ポジショニングマップとは
ポジショニングについて
ポジショニング(positioning)には「位置を定める」という意味があります。マーケティングにおけるポジショニングとは、「競合商品と差別化し、市場や消費者の心の中における自社製品の立ち位置を確立すること」を意味します。このポジショニングは、マーケティング戦略を定めたり見直したりする際に役立ちます。
ポジショニングマップとは、各商品の立ち位置を、縦横2軸からなるグラフにプロットしたものです。これを作成することで競合商品や自社商品が、市場や消費者にとって、どのような位置にあるのかが可視化され、各商品の立ち位置を明確に把握することができます。
ポジショニングマップの目的と重要性
ポジショニングマップを作成すれば、自社や他社の製品の、市場や消費者の中での立ち位置が分かります。例えば、自社製品は競合商品と差別化できているのか、差別化できる位置はどこなのか、消費者のイメージの中で独自の立ち位置を確立できるポジションはどこなのかを見つけることができます。既存の製品のマーケティング戦略を見直したり、新製品のマーケティング戦略を決める時に役立つのがポジショニングマップなのです。ポジショニングマップを用いたマーケティング戦略を立てることにより、競合優位性を獲得できます。
ポジショニングマップの作り方
KBFとは
ポジショニングマップの作成において、重要なのは、まずKBFを考えることです。KBFとは、「Key Buying Factor」の略で、購買決定要因という意味です。消費者がその製品を買う際に、重視したこと、判断の基準としたことを指します。このKBFを元に、ポジショニングマップの2つの軸を何にするのかを決定します。
ポジショニングの軸を決定するための必要事項
ポジショニングマップの作成で、最初に行うことは2つの軸を設定することです。ポジショニング軸の設定の流れは次のようになっています。
1. 自社のターゲットのKBFを確認
2. 特に優先度の高いKBFを選択
3. KBFを競合製品と比較
4. ポジショニングの軸を決定
それでは、「30代の女性をターゲットにした仕事で使えるオフィスカジュアルな洋服」を販売するアパレル会社A社を事例として、ポジショニングマップの作り方を説明していきます。
1. 自社のターゲットのKBFを確認
まず初めに、自社製品のターゲットとなる消費者のKBFを考えます。
アパレル会社A社の事例において、自社製品のターゲットは、仕事で使えるオフィスカジュアルな洋服を買いたい30代女性です。ターゲットの女性にとって、仕事で使えるオフィスカジュアルな洋服を買う時に、重視していること・基準としていることは何でしょうか。デザイン、華美さ、品質、着心地、使いやすさ、色、価格、機能性、ブランドイメージ、オフィスカジュアルなどが考えられるでしょう。
2. 特に優先度の高いKBFを選択
次にターゲットにとって、特に重視しているKBFはどれかを考えます。ターゲットに自社製品を魅力的に思ってもらうためには、優先度の高いKBFに沿ったポジションを設定しなければなりません。ターゲットがあまり重視していないKBFを軸に選んでしまうと、差別化できていてもターゲットにとって魅力を感じない製品になってしまいます。
A社の事例の場合、ターゲットが特に重視しているKBFは、仕事に使いたいということから「デザイン性」や「品質」が挙げられる。仕事で使うには、華美でなく、安っぽさを感じず、きちんとして見えるということを重視しているでしょう。
3. KBFを競合製品と比較
2で抽出したKBFについて、自社製品と競合製品を比較します。各KBFについてターゲットのニーズに応えられているか、自社製品と他社製品を評価し、以下の様な表を作りましょう。A社の事例では、デザイン性、機能性、価格、品質、ブランドイメージ、オフィスカジュアル、華美さについて考えます。
自社製品が他社より優れている点、劣っている点が表を見れば分かります。
ポジショニングの軸を決定
1〜3まで終えたら、次にポジショニングの軸を決めます。自社の強みを軸にしてしまうとターゲットのニーズを満たせなくなる可能性があるため、ターゲットが重視しているKBFを軸に設定しましょう。
A社の事例では、「デザイン性」と「品質」はターゲットが重視しているKBFとして挙げられます。
軸例として、汎用性が高い要素は、機能や性質(例えばスマートフォンなら、重量や画面のサイズ)や、用途(スマートフォンなら、仕事で使用するのか、私用で使用するのか)などがあげられます。
また、食品やアパレルでの軸例を挙げると、ハンバーガーでは健康と価格であったり、炭酸飲料では炭酸の強さやパッケージデザイン(POPかクールか)など、ファッションブランドでの指向(機能性かファッション性か)と価格、などがあります。
食品の例をもっと詳しく知りたい方はこちら
https://www.shopowner-support.net/glossary/position/foodmap/
アパレルの例をもっと詳しく知りたい方はこちら
https://www.shopowner-support.net/glossary/position/mapfashion/
各商品を図(マトリクス)に配置ー作成ツールは複数ある
軸として決めた2つの要素を縦軸・横軸にとってできた十字と、軸によって区切られた4つの領域を持つ図は、マトリクスと呼ばれます。この図に、自社製品や競合製品の位置をマッピングしていきます。
A社の事例で作成したポジショニングマップは下図のようになります。
また、ポジショニングマップを作るには、エクセルやパワーポイントを使うことができます。以下のようにポジショニングマップのテンプレートを配布しているサイトもあります。
パワーポイントで作る場合はこちら(テンプレート有り)→
https://sairu.co.jp/method/12780/
エクセルで作る場合はこちら→
https://prau-pc.jp/excel/positioning-map/
ポジショニングマップを作る際の注意点とポイント
2つの軸の相関性を低くする。
ポジショニングを作る際に注意することは、相関性の低い2つの要素を軸に設定するということです。つまり一方の要素がもう一方の要素に影響しないような2つを選ぶ必要があります。
例えば、軸を「価格」と「品質」にしたとします。価格が高くなると品質も高くなり、品質が高くなると価格も高くなりますので、価格と品質は相関の高い要素になります。この2つの軸でポジショニングマップを作成しても、右肩上がりにプロットされていくだけで、空白は見えてきません。
相関性の低い要素を軸にしましょう。
より重要性があるKBFを軸にする。
ポジショニング軸は重要度の高いKBFを軸に設定しましょう。ターゲットが重視しているKBFを軸にすることで、競合製品との差別化を図ることができ、ターゲットにとって自社製品に魅力を感じてもらう立ち位置が分かるようになります。ターゲットが重視していないKBF、例えば自社の得意分野を軸にしてしまうと、競合製品との差別化は図れても、ターゲットにとって魅力的な製品にはなりません。また、性別や年齢などターゲットの層が変わると、KBFの重要度も異なってくることにも注意しておきましょう。
ポジショニングマップの応用例
年代と性別を用いたポジショニング
これまでに紹介したKBFを軸にする方法以外に、戦略によって自社が提供するサービスの価値、顧客にとってのメリット、顧客が求めている事象、自社の強みである事象などを軸にすることもできます。
例えば、図のように、年代と性別を軸にしてみると、どんな顧客が自社や他者の商品を購入しているかが分かるため、顧客が求めている物で自社にのみ提供できるというスイートスポットが見えてきます。また、新商品の導入によって既存商品の売上が減少するといったカニバリ状態を防ぐような戦略も考えることができます。
軸を決める要のKBFを可視化するために
ポジショニングマップの作成において、どんな製品であっても、軸の設定が重要です。軸に設定する要素を選ぶには、その製品のKBFを考え、そして、その中でもターゲットが特に重視しているKBFを考えていきます。軸にするKBFは、論理立てて考えることが大切で、「このターゲットは〇〇だから△△が重視しているKBFだろう」と根拠を持ってKBFを決めましょう。また、顧客の購買データを用いることで、KBFを多角的に見ることができ、KBFではなく年代や性別を軸としたマッピングも可能になります。
フェリカネットワークスのIDレシートBIツールでは、流通チェーンやカテゴリを横断して見られる購買データから商品の購入者を分析することができます。商品購入者の属性や特徴を抽出することで、様々なポジショニングマップを作成し、競合他社との比較を把握し、ロジカルな戦略立案が行えます。
購買データはコンビニやスーパーはもちろん、他社購買データにはない外食やJANなし商品のデータまで確認することも可能です。また、謝礼やポイントによらない、リアルな購買データがオペレーターによりデータ化されているので、正確で説得力のあるデータを見ることができます。
マーケティングにおいて、その根拠の有無はその後の商品開発に大きく影響します。顧客の購買データを用いる事で、根拠のあるマーケティング戦略ができるようになるのです。
まとめ
ポジショニングマップとは、市場や消費者の中での自社製品の立ち位置を図に表したものです。競合製品との差別化を図り、競合優位性を獲得するためのマーケティング戦略を考える際に役立ちます。ポジショニングマップの作成においては、KBFの分析が重要であり、顧客データを活用した分析で、より客観的なポジショニングマップの作成ができるのです。