊外のファミリー層利用中心の店舗では、売れ筋商品の傾向も異なります。

そんな、「コンビニの立地」による売れ筋商品の違いに関して分析した記事がありますので、当サイトに掲載している"IDレシートデータ"活用事例を紹介します。

日本全国にコンビニは存在しますが、顧客の利用環境や利用者属性には違いがあります。
都心では徒歩圏内にいくつものコンビニがあるため、各社のオリジナル商品を比較して楽しんでいる方も多いと思います。一方郊外では、ファミリー層が最寄りのコンビニを繰り返しリピート利用しているかもしれません。
そんな、コンビニの立地条件での売れ筋商品の特徴の違いについて分析します。

■立地による職業比較
まずは、立地ごとの利用者属性の違いについて調べてみます。
男女比や年代比、未既婚の比較なども出していますが、ここで紹介するのは、上記のように都心店舗は本当にビジネスパーソン(会社員)が多いのかを検証するための「職業比較」にしました。

すると下記のように、予想通り会社員は都心から離れるごとに減少しており、パート・アルバイトは都心から離れるごとに増加していることが見えてきました。


立地による職業比較


■時間帯ごとの立地別売れ筋商品は?
次に、時間帯ごとの「立地別売れ筋商品」を比較してみます。
全時間帯に関する比較は、本編の記事を参照していただくとして、ここでは特徴的な「昼」と「夕方」について紹介します。
※本編記事はこちら。
https://receiptreward.jp/solution/report/analysis18_2308_01.html

まずは「昼」の時間帯ごとの立地別売れ筋商品を比較します。
「昼」はランチタイムですので、どの立地でもランチ食材が上位になることは予想できます。

全立地で「おにぎり」「コーヒー」が人気な傾向は変わりません。ただ都心店のみ、「日本茶・麦茶」が「コーヒー」を上回る順位となりました。都心では、オフィスの自席でランチを食べるため、お茶の需要が高まるのでしょうか。

また「デザート」「アイス」に関しては、都心店ではTOP10の下位なのに対し、準都心店・郊外店では都心店よりも上位にあることが分かります。車移動の多い郊外では車の中で食べられても、都心のオフィスでは、同僚の手前「デザート」「アイス」を食べづらいのかもしれません。


各立地における購買数カテゴリランキング『昼』


また「夕方」に関しては、TOP10の4割を「おやつ系食品」が占めているのは全立地で共通の傾向です。ただ都心店だけ、10位に「リキュール類」がランクインしている点があげられます。夕方は18:59までなので、都心店では終業後に「リキュール類」を購入している様子がうかがえます。


各立地における購買数カテゴリランキング『夕方』


コンビニの立地別の売れ筋商品の分析に関しては、前編・後編と2ページに分けて分析レポートを紹介しています。上記以外にも、様々な分析をしていますので、「ポジショニング」分析の参考事例としてご覧ください。

立地別にコンビニ購買傾向を分析!【前編】
https://receiptreward.jp/solution/report/analysis18_2308_01.html

立地別にコンビニ購買傾向を分析!【後編】
https://receiptreward.jp/solution/report/analysis18_2308_02.html

また、その他のいろいろな視点での"IDレシートデータ"活用事例は、こちらをご覧ください。
https://receiptreward.jp/solution/report/

以上、マーケティング戦略のSTP分析におけるポジショニングについて解説しました。

ポジショニングは、顧客に対して商品の価値や魅力を伝えるための重要な戦略です。
また、会社視点ではなく、顧客視点で考えることが非常に大切です。

顧客の理解を深めるのに有効なツールとして「IDレシートデータ」が挙げられます。
IDレシートデータとは、家計簿アプリの支出データよりユーザーの買い物動向を分析できるツールです。主に企業のマーケティング担当や営業担当の方にご利用いただいており、顧客の動向はもちろん、他社の分析等も行えます。これらのデータから、自社の強みを見極め適切な戦略をとっていくことが可能です。
これから戦略的にマーケティングを行っていきたい方は、こういったツールの活用も検討してみてはいかがでしょうか。

「IDレシートBIツール」の詳しい情報はこちらをご覧ください。

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