顧客の購買行動を把握する10モデルを種類ごとに解説

顧客の購買行動を把握する10モデルを種類ごとに解説

インターネットが普及し、スマホなどで気になった情報をすぐに検索できる時代では、購買行動につながる消費者心理の把握は難しくなっています。従来の購買行動モデルが変わらずに利用されていることもあれば、最新のモデルと併用されているケースもあります。その中から「顧客にとってどんな方法が最適なのか」を見つけることが必要です。今回は、時代の変遷に応じた購買行動モデルの種類とその変化を解説します。

購買行動モデルとは、消費者が商品やサービスを購入・利用するまでの行動パターンをモデル化したものです。「顧客がどのようなプロセスで購入や利用を決定したのか」を端的にあらわしているため、マーケティング戦略を立てる際に購買行動モデルを参考にすると、「どんなアプローチが必要なのか」「現状では何が足りていないのか」を判断することが可能です。たとえば、マーケティング戦略モデルのひとつである「AIDA」は、約100年前に提唱され現在でも利用されています。それだけ長い年月、ビジネスの世界で貴重な情報として扱われていることが、購買行動モデルの価値を示しているといえるでしょう。

ただ、消費者の購買行動は時代によって変化します。時代背景に対応する形で、購買行動モデルも新しい理論が次々に提唱されてきました。最新の購買行動モデルでは、購入後にSNSなどで商品情報や感想をシェアする行動などもモデル化されています。一方で、従来のモデルと最新のモデルが使い分けられたり、併用されたりしています。自社の顧客層に合った購買行動モデルを選ぶためには、その種類や特徴を理解しておく必要があるでしょう。そこで、これから4つの時代に分けて、購買行動モデルの種類を解説します。マスメディア時代から始まり、インターネット時代やSNS時代を経て、コンテンツマーケティング時代に入った歴史を確認しましょう。

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購買行動モデルの概念が生まれたのは、1920年代といわれています。当時、消費者が商品やサービスを知るための情報源にしていたのは、新聞・雑誌の広告やテレビCMなどでした。友人や近所の者同士の口コミ、店頭で店員から説明を受けて商品を知ることもあったでしょうが、不特定多数の人に情報を広めるにはマスメディアが大きな役割を果たしていたのです。

マスメディア時代のアメリカにでは、消費者の購買行動をモデル化したAIDAが提唱されました。最初の提唱者St. E・ルイス氏は、同国の広告業界で顕著な功績を果たした人として殿堂入りしています。一般的に知られるようになったのは、E・K・ストロング氏が論文で発表したことがきっかけでした。

AIDAは、この理論における4つのキーワードの頭文字を取って名付けられました。AはAttention(注意・認知)を意味し、消費者がテレビCMなどの広告を見て商品を初めて知る段階です。現代のようにインターネットで情報を集められなかったため、マスメディアによる広告は非常に効果的なアプローチでした。商品情報を知った後、消費者の何割かは興味を持ちます。その段階が、Iで表現されるInterest(興味・関心)です。そして、DのDesire(欲求)に移行し、商品を欲するようになる人もいるでしょう。最後に、AのAction(行動)となり商品の購入につながるのです。AIDAは、マスメディア時代の購買行動モデルとして現在も広く使われています。

マスメディア時代には、S・R・ホール氏によるAIDMAも提唱されています。AIDMAは、AIDAに加えてMのMemory(記憶)を理論の中に取り入れました。企業側は、Attentionにおいてマスメディアによる広告・宣伝で消費者に商品を認知してもらいます。次に、Interestで商品に興味を持ってもらうようなアプローチを行い、商品購入の欲求であるDesireにつなげる施策を打っていきます。その後、AIDAであればActionの購買行動となるのですが、AIDMAの場合は消費者が商品を覚えていることが重視されるのです。

当時は、欲しい商品があってもすぐに購入や注文をするのが難しい時代でした。今のようにネットでいつでも商品が注文できる状況ではなかったのです。そのため、消費者が商品を忘れてしまわないように、強く印象づけるような広告・宣伝が求められました。その結果、ある程度の期間、消費者が商品を記憶に留めておくMemoryが重視されたのです。

AIDCASは、AIDAの発展した形と考えると分かりやすいです。マスメディアの広告によって消費者に商品を認知してもらうAttentionや、さらに興味を引きつけるInterest、商品が欲しいと思わせるDesireといった企業側のアプローチは変わりません。AIDCASの特徴は、その後のConviction(確信)と、商品購入や来店行動であるActionの次に行われるSatisfaction(評価)の2つです。Convictionとは、企業側が商品の実績や評判などを顧客に提示することで、「商品への確信を深めていく」というアプローチをいいます。Satisfactionは、顧客が商品を購入したことに満足(評価)することを意味し、企業のアプローチとしてアフターケアを充実させることなどが挙げられるでしょう。

AIDCASは、購入の前に確信が必要となる住宅や車、貴金属などの高額な商品の購買行動モデルに適しています。また、商品購入後の評価を高めることで信頼を得て、リピーターになってもらいたいときにもAIDCASの法則が応用できるでしょう。

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2000年頃から徐々に一般家庭にもインターネットの普及が始まり、従来の広告・宣伝のあり方ではアプローチしにくい消費者層が出てきました。具体的には、不特定多数を対象にしたマスメディア広告への反応がうすく、インターネットを使って自分で情報を集め、比較検討した後でしか商品を購入しない消費者層です。2000年代はSNSの普及する前であり、パソコンを使ったネット検索やホームページの閲覧などが情報収集の主流でした。

AISASは、2005年に広告代理店大手の電通が提唱した購買行動モデルです。AISASの特徴は、消費者が興味を持った商品の情報を自分で検索して調べるSearch(検索)を、Desire(欲求)よりも重視した点でしょう。消費者は、「その商品が本当に自分の望んでいるものなのか」を検索して判断し、その結果が購買行動につながる傾向です。最後のSは、Share(共有)を意味し、商品の感想や体験をブログや初期のSNSなどで共有します。消費者のSearchに対応するためには、企業はホームページを持つことが有効です。Attention(注意・認知)やInterest(興味・関心)の段階で、従来のマスメディア広告も用いながら、自社の商品情報をホームページやSNSなどで積極的に発信していくことが求められます。

AISCEASは、AISASの発展形となりSearchとActionの間にComparison(比較)とExamination(検討)を加えたモデルです。インターネットの普及に伴い、それまでよりも多くの情報がネット経由で入手できるようになりました。その結果、商品情報の比較と検討を行うことが、購入行動に至るまでに重要なプロセスとなったのです。企業は、AttentionやInterest、Searchに対応するため、マスメディアによる広告だけでなく自社ホームページの開設・拡充や、SNSでのアプローチを行っていくことが求められるようになりました。そのため、消費者が商品情報をShareすることも考慮に入れて、比較と検討がしやすいように商品のアピールポイントなどを積極的に発信していくことが重要です。

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購買行動モデル③2010年頃〜|SNS時代

コンテンツマーケティングとは、消費者にとって価値ある情報をオウンドメディアなどで定期的に発信することで、オウンドメディアへの訪問を増やし最終的に商品やサービスへの購買行動へとつなげていく手法のことです。SNS時代で紹介したSIPSやVISASと比べると、「消費者にコンテンツに対する興味や共感、好印象を持ってもらう」という方向性は同じでも、購買行動を重視している点が異なります。コンテンツマーケティングの強みは、SNSに比べてサイトの滞在時間が長く、消費者の潜在的な興味を掘り起こして購買行動に結びつけることもできることでしょう。

SIPSとは、SNS上で消費者に共感してもらうことを重視した購買行動モデルです。SはSympathize(共感する)を意味し、消費者はSNS内の口コミや画像などを見て、「自分もその商品が欲しい」「楽しそうだからその場所に行ってみたい」といった共感を得ます。その後、Identify(確認する)の段階へと進み、自分の共感した事柄に関する他の人たちの反応を確かめようとします。共感がより一層高まった消費者は、Participate(参加する)の段階となり、自らも「いいね」したり肯定的な情報を発信。実際に、商品やサービスの購買行動につながるのです。

SIPSの特徴は、商品の購買のみに視点を置くのではなくParticipateにおける「いいね」や高評価などの行動も重視している点でしょう。その後は、Share&Spread(共有・拡散する)の段階に入り、商品やサービスがさらに多くの人の目に留まりやすくなります。

Dual VISASとは、SNS上で購買行動につながるプロセスを解説したモデルです。Vは、Viral(口コミ)を意味し、消費者はマスメディアやネット検索ではなくSNS上の口コミによって商品を認知します。次のInfluence(影響)の段階では、消費者が口コミをした人物に影響を受け、Sympathy(共感)でその人物に共感を覚えます。SNSに多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーなどがこの影響を与える人物に該当するでしょう。そして、実際の購買行動であるAction(購買)につながり、Share(情報共有)では商品の評価を発信・共有します。

VISASの特徴は、商品の認知が口コミで行われることにより、自分が欲していなかったものでも、インフルエンサーへの共感から購買につながる可能性があることです。 AISAS」のモデルを理解することにより、消費者が実際の購入へと至る購買行動まで、戦略的にアプローチできます。

コンテンツマーケティングとは、消費者にとって価値ある情報をオウンドメディアなどで定期的に発信することで、オウンドメディアへの訪問を増やし最終的に商品やサービスへの購買行動へとつなげていく手法のことです。SNS時代で紹介したSIPSやVISASと比べると、「消費者にコンテンツに対する興味や共感、好印象を持ってもらう」という方向性は同じでも、購買行動を重視している点が異なります。コンテンツマーケティングの強みは、SNSに比べてサイトの滞在時間が長く、消費者の潜在的な興味を掘り起こして購買行動に結びつけることもできることでしょう。

DECAXとは、コンテンツマーケティングにおける購買行動を表したモデルです。オウンドメディアなどにコンテンツを作っていくことで、企業からアプローチするよりも、消費者に見つけてもらうことを目指します。そのため、DECAXの購買行動モデルは、Discovery(発見)から始まり、気に入ったコンテンツを見つけた後は、「いいね」や評価などでコンテンツとのEngage(関係)を深めていきます。ただ、「コンテンツが広告のための案件なのか」「きちんと中立性がある内容なのか」をすぐには判断できません。

消費者は、Check(確認)とEngageを繰り返すことで、コンテンツへの信頼を深めていきます。そして、自分のタイミングでAction(行動)となる購買行動へ移り、Experience(体験と共有)で商品の感想や体験を広げていくのです。DECAXの特徴は、ブログの記事を1本読むにしてもSNSよりも長い時間をかけることが前提になっている点でしょう。消費者は、定期的にブログなどを訪れて、そのコンテンツへの信頼を深め、潜在的な興味に気付かされることもあります。

Dual AISASとは、情報を広めたい消費者が第三者に発信するまでを表したモデルです。A+ISASと表現されることもあります。企業がマーケティング戦略を立てる際、消費者が情報を拡散していく行動を考えることで、商品の認知度向上や購買行動の活性化につながることもあります。Dual AISASは、消費者がInterest(興味)を持つ段階から始まります。これは購買行動への興味ではなく、あくまでも「情報拡散への興味」というのがポイントです。

その後、Share(共有)によって情報は拡散され、Accept(受容)の段階で第三者がその情報を受け取ります。商品情報だけでなく「情報発信者が商品をどう思っているか」などの感情も含まれるため、影響は強くなる傾向があるでしょう。そして、Spread(拡散)の段階でさらなる情報拡散が図られ、最後に、先頭のAとなるActivate(活性化)に移行します。ここでいう活性化は、「広めたいという情報拡散への興味から、買いたいという購買行動への興味へと変わる」という意味です。買いたい「AISAS」と広めたい「Dual AISAS」のモデルを理解することにより、消費者が実際の購入へと至る購買行動まで、戦略的にアプローチできます。

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RsEsPsとは、日本プロモーショナル・マーケティング協会が発行している『プロモーショナル・マーケティング ベーシック』で定義された最新の購買行動モデルです。まずは、3つの大文字の意味を見ていきましょう。Rは、Recognition(認識)を意味し、消費者が商品を認識する行動です。EはExperience(体験)を意味し、商品をただ知っていた状態からポップアップストアなどで実際に手をふれたり、利用してみるといった体験を含みます。そして、Pは実際に購買行動へと結びつくPurchase(購買)の意味です。これらは、従来の購買行動モデルと似た形をしています。

RsEsPsの特徴は、大文字の間に入っている小文字のsです。これらの小文字のsは、「search(検索)」「share(共有)」「spread(拡散)」を意味しています。スマホの普及によってモバイル環境を得た消費者は、「検索」「共有」「拡散」という3つの要素を、いつでもどこでも行うことが可能です。従来の順番通りに移行していくモデルではなく、認識から体験、購買に至るモデルのどこであっても、3つのsが入り込んでくる可能性があります。

そのため、時には順番が反対になることもありうるのがRsEsPsモデルの特徴です。購買のための施策だけでは、企業のアプローチとして不十分な一面があるため、自社コンテンツやブランドへの共感を含めたプロモーションを行い、消費者が情報を拡散したくなる魅力的なアプローチを探していくことが必要です。

自社顧客の購買行動を分析する際には、レシートデータを活用できます。レシートには、顧客の思考や市場の実態を把握できる有益な情報が満載です。具体的にはレシート1枚で、日付・時間・商品名及び金額(値引・単価・個数)・合計金額・電話番号、さらには購入した店舗のチェーン名・店舗名などの情報からユーザーのリアルな購買行動を把握できます。

「膨大なデータを自社で集計・分析するには時間がかかる」とお悩みの方はBIツールの導入がおすすめです。「IDレシートBIツール」は独自で構築した膨大なレシートデータから、コンビニエンスストア・スーパー・ドラッグストアなどの店舗別の売れ行きを可視化しています。自社と競合商品の実売価格・売上が確認でき、顧客の理解だけではなく、商談時の資料としても利用可能です。

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購買行動モデルは、100年以上使われてきたAIDAやAIDMAを基本形として、各時代で発展してきました。「インターネットの普及」「SNS時代の到来」「コンテンツマーケティングを活かしたマーケティング戦略」など、従来と比べて変化の感覚が短くなっているため、それぞれの購買行動モデルを正確に理解しておくことが重要です。顧客層に合った購買行動モデルを参考にすれば、それまで気がつかなかった問題点をあぶり出せます。

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